Comes Up

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「味の素がない!!」


たまごかけご飯に味の素は必須アイテムだよ!?
なのにそれを切らしたなんて…

私としたことが信じられない!

醤油はこの間コンビニで調達したから大丈夫だけど、味の素が…
ご飯にたまご乗せて醤油もかけて後は味の素を入れるだけで、美味しいご飯にありつけるのに…

そんなのマヨネーズの無いお好み焼きと一緒だ


トモは家の中で一人絶叫する。
女の一人暮らし、夜ご飯にたまごかけご飯など不規則極まりない、家庭的スキルゼロのトモは頭を抱えた


「でもでも!こんな時の為のお隣サンだ!学園都市一位なら味の素ぐらい余裕だよね〜人間助け合いが必要ってね」


ピンポーン!と、早速ご飯が盛られたお茶碗とお箸を持って一方通行家のインターホンを押す

だが、出てこない…
もしかして留守?
それとも居留守?

玄関前で唸るトモは考えた
取り敢えず入ってみよう!と。

職権乱用ならぬ、能力乱用
トモの能力、自身を透明にすること
決して扉は蹴破らない
透明人間になりお邪魔するだけ


「居留守はダメだよー!」

「…あン?」

「もー居るならちゃんと出てよ?危うく犯罪者になるとこだったよ」

「充分犯罪者だろォが」

「大丈夫!ちゃんと言うからね、お邪魔しまーす!」


了解も得ず勝手に邪魔すれば、ソファーにふんぞり返る一方通行が居た
テーブルの上には空き缶だらけ、しかも全部が珈琲

無断で侵入したトモはソファーの空いたスペースに座る


「オマエどォやって入って来たンだ?」

「私ってば透明人間なんだよね。所でこのお茶碗に味の素をふりかけて欲しいのです!」

「不法侵入ですかァ?つか、味の素ってなンだァそりゃ」


一方通行はトモの地雷を踏む事になる
味の素についての力説をこれから数分間かけ聞かされる
勝手にノコノコと部屋へ侵入して来た事なんて、すっかり忘れてしまう程に


「だから、たまごかけご飯には味の素が必須アイテム!無いと最早たまごかけご飯じゃない!!ただのたまごかけだ!」

「ナニ言ってンだオマエ」

「これだけ言っても分かんない!?だからね、ただのたまごかけご飯をたまごかけご飯にして下さいって話しさ!」

「一緒じゃねェか…」

「もー第一位なのに分からないの!?そんなことより早く味の素ふりかけてよ?」

「関係ねェ。それにンなチンケなアイテム有るワケ無ェ」


正直、この手のタイプに関わった事のない一方通行は話に着いて行けなかったり…
ただのたまごかけご飯とたまごかけご飯の違いが何なのか?

だが大丈夫。
一方通行だけが分からないのではない
トモの友人でさえも分からないのだから

ここまで喋らせておいて、最後には無いと言われたトモは、頼りにならないお隣サンにポカンと口を開けて情け無い顔を見せた


「もーいいよ…今日はただのたまごかけご飯で食べるから」

「テメェン家で勝手に食ってろ」

「悲しすぎて動く気にもなりません」


明らかに肩を落とし、チビチビと食べるトモに返す言葉も無い一方通行

だから思った。
今まで誰も近寄ろうとしなかった自分に対し、普通に話し掛け横に居座るトモに少々戸惑う自分が居ることに


「一方通行ってさ、呼びにくいよね」

「知るか」


口をモグモグと動かしながら突然、トモは切り出す


「アセロラレータとかだったら可愛いのに」

「テメェそンなンで呼びやがったら殺す」

「顔怖いから、落ち着けアセロラレータ!」

「どォやら卵塗れになりたいらしいなァ」


たまごかけご飯をここまで引っ張り盛り上がれるのは二人だけだろう

怒ると分かっていて、アセロラ〜アセロラ〜と要所要所に交えるトモに一方通行は相手をするのにも疲れて来た


「そんなことで怒ってたら友達出来ないよ?」

「そンなモン居ねェよ」

「えぇ!?やっぱ第一位って言っても影薄サンってこと!?真っ白で真っ黒なのにね〜」


それから一方通行は興味なさげに自分ついて話す

能力、学校、環境…

色々聞いて最終的に思ったこと。
実はかなりひねくれ者?

でも悲しい
私だって知り合ってまだ浅いし、会うの三度目で一方通行のことは全然知らないけど…


「なンでオマエが泣いてンですかァ?」

「だって何かも、色々泣けるコトだらけで…」

「バカか、鼻水垂れてンぞ」


自分の為に涙を流してくれた人なんて居ただろうか?
食べかけのお茶碗を持ち泣く様は何とも格好の着いていない所が余計反応しずらい

今だって裏で何をやっているかも知らないくせして、綺麗な涙流すトモは正真正銘のバカだ


「私が友達になってあげるよ!漫画やドラマの出会いだから、大丈夫!何でも相談したまえ!」

「マジ意味わかンねェ…どォでも良いけど、鼻水茶碗に入れる前に噛め」

「じゃあ友達第一号記念として、ただのたまごかけあげるね!ハイ、アーン」

「アーンじゃねェ!手遅れの飯なンざ誰が食うか」


こんなお気楽で掴み所の無いトモだからこそ、やり取りが成り立っているのかもしれない
一方通行の中に自然とズカズカと入り込めるのも性格からなのか

人は、学園都市最強の第一位に恐怖の目を向ける
だが、それを分かった今でもトモはそんな目一つしない

二人の奇妙なやり取りは終始続くこととなった


たまごとアセロラと涙と!
(アセロラドリンク宜しくね)
(一回死ね)



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