I don't love you?

□おかえり。
1ページ/1ページ


「おかえり神田君!」


コムイが両手をいっぱいいっぱい広げて任務から帰って来た神田を出迎える


「いいなぁ、僕も海に行きたいなぁ〜!神田君だけ海パン持参で一人で泳ぎに行くなんてセーコーイー!」

「あぁ?んなに入りてェんなら望み通り血の海に招待してやる」


六幻に手をかけながら今にも引き抜きそうな神田にコムイは、イヤン怖い、とおどけて見せた

今日も神田の機嫌はすこぶる調子が良いようだ
それにいつも以上に宜しいようで、


「イノセンスの欠片も無かったじゃねェかテメェ!何が海パン持参だ、無駄にAKUMAの海に行かせやがって」

「まーまーそう怒らないで、何事も無事で何よりじゃないか!」


ハハハハ〜と、クルクル踊り出しそうな勢いのコムイに神田の怒りのボルテージを更に引き上げる
ガセネタの任務後で機嫌が最高潮に悪い神田の耳にダダダッと物凄い勢いで駆け寄って来る足音が段々と近付いて来る音が聞こえてきた

振り替えりソレを捕らえれば物凄い形相で距離を縮めて走って来るエナの姿


「神田ぁァアアア!!!」

「…なッ!?」


久方ぶりに見たエナな訳で、別に再会を喜ぶだとかこの神田が思うわけもない、が。

久しぶりに会って何ともインパクトのあるエナの登場に神田は身動き取れずに、凄まじい形相と凄まじい雄叫びにただ驚いた


「ちょっと失礼!」


神田の目の前にまで到着したエナは、一言謝り素早い手付きで神田を…脱がしていた


「わあお!エナちゃんハレンチ!」

「お前何やってんだ」


キャッとわざとらしく目を覆い隙間から覗き見るコムイを気にせずエナは手を休めず脱がしに掛かった所で上半身裸の神田が出来上がった


「フムフム、そーか、そーですか。」


ペタペタと身体を触り一人で納得し、定規を持ち出し神田を採寸。

正しくは身体の左胸に刻まれた梵字を採寸…


「どこの変態だテメェ」

「よしよし、神田エライッ!今回も大きくなってませんね!ご褒美に私のうどんを一本サービスしてあげちゃおう」


腕を伸ばし少し高い位置にいる神田をエナは笑顔で頭をヨシヨシと撫でる
神田の頭を撫でられのはきっとティエドール元帥とエナぐらいだろう


「チッ、撫でんなチビ。モヤシ色のうどんなんか誰が食うか」

「…あァン?何どさくさに紛れてアレンと私の好物をバカにしてんだパッツン?その前にチビっつったなユウ坊が」

「あぁ?ファーストネームを口にすんじゃねェ!誰がパッツンだ、しかもうり坊みてェに呼ぶな!」


神田の怒りのスイッチが低い様にエナもまたかなり低い

本当に子供みたいな言い合いに迎えた科学班一行は、また始まったと涼しい顔だ


「あっ、ユウ帰って来たんさ?チビエナもココに居たんさね」


そしてそこへ全く空気の読めてない男がヘラヘラと笑い入って来る


「「…ブチ殺す!!」」


嫌でも分かる二人の殺気がラビに右からも左からも突き付けられた


――――


「何の真似だ」


任務から帰り取り合えずばお腹を満たす

いつものようにざるそばを注文し早速食べようかと思えば、そばの上に存在を強調する白い物が乗っかっていた


「ご褒美に一本あげるって言ったでしょ?なに、一本じゃ足りないって?しょうがないもう一本あげるわ」


隣でいつものようにざるうどんを頼んだエナは、有言実行。
神田のそばの上に自分のうどんを一本贈呈


「…ちっ。モヤシが乗ってやがる」

「神田クーン?舌打ちした挙げ句にまたそこに戻るワケ?」


バチバチと双方睨み合うが、そのまま何も言わずに食事を再開させる

再びくだらないやり取りのゴングが鳴りそうだったが、久しぶりに会った訳だし珍しく休戦してみた

仕方無くそばの上に乗ったうどんを大人しく食べた神田は、やっぱりそばだなと思った


「…一回死んだね」

「…死んでねェ」


なんて奇妙な会話だろうか

ズルズルと啜る音が双方から聞こえる中、短く会話する

端から見れば、何かのゲームの話にも聞こえる
ジャンプに失敗して溝にハマって死んじゃった〜!的なノリのような…


「…じゃ寿命使ったね」

「…使ってねェ」


神田のカラダの秘密。
大抵の人間は知らないが、エナは知っている

命はいつだって一つしかない
それが例え神田の様な特殊なエクソシストであっても…


「気のせいだ。気にすんな」

「少しでも大きくなってたら分かるんだからね、毎回採寸してる私には」

「………チッ」


返す言葉も出て来なく舌打ちで返す
それが全てを認めた瞬間だった

帰って来たときは、大きくなっていないと褒めたが真実は少しばかり変化があった
幼い頃からこの教団で一緒に育って来た同士としては、少しの変化でも心配する

例えちょっとやそっとでは死にはしない彼であっても


「まっ、無事に帰ってくるのが何より一番だから。はい、うどん追加ね〜」

「またモヤシを…」


エクソシストである限り、避ける事なんて出来ないのはエナ自身もよく分かっている

無傷なんて言わない
無事にこのホームに帰って来てくれればそれだけで安心出来る

そばの上にまたまたうどんを一本乗せたエナに片眉を釣り上げて見る神田に、


「あー神田、」

「いらねェぞ」

「易々と三本目を渡すほど、私のうどんは安くないのよ。そうじゃなくて、」

「…何だ」


また余計な物を乗せられる前に言う神田に凄んで言ったエナに神田の眉間の皺は深くなる

食事も大切だが、順序を間違ったエナは改まって言った


「おかえり」


満面の笑みで言ったエナは告げてから残ったうどんをズルズルと啜った

エナのギャップ。
普段は割とツンケンしているが、この一瞬が男性陣をコロッと落とす瞬間だ
コレが見たいが為に寄って来る者も居たり


「…あぁ」


仏頂面神田もまたこの一瞬のエナの笑顔に呆気を取られたりする

短く返事をし、神田も残ったそばをズルズルと啜った

たった四文字は誰しもが心暖かくなる言葉、それが、


おかえり。
(エナエナ!俺っちにも!)
(そう言えばラビも今日が帰りだったね、おかえり!)
(ズッキューン!これぞギャップ…ってうわあ!?何さユウ無言でいきなり物騒なモン取り出すなさ…!)
(急に湧いて来るな。それに下の名前で呼ぶんじゃねェ!)


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ