Comes Up

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「うわぁぁあ…!」


足下は、しっかりと見て歩きましょう!

そんな言葉が大変良く似合う少年は、足下に転がった空き缶を踏みつけ、盛大に転けた

しっかりと地面に身体を打ち付け、衝撃に備えてギュッと瞑っていた目を開けば、視界には空が広がっていた

だが、何かがおかしい
空は空でも、白の玉模様がお空に浮かんでいた


「大丈夫?」


空が喋った…
少年、上条当麻は頭を強く打ちすぎたのか有りもしないことを思った


「お空は不幸な私めを心配なさって下さるんですね?」

「お空?空じゃなくてトモだけど」

「…へ?」


空じゃない?トモ?
知らなかった、空に名前があったなんて…

上条当麻は、至って冷静に分析する
だが、その分析は全くの的外れな訳で。
空に浮かんだ白い玉模様からにょきっと顔が飛び出し、倒れた上条当麻とバッチリ目があう


「そんな所で寝てないで、家帰って寝た方が良くない?」


トモは、倒れた主に違う意味で心配の眼差しを向けた

その瞬間、上条当麻は漸く状況を理解し額から冷や汗をたらりと流し、言った


「空色に映えた玉模様は柄ですか…あぁ、トモは名前ですか…俺は空色水玉模様のトモさんのパンツを眺めていたんですね…」

「あっ!パンツ見たな!?」


上条当麻は自分で自分に、理解した状況の報告をした
それを聞いたトモは、何とも遅過ぎる今更な反応をし、スカートを両手で押さえ隠した


「とーうーま〜!!」


少し前に居る、真っ白な修道服に身を包んだ女の子は、低い声で怒りを露わにする
その声に反応し、上条当麻はトモとスカートから目を離し、顔だけ起き上がって弁解の言葉を吐いた


「違うんですよインデックスさん!?コレは、空き缶を踏んづけたいつもの不幸な訳で、見える筈の空がたまたま空色水玉模様のパンツで実は嬉しかったとか、思ってません!」

「とうま!何言ってるのか、さっぱりなんだよ!?」

「ごめんね〜!チェック柄パンツにしとけば空と間違わずに済んだのにね」


にじり寄るインデックスに当麻の冷や汗は最高潮。
それは、この後の展開が読めてしまっていたから
弁解も全く弁解になっていない

そんな怒るインデックスと焦る当麻を余所に当麻の真上に立つトモは、無意味な謝りをした

その後、インデックスに頭をガブリと噛み付かれ悲鳴をあげたのは、言うまでもない。
そしてお決まりのセリフを吐くのだ


「不幸だーー!!」


その様を見てトモは、人の不幸を爆笑し見守った


「申し訳ございません!」

「いいよいいよ〜!パンツなんて見られても減るもんじゃないしね」

「優しすぎるかも!そこは、もっと怒っても良い所じゃないのかな?」


顔中に噛みつかれた跡をたくさん作った当麻は、土下座でトモに謝った
トモは、当麻の跡を見て更に笑いたいのを堪え、寛大過ぎる対応をする
そんなトモにインデックスは首を傾げた


「そうか…でも!私が存在する証拠だから、いーんだ」

「…?よく分からないけど、良い人ってことなんだね」


何かを噛み締める様に笑うトモにインデックスは顔をしかめたが、特に気にもせず纏めた。

存在があるからこそ出来る事
どんな事でもトモにとっては、嬉しく楽しかった


「トモさん、ありがとう!」

「トモでいいよ!不幸君に修道服ちゃん」

「その名前で呼ばれるのは嫌かも…私の名前はインデックスって言うんだよ!こっちはとうま」


上条当麻は最後に叫んだフレーズが
インデックスは見たまんまの服装で
第一印象そのまんまにトモは、名前を付けた

流石にインデックスも抗議の声をあげ、自己紹介をする
当麻は後ろで宜しくお願いしますと頭を下げていた


「所でお腹がすいたんだよ」

「私も空いたな〜」

「あそこのファミレスが私を呼んでいる気がするんだよ」

「私も呼ばれてる気がしてきたよ!でもダメだお金無いや」


二人して向かいにあるファミレスに涎を垂らす勢いでガン見。

インデックスの一言で既に逃げ腰体勢に入った当麻は、気付かれない様に少しずつ横歩き


「とうま、お腹すいたって言ってるんだよ?」


空腹の信号を出していると言うのに飼い主は反応を示さない
痺れを切らしたインデックスは、横歩きで逃げる当麻に視線を投げた
遂に振られた当麻は肩をピクリと揺らし歩く足を止めた


「とうまもお腹すいたよね?行こうよートモも早く」

「お金無いから水しか飲めない〜」

「大丈夫なんだよ!とうまが持ってるからね」


笑顔で返されたトモは、本当に良いものかと固まる当麻に視線を送った
既に行く気満々のインデックスには、最早何を言っても手遅れだ。

観念した当麻は、溜め息をつき了解の言葉を呟いた


「不幸な上条さんに幸せをくれたパンツのお礼に奢らせて頂きますよ」

「本当!?やったー!じゃ、困った時は当麻にパンツ見せたら何とかなるね」

「それはこの上無い幸運ですけどね!?女の子が無闇に見せちゃ駄目ですよ!」


何か勘違いをしたトモからの嬉しい申し出を疚しい気持ちをグッと堪えて、トモを止めた


笑顔で店内に入る二人と財布の中身を気にする少年
この日、当麻の財布の中身が寂しい物になったのは言うまでもない。


「私のパンツは、凄い力を持ってたって話しさッ!」

「また始まったンかよ…」


いきなりの登場に、もう驚かなくなった一方通行

壁から予告無しに現れたトモは、現れるなり今日あった出来事を、簡単に纏めた内容で一方通行に言った

既にこのパターンを見ている為、一方通行は呆れた表情をトモに向けた


「パンツがなンだって?」

「不幸君が空色水玉のパンツのお礼に奢ってくれたんだよ」

「ハァ?」

「今日はチェック柄じゃなくて良かったーって話しさッ!修道服ちゃんの噛みつきは爆笑もんでね〜食いっぷりも立派で可愛い子だった」


本当に意味が分からない…
パンツだの柄だの、不幸君と修道服ちゃんって誰だよ

何をどう拾っても一つに繋がらないトモの話に一方通行の顔は歪んでいくばかり

だが一つ一つ、謎の固有名詞を解明するのも面倒臭い


「パンツ見られると得するってことが分かったよ、今日!」

「…見られたンかよ」

「うん!」


笑顔で返された一方通行は、返す言葉も無い
パンツを見られて喜ぶ奴が目の前に居る
変態か?と一瞬頭を過ぎったが、それも何か違う

単に天然なバカなのか…
色んな意味を込めた視線を一方通行から受けるトモは、更なる勘違いをした


パンツは空色水玉模様
(見たいの?パンツ?)
(見たかねェ!)
(じゃあ何か奢ってね)
(人の話し聞いてンのか!?)



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