Comes Up

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「お邪魔しまーす!」


扉をスライドさせ病室へと一歩を踏み出す
声の主に反応して顔を上げた


「トモか?」

「やっほー!元気?」


昨日、お見舞いし損ねた上条当麻の病室へと再びやって来たトモは手を振ってベッド脇に備え付けられた椅子に腰掛けた

あちこちに包帯をグルグル巻きにされた当麻の姿をジーッと凝視する
来るなり、見つめられる自分に疑問符を浮かべる


「あのー、トモさん?」

「すみません!」

「へ?」


まさかの謝り?しかも土下座…?

気付かなかったが、トモは椅子の上で正座
そのまま身体を前のめりに倒しベッドの淵に手を着きだした

何がなんだかさっぱりな当麻が逆に慌てる


「何だよ急に!?どうした!?」

「当麻ばっかり怪我でゴメンナサイ!」

「え、はい?ちょっとトモさん?」

「サービスパンツ披露するので許して下さい!」

「何ですか!?その嬉しい申し入れは!?」


この場に美琴が居れば、見覚えのある光景に肩をずり下ろしただろう
そしてサービスパンツに反応して当麻をビリビリと治療してあげたに違いない

オロオロと何処にやればいいのか分からない両手をさ迷わせる


「一緒に行ったのに、当麻は病院送りで私は無傷…ゴメンナサイだけじゃ済まないよ!?」

「…ナルホド」


お見舞いに来てくれたかと思いきや、突然の土下座謝りでさっぱりだったがやっと理解した当麻は半笑い気味に納得

ベッド淵に頭をピタリとくっつけたトモの頭の上に当麻はさ迷わせていた手を静かにおいた


「みんな無事だったんだ、それでいいんじゃね?」


不意に乗った手に反応して少しだけ顔を上げれば、柔らかく笑った当麻と目が合った
呆気を取られ目を丸くしたトモは、その一言で我に返ったように満面の笑みで笑い返した


「じゃ、当麻も一緒にケーキ食べに行こうね〜」

「あのートモさん?唐突に話し変わってません?」

「友達は一緒にケーキを食べに行くのさッ」


自身を指さし次に当麻に指をさす。
自分達が友達だとジェスチャー

コロコロと忙しなく変わるトモの姿に飽きない子だなと思った


「トモって面白い奴だな」

「そーかな?トモさんは最近沢山のお友達が出来て嬉しいんだ」

「そっか。なら、友達としてケーキ食いに行くか!」


当麻がそう言えばトモは嬉しそうに笑い、当麻の手を取りブンブンと振って握手する
約束ね〜と言うトモに約束だと答える当麻


「その前に早く退院してね」

「…全くです」


それもそうだ
病院のベッドで寝ていては約束も果たせない

彼が退院するのはもう少し先のお話だ


「と〜う〜ま〜」


扉脇から低い声を発するシスターが一人。
扉にかじり付くように登場したインデックスの姿


「私は腹ペコで死にそうだって言うのに、当麻は女の人を連れ込んで何をやってるのかな?」

「いやいや…インデックスさんのオーラが黒い方が謎なんですけどね?歯はしまって頂けると嬉しいななんて、私め一応怪我人…」


キラーンと光る歯に冷や汗が流れる
連れ込んでなんて人聞きが悪すぎる
相手はインデックスも知るトモだと言うのに、彼女から見れば後ろ姿なので誰かは分からない

声の主に反応したトモは後ろを振り返った


「あっ、インデックスー!」

「ほらほら、トモさんですよ?だからその歯はしまってですね、」

「トモだー!でもこの歯は当麻を噛まないと気が済まないみたいなんだよ」


例え知っている人であれ、腹の虫は収まらない
剥き出した歯はそのまま当麻の頭へガブリ


「当麻がね、こんな所で寝ているからご飯係が居ないんだよ」

「ご飯は大切だもんね〜」

「怪我してこの仕打ち…不幸過ぎますー!」


顔中に噛み付き跡をたくさん付けた当麻は頭を抱えてお決まりのセリフを吐く。
そんなインデックスはお腹が減りすぎてトモの膝の上で延びていた


「そうだ!当麻にお見舞いの品持って来たんだった」


インデックスの姿を見て思い出したように言ったトモは、少し大きめの鞄の中を探る
ゴソゴソと探った後、当麻の掌に静かに見舞い品を置いた


「…お茶碗?」

「手作り披露してあげるね〜」

「ん!?何だかご飯のイイ匂いがするんだよ!?」


置かれたお茶碗に首を傾げる当麻に更に鞄をゴソゴソとするトモ
ピクンと鼻を動かし、即座に反応したインデックスは身体を起き上がらせトモの膝の上に手を置いた

ご飯の匂いってなんだよ…と思いつつ、トモが取り出したタッパーからは本当に白いご飯が出て来た
ご飯を匂いで分かるインデックスも相当凄いがトモが何をしようとしているのか全く状況が掴めない


「私の大好物〜出来たー!」


タッパーのご飯を当麻のお茶碗に入れたトモが最後に卵を取り出し、割ってご飯の上に乗せる
ご丁寧に調味料一式をふりかけ、最後に笑顔で当麻にお箸を渡した


「あのートモさん?コレはなんでしょうか?」

「たまごかけごはんに決まってんじゃーん!」

「何コレ何コレ!?」


それは見たら分かるのだが…
お見舞いの品にたまごかけごはん?

胸を張って言うトモに未だに状況の理解に苦しむ当麻
瞳をキラキラさせて当麻の持つお茶碗にヨダレを垂らす勢いで見つめるインデックスは我慢しきれず飛びかかった


「とうまは病人だからね!迷える子羊は助けてあげるんだよ」

「コラ、インデックス!言ってる意味わかんねえっての」

「おいひぃぃい!?タマゴカケゴハン美味しすぎるんだよ」


当麻のお茶碗を奪い取り、物凄い勢いで食べるインデックス

何故にお見舞いの品がたまごかけごはん?とか色々ツッコみ所満載だが、それよりも今は、せっかく頂いた品を一口も堪能する事が出来ずインデックスの胃の中に流れて行く方が問題だ

食べ物を目の前に食べる手が止まる訳が無いインデックスは綺麗にお茶碗を空にした


「トモおかわり!」

「ごめんね〜もう無いや」

「えー残念なんだよ」


想定外の出来事でおかわりなんて用意している筈も無く、誰でも簡単に作れるソレを大変気に入ったインデックスは肩を落とした


「トモまた食べたいんだよ」

「じゃ今度作りに行ってあげる!あっ食べにおいでよ〜」

「うん!絶対約束なんだよ」


何度も言うがトモの即席で振る舞ったたまごかけごはんは、料理なんて呼べる代物でもなんでもない


「まさか見舞い品がたまごかけごはんが来るとは思ってなかったけど、それを一口も食えずインデックスに食われ結局俺には何も残らず…怪我して入院しているのは俺な筈だよな…」


ほんわかとした空気が流れる二人に会話に入るタイミングを失った当麻は一人ボソボソと呟く
ボソボソ呟く当麻に気付いた二人が首を傾げて見やる


「とうまとうま!さっきから何を言ってるの?大きな声で喋らないと分からないんだよ」

「どっか痛いの!?」

「よーするに今日も……不幸だァアア!!」


頭を抱えて叫ぶ当麻に更に疑問符を浮かべた


「オマエはニワトリでも飼育してンか?」

「フルコース召し上がれ〜!」


インデックスから高評価を得て気を良くしたトモは帰りにしこたま卵を購入
それを一つずつ机の上にズラッと並べられた光景が一方通行の目に嫌でも飛び込んでくる

トモがたまご好きな事は知っている
だが、謎の大量のたまごは一体何なんだ…
一方通行はテーブル前に険しい顔で立ち尽くした


ニワトリよりヒヨコ
(よりどりみどり〜好きなの選びたまえ!)
(子なンざ食うか、親出せ親)
(じゃ、レータにはこのたまごさんね)
(いらン)



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