LOG置き場!

□お返しは…
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「ハッピーバレンタイーン!かきぴー!」

「俺はおつまみか」


ニッコニコの笑顔で駆けて来るトモに目を細めた
そしてトモが手に持つ丸い物体を凝視する

この塊は一体なんだ…?


「…フンか?」

「垣根まで!?一方通行と全く一緒の事言うなんて…やっぱり丸がいけなかったか」


一方通行。
どうやら俺は一緒の事を言ったらしいが、大いに同感だ

問題は丸じゃない、大きさだ
両手で包めない程のチョコレートを貰うってのはある意味初めてだ…


「来年リベンジってことで、ハイ!ハッピーバレンタイン」

「トモからの愛の告白ってか?」

「こういうの義理チョコって言うんだって」

「ハッキリ言うなオイ…」


形はさておき、バレンタインにチョコなんぞを貰え普通に嬉しい
終始ニッコニコのトモに、ん?と首を傾げれば、


「かきぴー!私はマンションが欲しい!」

「…は?」

「お返し楽しみにしてる〜!」


そう言い残して去って行ったトモに呼び止めようと伸ばした手が行き場を無くして漂っていた


「お返し目当てかよ!?つかマンションってなんだ!?」


ぶっ飛びすぎなお返しに垣根は呆然とした。


――――


「つっち〜!」

「そんな走って来て、まさかチョコレートが貰えるサプライズでもあるのかにゃー?」

「あるよー!ハッピーバレンタイーン土御門ッ!」


目の前に到着したと同時に力作のチョコレートをジャーンと差し出す。
一方通行と垣根からフンだと言う異名をつけられた大きな丸いチョコレートを渡した

それを出され、バレンタインにチョコレートが貰えテンションがハイになった土御門
だが、随分と反応の取りづらい代物にサングラスで隠れて見えない瞳がギョッと大きく見開かれていた


「随分と個性的な事で」

「大きい分だけ愛情がたっぷりってコトさッ!」

「トモにしては上手いこと言ったもんだぜぃ!愛情なんて可愛く出たにゃー」


形不格好なチョコレートをその場でパクッとかぶりつく
見た目通りぎっしりと詰まった甘さが口の中に広がる

目の前で飛びっきりの笑顔を放つツバサに美味しいと一言
そして、次の瞬間トモの発言に土御門は口をポカンと開ける


「お返しはベッドを希望します!ダブルベッドだともっと嬉しいな〜」

「なんだって?」

「楽しみにしてるね、つっちー!」


バイバーイとそう言い残してトモは居なくなった

この爆弾チョコのお返しにベッドが欲しいだと!?
チョコレートが零れる程に土御門は口をポカンと開けた


「どんな落とし穴だー!?」


貰ったチョコを目をぱちくりさせて見た土御門は叫んだ。


――――


「とーちゃあーん!ハッピーバレンタイーン!」

「お父さんはバレンタインなんて不幸なイベント認めません!」


当麻の‘と’だけを取った即席あだ名とーちゃん。
それを何かを間違ったお父さんこと上条当麻は、走り寄って来たトモに泣き出しそうな顔で凄んで言った

そんな当麻に疑問符を浮かべて首を傾げた


「とーちゃん、素敵な日になんて顔してるのさ?」

「どーしたもこーしたも…所詮バレンタインなんて日は俺にとってはやっぱり不幸な日だったっつー事で、」


不幸少年がこんなイベント如きで幸せになれる訳が無かったのだ。

最初は良かった
とんとん拍子に貰えた数々のチョコレート達
久々の幸せを噛み締める瞬間
だが、当麻のフラグ体質がいけなかったのだ
理不尽な御坂のビリビリ攻撃
便乗してなのか白井のローキック
予想外にもチョコをくれた神崎に貰う途中で不運にも空き缶を踏んづけ躓いた勢いのまま胸にダイブ
結局刀を振り回される始末
そこへタイミング良く居たインデックスにはお決まりでがぶり
似たような事を吹寄にもやらかし豪快な頭突きを頂く
挙げ句の果てに姫神にもやらかしビンタを頂く


最終的に土御門と青髪にボコられる。
そして最後の最後に貰ったチョコレートはインデックスの胃袋へ直行


「結局俺は、怪我しただけなんですけどー!?」

「いいな〜当麻!楽しそうで」

「違うだろトモ!?要するに今日も不幸…」


当麻にとっては不幸だが、トモにとっては友達いっぱいの楽しいお話にしか聞こえない
そんな訳でテンション下がりまくりの当麻にトモはバレンタインらしく当麻にもチョコをプレゼント


「何だか分かんないけど、ジャジャーン!私のチョコは食べれるよ〜」

「眩しすぎて直視できねぇ」


個性的なフンの異名を持つチョコレートを当麻へ
色々言われてきた丸い大きなトモの手作りチョコな訳だが、当麻には輝いて見えた

本日数々の不幸を送って来たが、最後の最後で普通に貰え食べられる喜び
トモが女神にさえ見えて来る
目を細めて片手で顔を隠し大袈裟に眩しいのジェスチャーをした


「ハッピーバレンタイーン!」

「トモありがとう!今日一番の幸せだ…ッ!」


受け取ったチョコに嬉しさを噛み締める
だが、上条当麻はやはり不幸な少年だった


「お返しは布団セットがいい!ベッドは予約したから当麻にはその上をお願いしちゃうよ〜」

「…ヘイ?」

「お願いしまーす!」


トモは手を振って去っていく。
残された当麻は何が何だか分からなくなり直立
そして彼女はやってくるのだ


「とうまのモノは私のモノ」

「…あ、オイ、へ…コラどっから出て来てって、俺の最後のチョコが…」

「大きくて食べ応えのあるサイズなんだよ」


まるで見張っていたかのように現れたインデックスによりトモから貰った大きなチョコは一口でペロリ。


「結局食えず、しかもお返しが布団ときた…俺は食ってもねぇのにトモに布団のお返しをしなくちゃいけねぇってコトか?つか何故に布団!?何なんだこの不幸はー!?」


やっぱり当麻は当麻だった。


――――


「アクセラインレータ!」

「ボケは黙ってろ」


ドンっと後ろから飛びつかれ、すっとこどっこいな名前で呼ばれる
こんなボケでバカなヤツは一人しか居ない

杖を着き歩く一方通行の首に手を回されるトモを引き剥がすのも面倒で気にせずズルズルと引き連れ歩く


「いい加減重てェから退け、ブタ」

「私にはブタじゃなくてトモって名前があります」

「じゃァ退け、ブタトモ」

「うーん、50点!」


そう言って離れ、一方通行の前に回り込んだ。
進路を邪魔されたので仕方なしに彼も止まる
アホ面を更に緩ませたトモがニヘラと笑い立っていた


「ハッピーバレンタイーン!一方通行!」

「何回目だオイ」


数時間前にも聞いたセリフに顔をしかめる一方通行
気にしちゃ駄目だよ、と言ってからまたまた数時間前にも見た大きなチョコを差し出す


「またフンか」

「忘れてたからやり直すのさッ!」

「あン?」

「お返しは愛を下さい!」

「………はァ?」


そう言って前からフワッと柔らかく飛び込んで来た
腰に腕を回しピタリとくっつくトモ

ゴロゴロと小動物の様に一方通行に懐く


「お返しにマンションとベッドと布団は頼んだからレータは愛をちょうだいね」


パッと下から見上げニッコリ微笑むトモに一方通行の眉間に皺が寄る


「そのお返しとやらで一発イかして下さいってかァ?」


そんな気は更々ないだろうが一応聞いてみる
その三点セットは一体なんなのか…
はたまた一方通行は誘われているのか…?


「うん!みんなで寝よう!」


打ち止めも黄泉川も芳川もとトモは付け足す

一方通行の質問の返答になってない返答を返す
勿論彼の言ってる意味が分からないので軽くスルー

何処から情報を得たかは知らないが別宅を持ちたいが為のお返しらしい
取り敢えず家と寝るところがあれば良いと言う訳での三点セット
愛なんぞと言うキーワードはどうせ漫画かドラマからの受け売りだろう


「今度はナニ見たンだ」

「何で分ったの!?あの漫画のバレンタインのシーンを再現中です」


一体何の漫画を見たのやら…


「だからお返しに愛をちょーだいよ」

「投げ飛ばされるか踏み潰されるか選ばしてやンよ」

「じゃ、オデコにちゅーでいいよー」

「選択肢に入ってねェだろォが」


少し背伸びをして距離を縮める
挙げ句目まで閉じだした始末

入らない情報を入れ知恵した漫画をビリビリと破ってしまいたいくらいだ
本当にバカだコイツ…

数秒ほどトモを上から見下ろした一方通行はやがて…


「……いでッ!?」

「間抜け面してンじゃねェ」

「まさかのチョップ!?って、いだっ」


まさかちゅーなんて落とすわけもなく
いつもの様にチョップを落とす
一方通行から離れて痛いオデコを押さえるトモを横目に再び歩き出す
置いてかれたトモは待ってよーと駆け足で隣に並び一方通行の腕を取り一緒に帰路に着いた



お返しは…
(愛のチョップってヤツね!)
(いつでもくれてやらァ)
(じゃ、私は愛のハグ〜)
(絞め殺されてェンだな)

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