Comes Up

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「美琴ちゃん!」


聞き覚えのある声に呼ばれて振り返ればトモが駆け寄って来る姿が飛び込んだ
病院と言う事もあり密かな小走りで寄って来る姿に一応気を使っているんだなとか思う

一件から数時間程立ち、当麻の病室に訪れていた美琴は丁度病室から出た所だった
疲れた表情を見せる美琴は、駆け寄って来るトモへと視線を向けた


「美琴ちゃん元気!?」

「見ての通りよ」


左手は腰に当て、右手で全体を見せる様に広げる
外傷は何もないから元気だと伝える

院内で立ち話も迷惑なので外のベンチへと移動する


「ありがとね」


ジュースを片手に一息着いた美琴は礼の言葉を口にする
一瞬きょとんとしたトモは、直ぐにお礼の意味が分かり美琴に視線を合わせ困った様に笑った


「お礼言われるような事は何一つしてないけどね」


一方通行にも言ったけど、結局私は何もしていない
何かしたいと思う時程、何も出来ないものだ


「すみません、部外者の口出しごめんなさい」


ベンチの上で土下座の形を取り美琴に向かって突然謝りだしたトモにギョッと目を見開く


「自販機の付き合いしかない奴のでしゃばりゴメンナサイ」

「ちょっと、」

「今度いちごおでん奢るので許して下さい」

「安いわねアンタ…」


二人のベンチには、もの凄い視線を集めている
それに気付き恥ずかしくなりトモを止める美琴だが、肩をズルリと落とした
何たってお詫びの品が安く、別に飲みたいと思わない品。

トモの言いたい事は分かる
でも、


「トモが謝る事なんて何一つないのよ。悪いのは私なんだから…」


自分の提供したDNAマップの所為で起こった今回の一件
それは美琴にとって一生消える事のない事実


「きっとそんな事ないよ!美琴ちゃんが居なかったら妹達は生まれなかったでしょ?ありがとうって思ってるよ」


アイツと同じ事を言うんだ…
と美琴は思った

自分の所為で一万人近くの命を殺して来たと言うのに
ありがとうって思われるなんて…

そう言われる事で実験の事実は一生消えないかもしれないが、美琴の肩の荷は少なからず軽くなったに違いない


「あっ!」

「なによ?」


ポンッと音が聞こえてきそうな仕草。
左手はパー、右手はグーを作り合わせて何かを閃いたトモに疑問符を浮かべる


「ってことは、私ってば一万人の友達が出来たって事だよね〜!一万人のミサカちゃんとケーキ食べに行かなきゃ」


嬉しそうに言うトモに完全に拍子抜けした美琴は口をポカンと開けた

トモの切り替えの早さには関心する
何事もプラス思考なトモに美琴は呆れた様に笑った


「でもその前に美琴ちゃんと食べに行かなきゃね」

「ケーキを?」

「そうそう!だって友達だから〜」

「アンタ‘友達’って言葉好きよね」


トモの中で友達=ケーキと言う方程式が組み上がっている為、お決まりになりつつあるセリフを美琴に言う

何となしに思ったトモのセリフにツッコんでみれば、トモは一瞬止まりフワッと笑った


「嬉しいからいいのさッ!」

「そっ、じゃ美味しいトコ探しといてよね」

「任せなさい!」


間違った実験だったかもしれない
悲しむ人が沢山居たかもしれない
でも、前提があったから美琴に出会い当麻に出会い妹達に出会い一方通行に出会えた気がする

後ろは振り返らず前を見て進めば楽しい事が待っている筈だよ?

いつか掛けてくれたカエル顔の医者の言葉を思い出した


――――


「トモと知り合いだったなんてね」

「…あァ?」


研究員の一人、芳川桔梗はカタカタとキーボードを打つ手を止めず画面に目を向けたまま言った

机にダルそうに座る一方通行は、それまたダルそうに返事をする

「あの子は元気かしら?」

「アイツ知ってンかよ」

「そうね、姿の見えなくなったあの子の数少ない喋り相手って所かしら」


打つ手を止めて彼を見た芳川
彼女の視線に一方通行は眉を吊り上げた
引っ掛かる言葉は多々あるが取り敢えず聞いてみる


「妙な能力か?」


芳川の発言に思い当たる節がある一方通行は聞く
家が隣と言うこともあり、自身を透かしてやってくるトモ
妹達の一件の時も周りで騒いでいたらしいアノ能力

それを聞いた芳川は一瞬目を大きくし驚いてみせた


「あの子が能力使ってるの?」

「迷惑にもノック無しで入り込ンで来やがる、家が隣ってのは便利なモンだよなァ」

「あら、隣の家に住んでるなんてこれまた驚きね」


芳川は本当に驚いた様に一方通行へと反応した


「そう…トモが人前で能力を使うなんて、貴方よっぽど信頼されているみたいね」

「あン?」


信頼?
あの女は初っ端から能力乱用しまくってたぞ、なんて思う。


「トモはね、八年間ずっと姿が無かったのよ」

「ずっと透明人間でしたァってか?」

「そうよ」


何となしに言った言葉は当たっていたようで。
一方通行はフンッと鼻を鳴らした





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