Comes Up

□.
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一度あることは二度あると言う


「…また迷子になりました」


またしても打ち止めと一方通行とはぐれてしまったトモは、ぼそりと呟いた

だが今回は一人ではない


「とうまったら本当にどこ行っちゃったんだろう?私、今日はずっとこんな感じで、とうまとは離れ離れなのかな…」


隣には、ベンチに座りしょんぼりとするインデックス


「私もまたレータに怒られる…だけど〜玉入れを楽しそうにやってるの見たらそっちに行っちゃうのが普通ってモンさッ」


インデックスに続いてうなだれるトモ

‘保護者’と離れ離れになってしまった二人を何か元気にしてあげられる方法はないかと考えるのは、


「大丈夫、シスターちゃんにもトモちゃんにも参加できるものはあるのですっ!」


一見小学生にも見える小さな女教師、月詠小萌だ

インデックスもまた、上条当麻を見失いはぐれた一人
空腹でしなびれた野菜状態のインデックスに手を差し伸べた優しい先生
そんな時、一人放浪していたトモは見知った顔を見つけて今に至る

迷える仔羊は放っておけない質の小萌先生
勿論、初対面だろうがトモにも手を差し伸べる
まあ最初は、あまりのミニサイズに驚きと興奮が凄かった訳だが


「小萌ちゃん何に参加するのさ?もしかしてー!玉入れッ!?」


パァッと輝いた瞳に、


「玉入れはトモちゃん学生ではないので無理ですけど」


小萌の一言で、一瞬の内に瞳の輝きは失われたが、


「でもでも大丈夫です!何度も言いますけど、ちゃんと参加出来る方法はあるのですよっ!」

「はえ?な、何が?」

「な、何に参加するの?」


テンションがた落ちの二人に対し、必要以上に明るい声で話す小萌先生にインデックスとトモは呆気を取られる

どこの学校にも所属していない二人

学生である当麻と一緒に行動するのは、結構無理な話のインデックス
トモに関しても一応、一般人向けの競技もあったりするのだが、学園都市に居ながら学生として競技に参加出来ないなんてあんまりだ

こういうイベント事で一人ぼっちで取り残された人の気持ちは、教師である小萌先生も何となく分かる

だからこそ、打開策を見つける


「ですから、上条ちゃんと一緒に大覇星祭を盛り上げる方法はあるのです!シスターちゃんも、もう一人ぼっちにならなくていいのですよっ!」


別に一緒に競技に参加出来なくもいいのだ
何らかの形で関わる事さえ出来れば、きちんと一体感や満足感を得られる事が出来る


「トモちゃんも玉入れは一緒に出来ませんが、別の形で参加出来るのですよーっ!先生とシスターちゃんと一緒に楽しみましょう!」


意気揚々としながら二人の子供の手を引いて先生はチョロチョロと小走りした


――――


保護者は、確実に近付いていた。
いつも抱いている三毛猫、スフィンクスの鳴き声を辿っていけば、草木の生える茂みからひょっこりと顔を出した
保護者、上条当麻の顔をみるなり出した顔を引っ込めて奥へ奥へと去って行く

後を追って当麻が見たモノは、


「…………………………」


何故かお着替え真っ最中のインデックス
当麻とインデックスは、お互い目を合わせたまま動きを止める
さらにその隣には、小萌先生がインデックスの着替えの手伝いをしている
タンクトップを着掛かった片手を上げた状態で、チアリーディング用の下着を小萌先生が着させてあげている瞬間だった

そしてさらにその隣には、


「インデックスの次にトモさんね〜!あぁー楽しくなってきたッ」

「トモちゃん!?誰かに見られたらどうするんですか!シスターちゃんの次にやってあげますから大人しく待ってるのですよー」


上も下も下着姿のトモがクルクルと回っていた

小萌先生は、インデックス側を向いているので後ろに立つ当麻の姿には気付かない
焦点を定めず回るトモもまた気付かなかったが、インデックスが一点を見つめて固まっている事に気付きクルッと反転した所で漸く存在に気付いた


「当麻居たの?居るなら居るって言ってよね〜」

「…、あ、あ…す、すまねえ…」


真夏のビキニ姿でも公開しているようなトモの口振りに、当麻は謝ってみる

毎度の事ながら寛大すぎるトモには感謝だ。
が、その後ろで今にも食い殺してやろうと顔に書いてあるインデックスが怖すぎる

今すぐこの場から走り去れと頭は言っているのだが、冷や汗が流れるだけで身体が動かない


「ごめんなさいですー、正規の更衣室はその学校の人間でないと使えないって決まりがあって。こんな所でお着替えさせるのは心苦しいんですけどー…って、きゃあ!?」


そんな事情で人目には付きにくそうな場所を選んだと言うのに、上条当麻は幸運にも現場を目撃してしまう事に

遅かれながら今気付いた小萌先生
小さな身体が少しでもズレてしまえば、インデックスが大変な格好を晒してしまう寸前だった

その後は、誰もが想像つくお決まりの展開と言うわけだ


――――


「れぇえええたぁああああ!!」


アホな叫び声が聞こえた。
一度ならず二度までもやらかしたアホが走り寄って来た

しかも何だその格好は?


「学習能力がねェのかオマエは」

「ごめんなさい。度重なるご心配をお掛けして」

「だから別に心配なンざしてねェヨ。つーか何ですかァ?どこで拾って来た」

「あっコレね!可愛いでしょ〜」


打ち止めが居ないのは、一回目のトモが迷子になった理由と同じ訳だ

そんなことよりも一方通行の記憶しているトモの格好が違っている事に疑問を抱く
打ち止めが迷惑にもトモがトモが、と煩いので充てもなく探していたトモがチアリーディングの衣装に変更されていた

脇下の裾を掴んでヒラヒラとさせて披露するボケを冷ややかな目でやり過ごし、無視して歩き出す


「小萌ちゃんが着せてくれたのさッ!インデックスもね〜」

「あァそォ」

「そしたら着替え中に当麻がやってきてインデックスがガブーッってね〜」

「…ガブゥ?」


相変わらず主語のない話に適当に相槌を打つ

小萌って誰ですかァ?とか、インデックスと当麻は聞いたことあンな、とか。

まあ疑問に思うだけで問い掛けるなんてしない訳だが


「コレでレータを応援してあげるね!やっと大覇星祭に参加できるってことさッ」

「やっぱアホだなオマエ。俺がナニに参加するってンだァ?」

「…あぁ!?そういえばレータ何もしてないじゃん!早く今からあの綱引きに参加してきてちょーだいよ!そしたらトモさん全力で応援するからさ〜」

「勝手に一人でケツでも振ってろ」


そうなのだ。
今の今までこの服で勝手に一方通行を応援する気でいたのだが、一応重度の怪我人であり、そもそも一方通行が一致団結で優勝を目指すぞー!なんて。
と言うか根本的に学園都市全体が盛り上がってようが無視だろう

あー今年もハエが集ってうるせェみたいな。
酷ければ、無駄な雑音は遮断…的なノリか。


「じゃあレータ!私を探すの頑張って〜って応援するね」

「オイ何の応援だそりゃあ?」

「あぁッ!思い出したー!」


何か理由をつけて応援したいトモは、また迷子になるつもりらしい
顰めっ面で振り向いた一方通行に、トモは思い出した様ににっこり笑って、


「私からもほっぺにちゅーを贈ります!」


先ほどインデックスは、頭に噛みつくつもりで当麻に突進したが、避けた為に端から見ればほっぺたにちゅーなんて言う、可愛らしい現場を目撃した所だ

それを見て自分も一方通行にやろう!と思って実行された事だった

いきなり過ぎて、ふわりとやってきたトモに呆気を取られ、眉間に皺を寄せた一方通行が軽く舌打ちをした


放し飼い注意!!
(…なンの真似だそりゃァ?)
(インデックスのマネ〜!レータもお返しくれてもいいよ)
(愉快なオブジェをくれてやる。つーかボケ菌が移るから退け)
(アレ?照れたの照れたー?テレータさんねッ)
(一生ォ迷子になりてェンだなァ)



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