Comes Up

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「おーい!おいってば〜」


何だこの人!?
完全無視すぎて笑けてくるんですけど〜

漫画とかドラマとかではよく見掛ける光景だと思う今の状況

たまたま何処ぞの人かも知れない全くの赤の他人が通行中に私物を落とし、それを全くの赤の他人が拾ってあげる

それで落としましたよ?
って心優しく拾ってあげて、落とし主を直ぐさま追い掛け届けてあげる

そしたら受け取った人は、ありがとうやらスイマセンやらまたは凄く大切な物を落とした人なら物凄く感謝されるシーンって結構良く見るよね


まあ、それからは人それぞれで、ソレをキッカケに意気投合して仲良くなったりそれまでの人で終わったりと…
有りがちなパターンは恋愛に発展する、とかだけど…

とまぁ、コレはあくまでも漫画やドラマの話だけど


たった今、私は漫画やドラマでよく見る光景に自らが出くわしている為にこんな想像を働いていると言う訳だ


「無視って酷いよね〜?ちょっとくらい夢見させてくれてもいいと思うんだけどー!」


この数分も経ってない時間の中で脳内を桃色変換出来る余裕があるのは、完全に相手をされていないので時間を持て余しつつ追い掛けているからだ

別に漫画やドラマの展開を期待している訳ではない


してないけど…
完全無視ってどーなの!?


「ちょっとー白い人ー!」


まぁ良い方向に脳内変換してないで、そろそろ本題に戻る
よく考えれば後ろ姿じゃ性別分からないし

少し前を歩く髪の毛真っ白が印象ありまくりなので、それを強調して先程よりも声を張り言う

でもやっぱり無視なのか…


ここまで相手にされていないと、こんな落とし物ー!って投げ捨ててやりたい気分だけど、最早これは意地だ
たかが袋から溢れる程のコーヒーの一つが落ちた程度では、気付かなさそうだ

もー飲むぞこのコーヒー!


「無視すんのはいいけどさ?いや良くもないけど…でもココまで無視され続けるとねアンタドコまで耳遠いの!?って逆に心配の眼差しを向けるってゆーか…ってこんな真横で喋ってんのに無視するってことは単なるバカだと見なすけど、そこんとこどーなの!?」


なンだァ?このアマ。
音を遮断していた為、視界に入ってから存在に気付く

表情は怒っている様にも見える

反射を解除した瞬間に‘どーなの!?’と言う声が耳に入った

何がどーなの!?なのかさっぱり分からない


「なンだァオマエ?」

「あぁー!やっと喋ったと思ったら第一声がソレ!?」


歩くのを止めずギロリと視線を向けられれば顔に似合わない声を出す

必死になって追い掛けてる私がバカみたいに思えて来る

なんだもクソも私は、アンタの落としたコーヒーを拾ってあげて、わざわざ追い掛けてまで届けてあげる心優しい子だ


「コーヒー落としたってさっきから言ってんの!」

「あァ?」


そう言えば彼は、自分の手に持つどっさりとコーヒーの入った袋を見、私の手に持つコーヒーを交互に見た

どうでもいいけど、この人私と帰る方向一緒だな


「あっそ」

「んなっ…!人の親切を‘あっそ’って!?」

「一本ぐれェ落ちたってわかンねェ」


ムカツクー!
なんだいこの可愛らしいもクソの欠片もない白い人

学園都市いいの!?
こんなの放置して大丈夫なの!?

私のこの無駄な時間を返しやがれッ!

このイライラを手に持つ拾ったコーヒーで晴らしてやる
親切に拾ってあげたコーヒーは私の胃の中へ直行

有無を言わさずに、拾い物だけど飲んでやった


「オマエまだなンかあンのかよ?」

「生憎帰る方向が一緒なんですー」


コーヒー事件は無理矢理解決したにも拘わらず、未だに白い彼の後ろを歩くのは本当に方向が一緒だからだ
後を付けて居る様にも見えるが断じて違う


「なンのストーカーですかァ?」

「その台詞そっくりそのまま返してやるわ!」


等々、同じ建物までやって来て言われた一声
凄く鬱陶しそうな顔で言われ、戦闘態勢にまで入りそうな勢いでギロリと睨まれ、チッと舌打ちをかまされた

今のは少し怖かったが…
でも引きもしない。
なんたって此処は私の家なのだから


「アナタこそ、実はコーヒー拾ってくれてありがとうとかの勢いで攻めてきた新手のストーカーですか!?」


等々、一緒に階段を上り自分の部屋が見えはじめて来た

未だに白い彼も一緒で、ドラマでもマンガでも見たこともない展開に少し前を歩く彼に告げてみる


「ケツ振って着いて来てンじゃねェよ」

「ケツなんか振っとらんわ!ってアンタ家そこ!?」

「文句あンのか?」

「文句も何も私の家ココ!」


一つ奥の扉前で止まった彼に向かって叫ぶ
だって、私の家の横の家で足を止めたのだから

そりゃ、帰る方向も一緒な訳だ。
なんたってお隣サンだったとは…


「偶然にも程があるってこう言うコトを言うんだね〜、まさかのお隣サン!コレは漫画やドラマの展開が見えて来た…って居ないしー!」


一人でギャアギャアと喚く声が扉越しに聞こえて来る
どうせ、スキルアウトかなンかの類の奴かと思っていた
それが隣の住人だったとはなァ

そォ言えば、俺に普通に話し掛けて来る奴なンざ何年ぶりだ?

未だ玄関前で騒ぐトモの声をバックに一方通行は呑気に買ってきた珈琲を口に含んだ


「お隣にあんな真っ白で真っ黒サンが住んでたなんて、姿似合わずよっぽど影が薄いのね」


騒ぎ疲れたトモはやっと自宅に入り、仮にも学園都市第一位の一方通行を影が薄いと纏め出す


無知と言うのは怖いものだ。


ケツ女と影薄サン
(向こうも私を知らないってことは、私も影薄か!?)



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