LOG置き場!

□もしもの大掃除
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「ってことで大掃除してあげるよ!」

「あァ?」


また始まったンかよ…

ベッドに寝そべる一方通行へ唐突に切り出した
いつもながらに何が‘ってことで’なのか、たった今現れたばかりのトモを面倒臭そうに横目で見る

既にエプロンを着、頭にはバンダナまで巻き付けてホウキ片手に突っ立つツバサの姿

何かのコスプレか?と逆に言いたくなるその格好にため息が出る


「どこの家政婦だ」

「メイドって言ってー」

「清掃ババァの間違いだろ」

「玄関も台所もリビングも全部やったから後はこの部屋だけだよ」


そう言って一人掃除を始める。

ホコリ発見!と部屋の隅で固まっているソレを勢い良く掃くものだから掃除所か部屋を汚している様にも見える行為に一方通行はチッと舌打ちをする

未だに隅ばかり履くトモを残してベッドから起き上がった彼はリビングへ移動


そこで見たモノは、


「なンのギャグですかァ?」


片眉をピクリと上げ、リビングを見回す
これで掃除をした気になっているトモはオメデタイ奴だ。

綺麗なのは真ん中だけ
正確には、真ん中に置いてあるテーブル周辺は綺麗だ

後はホウキで履き散らかした跡が残りあちらこちらにホコリの塊
衣服や雑誌は一カ所に山積にされた状態


「余計に仕事増やしてどォすンだっつゥの」


悲惨なリビングに呆れの言葉しか出て来ない
一応やったと言う台所も見てみれば何故か爆発した跡が残っている
普通掃除と言うのは綺麗でピカピカになる筈だ
だが何故この台所は黒い煙が漂っているのか…

大掃除とやらをしない方が確実に綺麗だったに違いない


「オイ、トモ」

「ヘイ!御主人様!」


間違ったメイドに成りきっているつもりのトモに一方通行はリビングを見据えたまま首だけを振り返らせ言った


「やり直し」

「ヘイ?」

「ヤリナオシだ、クソボケ」


目を丸くさせて一方通行を見るトモは、一瞬停止した後にえーと叫ぶ
煩いトモの叫びに顔をしかめた一方通行は言うより見せた方が早いと思い、トモの首根っこを掴み広がる惨劇を指差した


「オマエの目は目クソでも詰まってンのか」

「パッチリおめめのつぶらな瞳だと思う〜」

「そォか。なら目ン玉こじ開けてもっかい見ろ」

「ビューティフルルーム!」


発音宜しくない横文字で言えばすかさず一方通行のチョップが入る
いた!と頭を抑えるトモにコイツの常識はどうなっているんだと逆に心配になる


「ゴミの山はなンだ?」

「うぎゃ…」

「散らばるホコリが綺麗に見えンのか?」

「あぅ…」

「台所からドス黒い煙が出てンのが正解か?」

「ぃたい…」


一言一言にチョップを交えながらまさに正論を述べる一方通行に一撃一撃に鳴き声を上げるトモ

カチッとスイッチの入った音が鳴った
入ったのは電極のスイッチではない。

そのおかげで、トモはこれから地獄を見ることになる


「オラ、ホウキなンざ使ってンじゃねェぞ」

「じゃーどうすんのさ?」

「雑巾で拭け」

「えー腕がつか、」

「拭け」


彼の辞書にホウキで履くや掃除機で吸い込むと言う言葉は無い
取り敢えず拭けば綺麗になる

文句を垂れようとしたトモにチョップと一緒に圧力をかければ、


「…ハイ」


いつもと何かが違う怖さに二言返事しか返せない
大人しく従うことにし、水で雑巾を濡らし早速床を拭こうとすればドスの利いた声をかけられる


「オイ」

「ヘイ!」

「テメェはこのダボダボ雑巾でナニすンだ」

「床を拭くのさッ!」

「死ね」


盛大に水が滴る雑巾をベチャと鈍い音を立てて床に置けば、すかさず一方通行のチェックが入る
笑顔で質問に答えれば真顔で二文字で返される


「コレでテメェの顔拭いてやろォかァ?」

「にーさん急に怖い…」

「絞るっつゥ言葉知らねェのか」


そう言ってチョップをまた一つ

さっきからドタバタと何かをやらかしているのは知っていた
だが、ベッドから起き上がるのも面倒でほっていたがそれが間違いだった


「ボケ子ォォオ!」

「し、絞ったよ?拭いてるよ…?」


怒鳴るようにボケ子呼ばわりされるトモは、肩をビクッと震わせロボットの様に顔を動かし一方通行へ振り返る

雑巾はちゃんと絞ったし、今だって床拭き続行中だ
何故怒鳴られているのか…?


「拭き取れて無ェだろォが、あン?」


それは先ほど拭き終えた箇所。
どこぞの姑がやりそうな仕草で一方通行は人差し指を立てて床をなぞる
眉を釣り上げ指に付いたホコリをトモに見せフッと息を吹きかけ吹き飛ばした

一方通行ってこんな人だったけか?
ある意味怖い今の彼にトモは身震いし、ボソッと呟く


「…コジュートレータ」

「なンか言ったか?」

「いいえ…今すぐ拭き取らせて頂きます」


隅々まで拭き、綺麗になった所でトモの腕は悲鳴を上げた
散らばった服や雑誌も直してすっかり綺麗になったリビング

一方通行の厳しいチェックとチョップに耐えた、まさに汗と涙の結晶と言うヤツだ。


「もう掃除イヤー!もう疲れたーもう寝るー」


ソファーにダイブして伸びる
身を投げ出し脱力するトモに高さを合わせる様に目の前に一方通行がしゃがんでいた

ニタァと笑った一方通行と目が合ったのでニターと笑い返す

お疲れとかご苦労さんとか。
そんな言葉を掛けてくれるのかな、と勝手に思っていると…


「終わったつもりで居ンじゃねェだろォなァ?」

「ん?空耳が…お疲れかご苦労って言葉が聞こえて来るはずだったんですけど」

「あン?無ェに決まってンだろ」


そう言ってソファで脱力するトモの首根っこを掴みキッチンへと移動。

何故か爆発した跡のあるキッチン
大掃除はまだまだ終わりそうにない


――――


「ただいまー!ってミサカはミサカは帰って来たことをお伝えしてみる」

「お、トモやるじゃん!玄関綺麗じゃんね」

「残った甲斐があったわね」


買い物に出ていた三人の帰宅。
本当はトモも行くはずだったが大掃除をすると一人張り切っていたので置いて行ったのだ

綺麗になった玄関を見て部屋への期待が膨らむ
買い物袋を引っさげリビングへと続くドアを開けようとすれば、


「もー許して〜」

「テメェなンざさっさとイッちまえ」


ドア越しから聞こえるなんとも反応しずらい会話に開けるのを止めた黄泉川。

確か大掃除をしている筈なんだが…


「大人な会話にドキドキ!ってミサカはミサ…」

「ハイハイ、子供は聞いちゃダメじゃん」

「何も聞こえないよ!?ってミサカはミサカはヨミカワー!!」


両手で拳を胸の前で作ってワクワクと上下に揺れる打ち止めの耳を塞いだのは黄泉川。


「にしても公共の場でよくやるわね」

「一教師として見過ごす訳には行かないじゃんよ」


ドア前で止まった三人。
それを黄泉川は意を決して勢い良くドアを開け放った


「オマエには呆れてモノも言え無ェよ」

「だからって私を燃やす気ですか!?」

「身体に叩き込ンでやるっつてンだろ?有り難く思え」

「思えないー!!」


そこで見たものは、一方通行の腕によって首を絞められたトモの姿
ギブギブと必死で一方通行の腕を叩いていた


「思ってたのと違ったかもってミサカはミサカは少しガッカリしてみたり」

「あぁ〜ミサカ助けてー」

「会話と行動がおかしいみたいだけど」

「このボケ子はなァ掃除のその字も知らねェブタ以下でよォ?丸焼きがお好みらしィぞ」

「ちょっとー更に絞めんなー」


今までの怒りと呆れをトモの首を絞める事で表す一方通行
どうやらキッチンから出る煙は洗剤を混ぜて放置したかららしい
そして爆発…


「掃除は強制終了!みんな帰って来たから終わり、やめるー」

「あァ?…ボケ子ォあそこに見えンのなンだァ?」


一方通行の腕から逃げ出そうとするトモに再び前方を見据えた先のホコリを見つけて一方通行は更に首を絞めた



もしもの大掃除
(アナタって掃除に煩い人だったんだねってミサカはミサカは意外な一面に驚いてみる)
(誰かコジュートレータ止めて〜)
(トモ頑張るじゃん)
(あら、此処にもホコリ落ちてるわよ)
(拭けェ!ボケ子ォオ)

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