Comes Up

□20
1ページ/1ページ


「白いのが一方通行で、このちびっ子が打ち止めじゃん?」


スライドされた病室の扉が開き反射的にそちらに視線を移すと緑のジャージを着、なんともナイスバディな胸を持つ女性が入ってきた

誰だ?と怪しむ様に睨む一方通行に、そんな怖い顔するなじゃん?と女性は微笑んだ


「動けない桔梗に代わって、この私、黄泉川愛穂お姉さんがアンタ達の面倒を見てやるじゃん」


現在芳川は未だに安心出来る状態ではない為、一度だけ許された面会時に一方通行達の面倒を見てほしいと昔馴染みの黄泉川に頼んだ

頼むだけ頼みさっさと意識を落とした芳川だったので、黄泉川も状況の説明を全くされていなく、何が何だか分からない状態
そんな訳で子供三人を任されたのだが、


「話ではもう一人トモって子が居るって聞いてるけど、ドコじゃん?」


病室を見渡す限り、視界には二人しか居ない
キョロキョロともう一人の主を探すもどうやら居ないようだ


「トモは今ご飯を取りに行ってるのってミサカはミサカは説明してみたり」


もうすぐ帰って来ると思う、と噂をしていると病室の扉がスライドされ開いた


「帰って来たってミサカはミサカはトモおかえりー!」

「ただいまミサカー!」


打ち止めは黄泉川の更に後ろを見て話すので、黄泉川は後ろを振り向いた


「三人分を持つのは面倒臭いから、ホラ見てー!特大ボールにたまご10個を贅沢に使ってみました、特製たまごかけごはんだ」

「オイ、病院食を勝手に変えてンじゃねェ。肉寄越せ肉」

「肉はまだ禁止だね?ってカエル先生からの伝言さッ!緑の葉っぱを食べるより嬉しいでしょ〜!諦めて子供を召し上がれー」


両手で頭を支え組み、不服そうに文句をこぼす
やっと普通に食事が出来る様になったは良いが、出てくる物は味の薄いおひたし等…

トモも飽き飽きしていた所で、能力を生かし厨房を勝手にお借りして調理と言えない調理をしてきた

そんな一連の会話を聞いていた黄泉川は首を傾げ、前と後ろを交互に見た
一応聞くが、


「…ドコじゃん?」


トモが病室に帰って来たのは話の流れで分かった
だが、何処を見渡してもそれらしき姿は無いが、声は聞こえる

まさか、この二人は幽霊とでも話しているんだろうか?

此処は学園都市。
そんなオカルト話が一つや二つありそうだが…


「ヨミカワの後ろにいるよってミサカはミサカは指をさしてみたり」

「無駄に馬鹿デケェボールが浮いてンだろォが」


あら本当だ…と黄泉川は自分の真後ろで宙に浮かぶ特大ボールを見た
どうして自分は、こんなに大きなボールが浮いていた事に気付かなかったんだろうと冷静に思った

そして更に冷静に今の状況にやっぱり幽霊か…やっぱりオカルトじゃんか…と特大ボールを見つめながら思った


「そー言えば、緑ジャージの巨乳お姉さんはどちらさん?」


ご飯を乗せたお箸が動いたと思ったら、途端に消えた
少なくとも黄泉川からは、そう見える
いや、黄泉川だけでなく一方通行と打ち止めからもそう見える


「よ、黄泉川愛穂…です」


レベル3の能力者なら軽くあしらえる体育教師であり警備員の黄泉川

だが、幽霊トモを前に多少の…いや結構ビビっている黄泉川は普段の喋り‘じゃん’では無く語尾が‘です’になっていたり


「ミサカもたまごかけごはん食べたいってミサカはミサカは催促してたり」

「ハイ、あーん」

「おぉっ!?トモが好物な事が頷けますな〜ってミサカはミサカはたまごかけごはんを褒め称えてみる」


喋る特大ボールが動いた…!
と、黄泉川は口をパクパクさせた
お箸が動き打ち止めの口に運ばれるたまごかけごはん。

オカルトは侮れない、と黄泉川は真剣に思った
現に今自分が見ているのだから


「レータもハイあーん!」

「…チッ」

「大人しくアナタが食べてるってミサカはミサカはしっかり患者仕様の一方通行に驚いてみる」

「実は食べたかったんだよね!美味しいでしょ?なんたって私が作ったんだから〜」

「フンッ、かき混ぜただけだろォが。まァ、葉っぱよりはマシって事にしといてやンよ」


素直に美味しいと言えば良いものを…

ちゃっかり気に入ったのか、食べさせて貰う気満々で二口目を待ち口を開ける一方通行にトモと打ち止めはニヤニヤとした

そんな一連のやり取りを黙って見ていた黄泉川にトモは動いた


「黄泉川も!そんな所で突っ立ってないで一緒に食べよー!ハイあーんして〜」

「あ、あーん…じゃん?」


途端に幽霊ボールが動き箸が黄泉川の前に移動

もう何が何だか分からない…
怖がるものなのか、そこは敢えてスルーして平然とするのか


「オイオバケ、オマエ今のテメェの姿忘れてンだろ?その女が失禁する前に種明かししとけ。まァ処理すンのはクソガキだがなァ」


明らかに黄泉川が今の状況にビビっていると分かっていたが、面倒なので放っておいた
だが、飯を自分にも振られ先ほどよりも肩を竦めた黄泉川に結局助け舟を出した始末だ


「あぁ!みんなが普通過ぎて忘れてた」

「大丈夫だよヨミカワってミサカはミサカはこれはトモの能力だよって簡単すぎる説明をしてみたり」

「なんだ…そうじゃんね、ハハハ」


ここは学園都市。
現在、自分が在中するこの科学な都市の存在を完全に忘れていた

何故、能力者だと言う考えに行き着かなかったのだろう、と真剣に黄泉川は思った

謎が簡単に解けた所で黄泉川は、酷く安心をしてしまった事へ乾いた笑いをこぼした


――――


「今回はまだマシな方だよ?前はね〜何も持てなかったし触れなかったし、ほんとにただの幽霊みたいだったからご飯も食べなかったしね」


黄泉川にある程度の現状を説明したトモは、初めて能力が暴走した時の話をした

カエル似の医者の推測によると、一回目は怒り悲しみからきた暴走で本当にコントロールがつかない状態にあったんだろうと
少しずつ心を開いて行くことによって徐々に操作出来るようになった


「でも今はご飯も食べれるし、持てるし触れるしね!何より私と会話してくれるしね〜!そんな訳で黄泉川お姉さん宜しくお願いします」


と、見えてないがトモは頭を黄泉川に向かって頭を下げた

今回の暴走は、皆が無事だった事への安心からきたものだろう
加えて腕の負傷に睡眠不足で不安定な状態だったから。
こんな所だろうね?とカエル似の医者は更に推測する

医者の本音としては、負傷した腕が気になるので早く姿を現してほしい所だ
まあ、運ばれた時点で処置をしたので大丈夫だとは思うが

特大ボールも持てている事だし心配は無さそうだ


「それだけ元気があれば大丈夫じゃん、此方こそ宜しくじゃんよ」


今でこそ笑って話せるトモを強い子だなと黄泉川は思う
深い闇を経験したからこそ、今のトモが居る

教師の顔になった黄泉川は、この子もまた守るべき対象だと強く思った


「さーお子様達、話もここまでにして風呂に行くじゃん」


パンパンと手を叩いた黄泉川は立ち上がった


「入浴許可が下りたじゃん、しっかり疲れを流しといで!一方通行はしっかり二人の子守をするよーにじゃん」

「あァ?どォ言う意味だそりゃ」


ニヒッと笑った黄泉川の怪しい笑みの意図が分からず…

取り敢えず久しぶりのお風呂に喜ぶトモと打ち止めに後押しされて一行は病室を後にした


一応怪我人の集まりです
(オマエ風呂に入る必要あンのかよ?)
(気分だけでも楽しむのさッ!大丈夫、ちゃんと身体は洗えるー)
(うわあーい!お風呂おっふろ〜ってミサカはミサカはシャンプーハットを装着!)
(先に言っとくけど、お湯の無駄遣いは禁止じゃん)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]