Comes Up

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「ナニやってンですかァ!?殺されたいンですかァ?」

「殺されない為に私も能力使って飛んで来るモノ透かして避けてるからご心配なく〜」


青筋を立て此方をギロリと睨む一方通行にそう言った


事は数分前…

紙屑を部屋中から集め、いざ一方通行の部屋へ
玄関を自身を透かして入ればソファーにじっと座る一方通行と早々に目があった


「またオマエかよ…味の素は無ェぞ」

「それは家で食べてきたから今日は大丈夫!」

「なンの用だ?」

「実験しに〜アナタは気にせず座ってて」


若干膨らんだお腹を気にして満面の笑みで返したトモ
日を追う毎にトモという人間が掴めない一方通行

だが、そんな一方通行でも分かる
服の下でゴツゴツと膨らんだ腹には何かを隠している事ぐらい


「ハイ一投目〜!」


ヒュンと音を立てて一方通行に向かって家から集め、お腹に隠していた紙屑を投げた

当然ながら、それは当たらずトモに返って来る


「おぉ!ホントに返って来た!」


跳ね返って来た紙屑が当たる寸前に自身を透かし紙屑はトモを越し玄関扉に当たって床に転がった


「つぎ二投目ねー」


そう言ってまた紙屑を投げる
そしてまた跳ね返って来た紙屑を透かして避ける

一連の単純作業に面白くなって来たトモはポイポイと次々に紙屑を投げては避けの繰り返しをし一方通行で遊ぶ

別に当たらないので痛くは無いが段々と鬱陶しくなって来るのは当然


「ナニやってンですかァ!?殺されたいンですかァ?」

「殺されない為に私も能力使って飛んで来るモノ透かして避けてるからご心配なく〜」


そして今に至る。
青筋を立てギロリと睨む一方通行と対照的に満面の笑みで未だに紙屑を投げる手を止めないトモは最後と言わんばかりに、残った全ての紙屑を一方通行に向かって投げた

数十個飛んできた紙屑は簡単に反射され自分に返って来る
それをトモも簡単に避けた


「ハイ実験終了!お疲れ様でした〜」


ペコリと頭を下げたトモ

大体、勝手に部屋に上がり、実験だとか言って紙屑をしこたま投げられ、ハイ終了って…

トモにとっては楽しかったかもしれないが、一方通行にとっては鬱陶しい以外の何でもない

オマケに玄関は紙屑の山だ


「どォでもイイけど、ゴミの山どォにかしろよ」


溜め息を吐き、横目で積もった紙屑を見た

片付けの仕方は何ともマヌケでゴミ袋にせっせと一つずつ取っては入れるの繰り返し

本当に何がしたかったんだと疑問な所だ


「で、なンの実験だ?」

「一位はあらゆる向きをなんちゃら〜って教えてくれたから試しにやってみたのさッ!」

「うろ覚えかよ…つか誰に聞いたンだァ?」

「通行にーん!」


能力について説明出来ずなんちゃら〜と言う表現
ちゃんと覚えていないらしい。

しかも通行人に聞くか?普通…


「前に見たけど、やっぱ自分で体験しよう!ってことで来てあげた」

「何様だオイ、オマエバカすぎンだろ」


どうして自分はこのバカを普通に相手しているんだろうと疑問に思えてきた
それはこのバカが無知すぎて、何も知らなさすぎるから相手が出来るのだろうか?


「うん!やっぱり素敵な能力!」

「何がどォ繋がって素敵なンだ」

「だって沢山の人助けてあげられるでしょ?」

「あァ?」

「その手を差し出せば何だって出来る…色んな物から守ってあげられる」


何か遠くの物でも見る様に言ったトモ
浮かない表情を浮かべていたが、直ぐに戻りニッと笑った

本当、ワケわかンねェ女


「悪者に銃向けられた人がキャーって!それにすかさず両手広げて間に入って助けてあげる!」

「オイ」

「上から花壇が降ってきてキャーって!その人庇って包み込んで助けてあげる!」

「キャァキャァうっせェンだよ…説明不足過ぎンだろ」


手取り足取り場面を再現し、忙しいトモに肘を付いて見ていた一方通行

言いたい事は分かるが、全部キャーで纏めただけ
正義のヒーローじゃあるまいし、しかもそんな状況は逆に中々起きない

つまり、


「テレビの見過ぎだろ。誰が三流役者なンざやるンだ」

「決まってるじゃん!アセロ…」

「次言ったら殺す」

「冗談通じないな〜レータは」

「テメェは普通に呼べねェのか」

「いいな〜その能力、欲しいな〜」


一方通行の言葉を完全スルーしたトモに良い性格してるなと思った

全く何が素敵な能力だ
この能力のおかげで友と呼べる者など誰一人出来なかった
普通に話し掛けて来る奴など以ての外。

寄って来るのは雑魚ばかり


助ける為の能力か…
考えたこともねェよ


「どっか行くの?」


急にソファーから腰をあげ、じーっと睨み付ける様に凝視され、無言で此方に歩み寄って来る
そして玄関前でゴミ袋を持ち立つ私の前で止まった


「眉間に皺寄せまくって、怖いんですけどー?」

「………………珈琲が無ェ」


その長すぎる間はなに!?

コーヒーが無いって…
あぁ、私の質問に答えてくれたんだね
睨まれるし、何も言わずにこっちに来るから無視されたのかと思ったよ


「買いに行くんだ?」

「オマエは帰って寝ろ」


ってことで退散する為に帰る時はちゃんとドアノブを回して一方通行と一緒に出た

トモを後ろに一方通行は階段を降りる手前で叫ばれる


「行ってらっしゃーい!」

「…うるせェ、近所迷惑」


声に反応して振り返り、顔をしかめた
笑顔で手をブンブンと振られる一方通行は少し複雑な気持ちになった

笑顔で送り出されるほど良い所に行く訳では無い
トモの言う素敵な能力を使い、助ける為に使うのでは無く、殺す為に使いに行く

それは日常。
後、何千回も続く日常


一方通行はトモの言葉を思い出し、フンッと鼻を鳴らした


行ってらっしゃーい!
(明日のおやつ頼んだ!甘〜いのがいいなっ)
(頼まれねェよ)
(お客様は持て成すもんだよ)
(つか、明日も来ンのかよ)



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