Comes Up

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「世界には三人のソックリさんが居るって言うけど、本当に居るもんだね」

「あァ?」


トモが居座る事に違和感を感じなくなったこの頃。
ベッドを占領し、頬杖をつき此方に視線を向けながらトモは言った


「今日、美琴ちゃんのソックリさんの妹のミサカちゃんに会ったのさッ!」

「…それのドコがソックリだァ?ただの妹だろ」

「そーとも言う!」


思い当たる節がありまくりの一方通行は、笑顔を貼り付けて言うトモを横目で見る

‘美琴ちゃん’、その名前こそピンと来なかったが、‘ソックリさんの妹ミサカちゃん’は引っ掛かった。
ソックリ妹は三人所か何万も知っている一方通行は、妹達の事を言っているのだろうと思った
と言うことは、美琴ちゃんとはオリジナルか…


数時間前。


「蹴ってるのにどうして〜!?」


美琴に出会ったあの日から、トモはジュースを買う時は必ず一度アノ自販機に蹴りをかましてはジュースが出て来ない事に嘆く

あの日以来、美琴には会わないのでジュースも出してもらえないし…


「美琴ちゃぁーん!」


毎回の様にジュースをくれない自販機に張り付き迷惑にも美琴の名を叫んでいた

そしてトモは出会った。
美琴に瓜二つのソックリさんに


「美琴ちゃん!?おーい美琴ちゃーん」


自販機に張り付いたまま、視線を動かせば常盤台制服に身を包む美琴の姿を発見。
叫ばれた本人は、異様な格好でブンブンと此方に向かって手を振るトモを見て、自身に指を指した

私ですか?と問う様に


「もちろんアナタです!ジュース出して下さい」

「貴方は誰ですか?とミサカは問い掛けます」


ゆっくりと此方に足を進める美琴に向かってトモは首を傾げる
既に自身の存在を忘れられている美琴の返答に少々肩を落とすトモは、めげず諦めず突っかかる


「トモだよー!忘れないでよー」

「トモ、ですか?とミサカは自販機に抱き付く不審者に聞き返します」


怪しい人物を見る様な目で、どこか前と雰囲気の違う美琴に逆にトモも疑問符を浮かべた

不審者と言われているが、そこは軽く聞き流す


「御坂美琴ちゃん…どーしたの!?病気ですか!?」

「貴方が焦る意味が全く理解出来ませんが…ミサカは御坂美琴では無くミサカです、と名前の訂正を求めます」

「何が違うのかさっぱり分かりません」


疑問符を沢山つけて、自販機から離れミサカに近寄った
トモから見れば、どこをどう見ても美琴な訳で…

ジロジロと後ろや前を見た後に異常が無いかをチェックする様に上から下まで触りたおす。


「美琴ちゃん変な物でも食べた!?」

「何度も言いますが美琴ではありません、とミサカは念を押します。変な物と言うのは理解し難いですが至って普通に食事をしています、とミサカは主張します。美琴とはお姉様のことですか?と一応確認をとります」

「一気に喋ったね?」


質問に対して丁寧に全てを説明したミサカにトモは目を丸くした
そして最後に引っ掛かった‘お姉様’にピンと来た


「もしかして妹ちゃん!?」

「強ち間違いではありません、とミサカは…面倒臭いのでそう言うことにしておきます」

「やっぱそうなんだ!ミサカ、なにちゃん?」


完全にバカにされているが、トモは気にしない。
美琴の妹と分かればそれでいいのだ
トモの興味は最早自販機等どうでもよく、ミサカへと向けられた。


「ミサカに名前などありません。ミサカはミサカです」

「御坂ミサカちゃん?どっちも名字みたいだね〜」

「人の話を聞けよ、とミサカはツッコミをいれます。貴方と話しているとミサカはバカになりそうです、とミサカは貴方の頭の悪さを指摘します」

「ミサカちゃん!細かいことは気にしちゃダメなんだよ〜」


トモは何を言われようとめげない。
寧ろ笑顔で笑い飛ばす

そんなトモに何を言っても一緒だと思ったミサカは、ため息を吐いた


「ミサカちゃんお暇?」

「時間まで少々暇はありますが、とミサカは答えます」

「じゃ、遊びに行こー!」

「唐突ですね、とミサカは…まだ何も言ってないのに…」


返答待たずして、トモはミサカの手を取り走り出した

二時間十四分三十三秒。
残された‘暇’をミサカは、手を取り前を走る少女に委ねる事にした

何を言っても聞かなさそうなので…


「甘すぎない生クリームが絶妙ですねとミサカはショートケーキを褒め称えます」

「美味しいね!ずっと食べたかったんだけど一人じゃ入れないし、ミサカちゃん暇で良かったよ」

「強制連行された気がしますが、美味しいので良しとしますとミサカは苺を食べます」


トモが連れてきたのは、とある喫茶店。
多少の文句を吐きつつ、ミサカはケーキを頬張り珈琲を飲んだ

トモは、そんな様子を見て嬉しそうに口にケーキを運んだ


「友達とこんな風に喫茶店とか初めてだから嬉しいな」

「トモダチ…ですか?」

「うん、ミサカちゃんと私はもう友達さッ!って勝手に言ってるけどいいよね〜」


不意に言った一言。
トモにとっては、最近の起こる出来事は何もかもが初めて

自分の能力が故に出来なかった事。
それを今、出来ている事に幸せを感じた

それはミサカにとっても初めてだった
こんな自分を‘トモダチ’だと言ってくれる。
今日会ったばかりなのに…


「ミサカも初めてです、とミサカは初めての言葉に戸惑います」

「じゃあ、初めて仲間だ!またケーキ食べに来ようね」


笑顔で言うトモに表情を作らない筈のミサカが微笑し、悲しそうな表情を浮かべた気がした
それをトモが気付かない。


「時間が来ました、とミサカは席を立ちます」

「今日はありがとうね!無理矢理突き合わせちゃったけど」

「いいえ、暇つぶしになりましたとミサカはさり気なくお礼を言います」

「またね〜ミサカちゃん!次のお店はもう決まってるから付き合ってね」


また。次。
ミサカでは到底、約束を果たせそうにないです、とミサカは心の中に飲み込んでおきます

ブンブンと後ろから手を振るトモに頭を下げたミサカ…妹達。
検体番号10014号は、静かに呟く


「さようなら、トモ」


――――


「初めて仲間のお友達が出来て上機嫌なのです」


缶珈琲を片手につい先程の事を思い出す
10014回目の実験。
トモの言うミサカとは時間的にも今日の相手か、と一方通行は思った

今頃、妹達によって片付けられている頃だろう


「…次なンかねェよ」

「なんか言った?」

「気にすンな。つか、テメェは他にトモダチとやら居ねェのかよ」

「友達なら居るよ!目の前に!」

「あン?」


声に出ていた呟きはトモには届いていなかった
話題を変える為に聞けば、笑顔で一方通行に人差し指を立てて指すトモ

何言ってんだよー!とトモは、ベッドから立ち上がりソファーに座る一方通行の隣に腰を下ろした


「アクセラは私の初めての友達さッ!」

「寂しい女だなァ?物好きも良いトコだろ」

「そうそれ!寂しい女って思われるの悲しいから作ってたんだ」


‘友達になってあげるよ’
前に私が一方通行に言った言葉

本当は、あの時私が友達になって欲しかったんだ。
普通の子になりたかったんだ

でも、私は私だから、


「素で接する事にしました!」

「なンの報告ですかァ?」

「ってことで今度ケーキ一緒に食べに行こー!」

「ホントオマエ、人の話し聞かねェよなァ!?」


隣でキャッキャッと両手を広げて言うトモ

ついさっき、お前の友達を殺して来ましたと言えばトモはどんな反応をするだろうか

泣くか?怒るか?
そんな事は分からないが、一方通行は思った
トモは何も知らずに笑っとけばいいと。


そんな彼も知らずの内に‘初めて’を貰っている事には気付かない


初めて!
(友達=ケーキだね)
(ンな方程式があるかよ)
(あるある!だから一緒に食べに行こうね)
(…気が向いたらなァ)



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