LOG置き場!

□寂しくなんかない!
1ページ/1ページ


「ただいまー!!」


家の明かりが付いているのが見え、嬉しくなって走った
勢い良く玄関扉を開け放ち嬉しさのあまり勢いのままに帰って来たことを叫ぶ

だが、何も答えは返って来ない。
それどころかシーンと静まり返る部屋が誰も居ない事を伝えてくれているようだった
視界に広がるのは朝と同じ


「電気付けっぱなしで出ちゃってたか」


テへッと可愛らしく舌でも出して自分の頭を小突く
そうする事で更に虚しさが増した


「いつ帰ってくんだよー!?」


そう言って誰も居ない部屋の中で大きな独り言を叫ぶ
だが叫べば叫ぶだけ、その後に来る静けさが余計に虚しいのだ


「…グレイの変態」


今度は小さな独り言を残す

いつもなら隣に居るのに…
今日所か既に一週間も姿を見ていない
それに後一週間も経たないと帰って来ない

単独で仕事に出たグレイ
当たり前の様にいつも一緒に居たからこんな気持ちになった事はない

居なくなってから気付くのだ
寂しいって…


「タバコなんか忘れて行くなよな」


椅子に腰掛けテーブルの上に置き去りにされた煙草を見ては同じ事をいつも言う
主人に忘れられた煙草は一人寂しく置かれているだけ


「お前も仲間、か…」


グレイに置いていかれた煙草をつついた
そんなツバサも置いて行かれた一人

グレイの置き土産と一緒に主人の帰りを待つ仲間の一人


「早く帰って来てよね」


そんな言葉がツバサの口から漏れた事を知ればグレイは喜ぶかもしれない

普段男っ気しか無い彼女が可愛らしい言葉を吐いているのだから


「タバコ〜後一週間も居ないぞ?あの変態間違って今日とかに帰って来ねえかなぁ」


ツバサの可愛らしい独り言を知っているのはこの箱だけ

この家は私とグレイの住む家
一人欠けるだけでこんなにも寂しかったのか…

煙草と睨めっこ状態のツバサはなんとなしに煙草を一本取り出した
それを口に加えてご丁寧に一緒に置かれたライターに手を伸ばし火を着けた
初めて口にした煙草をどうすればいいのか分からなく取り敢えず吸ってみる


「ゲ…うぇッ…ゴホッ、」


結果むせるに決まっていた。

口の中に溜まった煙をゴホゴホと咳と一緒に吐き出し涙目になる
何を思ったのか無意識に手にした煙草の味は何とも言えない


「マズいっての!グレイはこんなクソマズいモン吸って何やってんだよ!?」


自分で手にしておきながら怒りの矢先をこの場に居ないグレイに向ける

取り敢えずまずかった。
もう吸わない、と心に決めた瞬間だった

火の着いた煙草からは、もくもくと気持ちよさそうに煙が揺らいでいた

そしてふと思った。


「これ…グレイの匂い」


何だか嬉しくなった
それと同時にとても寂しくなった
この子も吸ってくれる人が居ないと寂しいよね、なんて思う

グレイの居ない部屋にはグレイの匂いでいっぱいなった

ここに居なくても気持ちは一緒だといいな…


「早く帰って来て…」


帰って来たらまず殴ろう
私を置いて行った事を怒ろう
それでいっぱい抱き付こう
苦しいぐらいに締め上げる勢いで!


そして最後に言うんだ
お帰りって…


寂しくなんかない!
(寂しいけどムカツクから一生帰ってくんなー!)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]