Comes Up

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「あの男助けて欲しいみてぇだぞ?コレで助けてやれ」


握らされた物はレディース用の拳銃。
右も左も分からない子供はそのオモチャの使い方は知っている


「うんっ!助けてあげるよ」


笑顔で拳銃を受け取り、そうして自信を透かす
一緒に持っている拳銃までもが見えなくなる


「おじちゃん!トモが助けてあげるね」


ヒィッと突然聞こえた声に男は取り乱した

分かっている。
自分は今、殺され為にここに居るのだから
組織に不利益な情報を流した始末をされる為に捕まっているのだから

だがこの緊張感のカケラも無い声は何処からだ?
姿が見えない狭い密室の中で聞こえる声


「ど…どどこにいるんだ…」

「ココだよー!」


辺りをぐるぐると見回しても見つからない声の主に問いかければ、低い位置から幼女が現れた
だが身体は無く顔だけ


「おじちゃん、トモがコレで助けてあげるね」

「あぁ…あああ……」


そうして現れた幼女は笑顔で拳銃を掲げた。
この男からして見れば拳銃だけが浮かんでいるように見える

幼女の顔と拳銃にガクガクと震え言葉にならない声を漏らす


恐怖に震える男にパァンと発砲音が耳に響いた
打たれたんだと気付くまでに時間は掛からなかった

太股から伝う赤に幼女は喜びの声を上げた


「赤いの出て来た!今からいっぱい出してあげるね〜」

「やゃめ…」


ナニガタノシインダ。
天使の様に笑う幼女に男は頭がおかしくなりそうな感覚に陥った。
パン!パン!
と、二発の発砲音が鳴り響いた
撃ち抜かれたのだ腹を心臓を
男の赤が室内を染め上げる
目を見開き目尻に涙を溜める

キャハハと甲高い笑い声が耳に響く
コレはあの幼女が、楽しそうに自分を撃っているのか…

トモと言ったあの幼女の姿が見えない
でも確かに聞こえる幼女の笑い声、発砲音。

見えない何かに撃たれる恐怖
痛みさえも分からない
恐怖だけが脳を支配する

そうして男は目を開けたまま、最後に一筋の涙を零して逝った


「まっ赤か!トモのおててもまっ赤!おじちゃん助かって良かったね」


動かず、喋らない相手に向かってしゃがみ込み独り言の様に話しかけた

原石。
五十人と居ない希少価値の存在の一人
それがトモだ

娘の異変に気味が悪くなった親はトモを学園都市に捨てた
どういう訳か名字は分からず名前だけは記録として残っていた
置き去りの子供は大抵が学園都市のモルモットとなる
そして原石であるトモに興味がわかない訳がない


「オマエ本当、楽しそうに‘助けて’やんなぁ」

「人助けトモだーいすきだよ」


どういう原理で透かしているのかも分からない
何が駄目で何がいいのかも分からない

育ての親、研究員達は間違った教育をトモにした

殺人行為を人助けだと

だから笑顔で殺せる
赤が飛び散る程喜ぶ
この行為は人助けだと教えられたのだから

やれば褒められる
子供の純粋な気持ちを逆手に取り、トモの手を汚していく


「オイ、俺の骨掴んでみ?」

「ほね?」


そう言って右腕をトモの前に出した
此処だと言うように左手の人差し指を立てて右腕を指す

前は出来なかった。
だが、今なら出来そうな気がした‘行為’


「フンッ、」

「掴んだ!キハラの骨掴めたー」

「やれば出来んじゃねえか」


何か違和感を感じる
子供の握力なんてしれているので違和感止まり
掴まれていると言う感覚だけはある

前は無理だったその行為が出来た事に喜びの声をあげた


「そろそろ次のお助け行っとくかぁ」

「はーい!頑張りまーす!」


トモの力は未知数。
だが透明なれると言うことは、姿を晒すことなく裏で動ける
見られる事無くお助けと言う名の制裁が出きる

応用の沢山利きそうな未知数な原石の能力者、トモは自分が闇に手を染めているなどとはこれっぽっちも思っていないのだった


人助け!
(トモいい子だよねっ!)
(イイ子過ぎて笑けてくんぞ)
(キハラも助けてあげよっか?)
(…俺ぁ遠慮しとくわ)



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