Comes Up

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「今日はパーティー!」


八月は毎日が初めての連続だった
一カ月と言う短い期間の中で本当に色々な出来事があった

友達もたくさん出来た
隣の家に住む影薄サンは実は学園都市一位の人だったり、自販機では素敵な出会いをした
空と間違えられたパンツのおかげで二人の友達が出来た
悲しい実験もあったけど、それでもたくさんの友達が出来た

色々あったけど、今までを考えると私にとっては楽しくて嬉しいことがたくさんあった八月。
ってことで今日は八月の集大成で一方通行と勝手にパーティーを開催するつもりだったんだけど…


「ドアがありませんー!?」


いつぞやの叫びを再現するかの様に玄関前でトモが頭を抱えた
数日前、トモの家は何者かに空き巣?に入られていた
玄関扉は無くなっており、家の中は食器やら窓ガラスの原型は無く床は破片のパレード

そんな事があったもので一方通行の粋な計らい(結構無理矢理)で修理費を出してもらい、直るまで一方通行の家に転がり込んだトモ。
の筈だったが、結局自分の家はノリで解約。
家は勿論、修理済み

やっぱり結局一方通行の家に勝手に住んでいる


「アクセラ空き巣ー!ドアパクられてるよ!?」


卵と缶コーヒーの入った袋を手に持ち、荒れた家の前で今は居ない彼の名を叫びながらトモは立ち尽くす

だが、こんな所で突っ立っていても仕方ない
取り敢えず恐る恐る荒れた部屋へと進んで行った


――――


「よしよし今度こそ、アナタのお部屋は何号室?ってミサカはミサカは聞いてみる」

「307号室」


一方通行の後ろをひょこひょこと歩く毛布をすっぽりと被った女の子打ち止めは聞いた
先程から成立しない会話を繰り広げ間違った部屋番を教えられ顔を真っ赤にしていた

チャンスを逃さず、すかさずもう一度部屋番を聞けばまたまた違う部屋へと突入する打ち止めは意地悪な一方通行にぶーたれる

そんなこんなで自分の家の前までやって来た一方通行は足を止めた


「おいおい、なンだァこりゃあ」


玄関扉の無い家の前で立ち尽くす。
そのまま中を見れば中は荒れ果て足の踏み場もない程に家具から何まで破壊された自室に片眉を上げた


「うわ、大変な事になってるってミサカはミサカは絶句してみたり」


ひょこっと一方通行の隣から顔を出した打ち止めが同じく部屋の中の状況にあんぐりとした


「…あァ?」


玄関で立ち尽くす一方通行は見た。
ぐちゃぐちゃの部屋の中にへたり込む影を
忘れていた、コイツが居ることを…


「あのど真ん中に座り込んでいる人が犯人なのかな?ってミサカはミサカは推理してみる」

「見たまンまの何処が推理なンだか。オイ、クソケツ!」


自信満々に言う打ち止めに軽く息を吐き、一方通行は勝手に居座り着いている同居人を呼んだ
それに反応し顔をガバッと上げ、呼ばれた方向へ振り向いた
そこには、何が何だか同じ様に分かっていなく今にも泣き出してしまいそうなトモがいた


「あっあっあーあくせらー!」

「そんな走っちゃ破片踏んじゃうかもってミサカはミサ」

「い゛だぁぁあ!?」

「忠告する前に踏んじゃったねってミサカはミサカは哀れんでみたり」

「オマエ、ボケにも程があンだろ」


打ち止めが言う前に素直にガラスの破片を見事に踏んだトモは痛さにしゃがみ込んだ
それを見た二人はあーあと呆れる
取り敢えず土足で残骸だらけの部屋へ足を踏み入れた一方通行は綿が剥き出しのソファへと寝転がった


「ちょっと影薄サン!この状況で寝出すってどーなんですか!?」

「今更騒いでもどォにもなンねェだろ」

「えーっとこれって警備員とかに通報した方がいいんじゃないのかなってミサカはミサカは提案してみたり」

「そうそれだ!警備員ってミサカちゃんそっくりの毛布おチビちゃんどちらさん?」


直ぐに痛さから立ち直り幸い血も出ずに済んだトモはいつも通りの一方通行に逆に慌てる
打ち止めが横から言えば、それに乗ったトモが打ち止めに指を指し賛成。
そしてそこで初めて打ち止めの存在に気付き首を傾げた


「ミサカは毛布おチビちゃんじゃないってミサカはミサカは反論してみる!ミサカの検体番号は二〇〇〇一号でコードもまんま打ち止めって呼ばれてたりするのってミサカはミサカは説明してみたり」

「さっぱり分かんないけどミサカちゃんの更に妹のミサカって事ね」

「何だか色々纏められてる気がするんだけどってミサカはミサカはネットワークの情報通りのアナタのバカさに納得してみたり」

「細かい事は気にしちゃダメだよ〜」


一体ミサカネットワーク上ではトモと言う人物はどんな人で通っているのだろうか
見ため十歳の打ち止めにまで明らかにバカにされているが、トモはやっぱり気にしない

こんな状況下で何故か気の抜ける空気が漂っている中で一方通行はため息を吐いて言った


「で、オマエはこれからどォすンだ?そこらの冷蔵庫みてェな残骸になりてェンなら別に寝泊まりしても構わねェけどよ」

「にーさん、私の心配もしてよ」

「オマエはナニ言っても此処で寝ンだろ、どォせ。」

「流石レータ!よく分かってる!」


最近は不良に絡まれる事が多かった彼
どうせこの荒れた部屋も一方通行が居なかった腹いせにどっかの馬鹿がやらかしたんだろう
次はいつ襲撃に合うか分からない家に居ても返って危ないだけだが…


「ミサカもお世話になりたいかなってミサカはミサカは頼み込んでみたり」

「あン?なンでだよ?」

「誰かと一緒に居たいからってミサカはミサカはビシッと即答してみたり」

「美琴ちゃんは友達!ミサカちゃんも友達!って事はチビミサカも友達!そんなとこで突っ立ってないで早くおあがりなさいよ」


何だか異様な空気が流れる中で、空気を全く読んで無いトモも打ち止めに負けじとビシッと即答。
そんなトモの言葉に嬉しくなった打ち止めは、ぱあッと笑顔になる
そしてお邪魔しまーす!と元気な返事と共にやっと部屋の中へ足を踏み入れた

そんな二人を見て一方通行はチッと舌打ちをして天井を見やった


「ミサカはトモに会いたかったの!ってミサカはミサカは言ってみる」

「なんで?」

「ミサカの初めての友達になってくれた人だからってミサカはミサカはいつぞやのケーキのお話をしてみたり」

それは数日前。
時間までは暇だと言う妹達を結構無理矢理ケーキを食べに誘ったあの一件の事
妹達は脳波をリンクさせており、その情報は打ち止めにも勿論行っている


「それでお礼を言いたかったのってミサカはミサカは上位個体としてありがとうってトモに言ってみたり」

「………ミサカッ!」


全妹達の代表として打ち止めはペコリとトモに向かって頭を下げた
それをボケッと見ていたトモは暫しの沈黙の後、感極まって目の前の打ち止めをギュッと抱き締めた


「お礼を言うのは私の方!嬉しい事言ってくれちゃって、可愛いんだからぁ」

「ミサカもケーキ食べてみたいなってミサカはミサカはおねだりしてみたり」

「食べよ食べよってトモはトモは了解しちゃうんだから」

「会話がうぜェ」


頭をよしよしと撫で回すトモは嬉し過ぎてなのか打ち止め口調が移っている
空気になりつつあった一方通行は、ボソッと呟き顰めっ面になる

トモ一人でも煩いのにそこに打ち止めも加われば更に煩い。

それから意気投合したトモと打ち止めは、寝床を確保する為に羽毛の飛び出すベッドを何とか寝られる様に気持ち綺麗にする作業に入る
仲良く布団に入りやっと静かになるなと一方通行は思った


「一応忠告しとくけど、寝込みを襲うのはNGなんだからってミサカはミサ」

「寝ろ」

「それ私も言いたい!寝込み襲うなよー」

「オマエは黙れ」


言われた二人は何かをぶーたれ、もそもそと布団に潜り込む掠れた音が一方通行の耳に届いた

トモもそうだが打ち止めもだ。
改めて思う
何年ぶりに邪気の無い声を掛けられただろうと


こんな時でも…
(あー!部屋が大変な事になってたから忘れてた)
(どうしたの?ってミサカはミサカは耳元で煩いトモに聞いてみたり)
(コーヒータマゴパーティー開催してない!)
(なンのパーティーだそりゃ…)



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