LOG置き場!

□オカマちゃん!
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「ツバサはこの部屋使え」

「お世話になります!」


お金が底を付き、飲まず食わずの生活を送っていた私を拾ってくれた妖精の尻尾
更に何度も言うけど無一文の私には、勿論すぐに生活出来るだけのお金も無い

そんな私を一緒に住ませてくれると言ったのは、この家の住居人グレイ・フルバスター。

なんていい人達に拾ってもらったんだろう
心より妖精の尻尾の皆様には感謝しても仕切れない。

まあ、それと引き換えに私は男になってしまったのだけど…


「家具か…しゃぁね、買いに行くか」

「ゴチになります!」

「バカかテメェ?ちゃんと働いて返せよ」

「ケチー」


一部屋、空きがあった部屋を私に提供してくれたグレイ
それから取り敢えず生活出来るだけのベッドやらテーブルやらを買ってもらった
服も何着か買ってもらった

まあ、あくまでも立替えだけどね。
ちゃんと後からお金は返しましたよ?


「グレイありがと!グレイ居なかったら、わた…いや、俺死んでたよ」

「大袈裟だな、つかその布団いつまで被ってんだよ?」


買った物を風に浮かせて運び帰る道中にグレイに言われた
指摘されたのは、今日一日羽織ったままの布団。
女を隠す為、胸の膨らみを隠す為にずっと着たままの毛布

今それで買い物行ったのか?って思ったでしょ…
そこはツッコむなよ?
私はこれでも必死だったんだから

男に成り切るってのは難しい
言葉遣いから気をつけなきゃ駄目だし、さっきも私って言いかけたし…

でも言葉遣いより一番厄介なのは、何より身体なのだ
だってどう頑張っても乳が無くなる訳でもないし、今は布団を被って隠すだけで精一杯
どう見られようが必死なんだから、毛布被って変な人とか思われようが、人の目は気にしない!

…とか言いつつ凄く気になるけど


「寒いから仕方ないのよ」

「…のよ?」

「…ツッコむな!さっきオカマの人が言ってだんだ、真似しただけだろ」


言ってる側からこれだ…
布団のフォローを自分でしたのに、言葉で失敗。

オカマとか言い訳が苦しすぎる
だが、なんとかグレイに言い訳が通りツバサちゃんはオカマなのね〜とか言い出す始末
仕舞いに手を口許に添えてオホホ〜と笑い出す。

これはこれでこの場を切り抜けられたから良かったものの、なんかムカツク…
すっごくバカにされてる気がする


「グレイ風呂入っていい?」

「おう、入って来いよ」


買い物から帰宅して部屋の片付けを終わらせ晩飯も済ませた。
後は風呂に入って寝るだけ

他人の家に住まわせてもらっている身なので、グレイに風呂の許可をもらう

今日、一日で色んなことが有りすぎた私は一刻も早く寝たかった。
そんな訳で、シャワーを軽く浴び簡単に済ませ直ぐに上がった


「あ…服、部屋に忘れた」


脱衣所で身体を拭き着替えようと思ったら服を持って来ていない事に気付く。
あるのは先程脱ぎ散らかした、今日着ていた服だけ
仕方なくバスタオルを身体に巻き付け部屋に戻ることに…


「もう上がったのか、はや…」

「うん、グレイも入れば〜!スッキリすんぞー」

「………」

「…?おーい、グレイー?」


グレイは座っていたソファーから身を乗り出し、私の方を振り向いたまま止まっている
ていうか、固まっていた

疑問に思いグレイの名を呼ぶも反応を示さない
そして手を振りながら暫く呼び続けていたら、静かにグレイが発した言葉…


「……ち?」

「は?」

「ちち膨らんでる…?」


あ…何してんだ私…
真剣に忘れてました。
今私、男だったんでした…

グレイは目をぱちくりさせて、目を擦りそして再度確認する様に見直す

そもそも男だと思われている私がこの女の子独特のバスタオルの巻き方で居るのもグレイからしたらおかしい訳で…
そしていくら無いからと言っても、ただの布一枚だけを纏っていれば貧乳でも少しの膨らみはある訳で…


「お、おおい!」

「…ん?」

「変態グレイ!見すぎだろ!?まんまと引っかかたな」

「は?」

「驚かそうと思って下に服入れてみたんだ、ビックリしただろ〜」

「そ、そうだよな!マジで焦ったっつーの」

「ツバサちゃんオカマだから〜!じゃっ着替えて来るわ」


グレイにそう言い残して、右手を軽く挙げて走り去った

私、頑張ったよね…?
グレイになんとかごまかせたよね?

昼間のオカマを思い出してここで使ってみた
グレイの顔と来たら、口も目も開きっぱなしでどうしようかと思った。

初日にして女とバレるとこだった
更に苦しすぎた言い訳が通って良かった
グレイが単純で良かった…

再度確認、私は男だ!
これから男としてやって行くんだからお風呂一つも気をつけなければ…


―――――


「ツバサ、オカマは卒業したのかよ?」

「なっ…いつの話してんだよ!?」


風呂から上がり、ソファーに腰を下ろせば私がこの家に初めて来た日の話を唐突に持ち掛けたグレイ
実は私も風呂に入りながらその事を思い出していたので、まさかグレイから言われたもんだから驚いた

あれ以来、私は男に成り切る為に頑張った
翌朝には早起きして家を飛び出しサラシを買いに行ったり
妖精の尻尾の男連中に男らしくなる方法を教わったりと…

そして現在に至る。
女だとはまだまだ明かせそうにないけど…


「グレイこれからも宜しくね」

「言ってる側からオカマかよ、ツバサちゃんよォ」


今はオカマでいいか…
でもね、これは私の本心だよグレイ。


オカマちゃん!
(グレイちゃんも一緒にどうかしら?)
(それ止めてくれ…)
(可愛いのに!グレイちゃん)
(オカマは、ツバサちゃんだけで充分だ)

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