LOG置き場!

□痛いモノは痛い
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「クソ共、ナニ隠してンだ」


挙動不審な二人を見て一方通行は低く発した。

お菓子を目の前に、目は食べたいと訴えているのに手を出さない
それ所か口数も少ない
いつも無駄に動く口が今日に限って動かない


「何もありません」

「普通だよ、ってミサカはミサ…省略してみる」


ほら、おかしい。

ソファーに腰かけた一方通行は、テーブルを間に挟んで向かい側に正座で座るトモと打ち止めに不審な目を向ける

二人揃って表情は右奥歯を噛み締め、顔をひきつらせている
心なしか冷や汗を欠いている様にも見える

ほっとくバカ二人が悪い
一方通行は、今最も聞きたくないであろう言葉を二人に投げた


「歯医者行ってこい」

「なっ、何言ってるのさッ!?」

「そうだよ!ってミサカはミサカは物騒な名前にギクリとしてみる」

「歯ァ食いしばってアホか?さっさと治して来やがれ」


そう。
トモと打ち止めは、二人仲良く右奥歯に大きな虫歯を作っていた

何となく気付いていた
お菓子に目がない二人が、最近食べない事
晩飯時、痛みをこらえて必死で食べていたこと

最早気付いているのは一方通行だけではない
とっくに黄泉川も芳川も気付いていた


「歯医者なんて得体の知れない場所に行くほど、私の右歯は柔じゃないし!」

「ミサカの右奥歯の黒い物はチョコレートが埋まっているんだよ!ってミサカはミサカは言ってみる」

「ほォ、右奥歯が痛ェンだな」

「…!?右奥歯なんて目じゃないさッ」

「これはチョコレートって言ってるでしょ!?ってミサカはミサカはもう一回言ってみる」


何となく虫歯をが出来ている事は、たまにひっ…!と、上げる悲鳴で想像がついていた
あえてほっといたのだが、今はほっとけない程痛みと戦うトモと打ち止め。

ふぅーっと息を吐き一方通行は、


「オイ、ババァ」


‘ババァ’と言う言葉にピクリと眉を動かし反応する黄泉川と芳川。

反応する時点で、自分はババァだと認めているもんだ


「一言余計じゃん?」

「聞き捨てならないわね」

「自覚あっから反応してンだろ?」

「黄泉川ババァなにしてらっしゃるの?」

「ヨシカワババァも!ってミサカはミサカは聞いてみる」

「トモ良い度胸じゃんよ」

「打ち止めはいつから口の悪い子になったのかしらね」


後ろから現れた二人によって、羽交い締めで拘束されたトモと打ち止め

その手から逃れようと暴れるのだが、後ろからガッチリと捕まっているので無意味な抵抗だった


「歯医者なんて無理です。もうしませんから許して下さい」

「アホか、謝って済むンなら虫歯なンざ最初っから出来ねェンだっつの。」

「もやしのおにー!!」

「リョーカイ。今すぐクソ歯ァ引っこ抜いてやンよ」


ボキボキと音を鳴らす右手を解しながら左手で電極へと手を伸ばす
顔が怖いほど笑っている一方通行にトモはすぐさま頭を下げて謝った


「ミサカももうしないから許して下さい!ってミサカミサカはトモの真似でお願いしてみる」

「何度も言わせンな、クソガキ」

「もやしのおにー!ってミサカはミサカはこれまたトモの真似をしてみたり」

「どォやら、てめェも引き抜きがお望みらしィなァ」


一度ならず二度までももやし呼ばわりを受ける一方通行は眉を引き上げて打ち止めに視線を送る
そしてトモ同様に頭を下げて謝った

大体、‘もうしませんから’とは何対して言っているんだか…と、黄泉川と芳川は思った


「じゃ、歯医者行くじゃん」

「………イヤだ」

「ほっとくと更に酷いことになるじゃん?さっさと治すのがいいに決まってんじゃんよ」

「同じくイヤだ!ってミサカはミサカは最後まで足掻いてみる」

「あなた達は歯が無くなってもいいのね?ご飯も食べられなくなっていいのね?」


ほっとけば虫歯はもっと真っ黒になり、夜も寝れない程痛くなり、大好きなお菓子もご飯も食べられなくなってもいいのね

芳川は更にトモと打ち止めに追い討ちをかける
大分大袈裟だが、こうでも言わないと行かないだろう

芳川の話を聞き冷や汗をダラダラと流す二人は悲鳴を上げた


「人の服噛むンじゃねェッ!」

車内にて。
やっと折れた二人を歯医者へと送るべく運転席に黄泉川、助手席に芳川、後ろの席に一方通行を真ん中にしてトモと打ち止めが隣に座る

一緒に行く気など全く無かった彼だが、二人の熱烈なご指名により結局着いていく羽目に


「いだぃ…んーっ!」

「ミサカもミサカも…ぎーっ!」

「ヨォダァレェェエエエ!!!!」


車内で本日一番の痛みと戦うトモと打ち止め。
あまりの痛さにジッとしていられなく一方通行の腕を取り服の袖を噛んで歯を食いしばっていた
服は延びる、ヨダレ付きの仕打ちを受ける一方通行は取り乱す
だが、トモと打ち止めの耳には届かず必死で服を噛み痛みに堪えていた

後ろが騒がしいなとミラー越しに黄泉川と芳川は見た
相当、トモと打ち止めに懐かれている一方通行の姿に自然と笑みが零れた




痛いモノは痛い
(泣いちゃうよ!ってミサカはミサカは…)
(いたいのどーしたらいい!?)
(だからってなァ腕まで噛むンじゃねェェエエ!)

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