LOG置き場!

□本音が出るとき
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「ギュッを希望します」

「はァ?」


そう言ってトモは彼の前で両手を広げる
何処かしら目がいつもより垂れ下がって見える


「だからギュッと包み込んで欲しいのです」

「俺が素直にハイつってするとでも思ってンのか?」


両手をだらーんと垂れ下げダルそうに一方通行へ差し出す
だが、勿論そんな突然の注文に彼が応じる訳がない

拒否されても未だ両手を前に出すトモと睨めっこをする一方通行は分かっていた
トモの次の行動は、


「勝手にギューするから大丈夫です」


やっぱり当たっていた
倒れ込む様にフワッと抱き付く
腰に腕を回しピタリとくっつくトモに息を吐く
しかも先程から慣れない敬語を使って一体何だろうか?


「何オマエ?小刻みに震えやがって、なンの小動物だァ?」


そして気付く。
回された腕からの小さな振動に
と言うか、全身震えている

不思議に思い顔を覗き込もうも顔までピッタリと胸に押し当てている為、見えやしない


「オイ、」


いつものトモなら一人で勝手にベラベラと喋っている頃だろうが、何も喋らず静かに抱き付き震えているだけ


「…トモ」


誰が見ても分かる様子のおかしい彼女に声を掛けてみるが、返事は無い


「なンだ、どォしたってンだ?」


流石に少し心配になった一方通行はトモの頭の上に手を置く

此処でまた気付いた事がある。
それは頭が湯気が出てきそうな勢いで熱い事に
もしやコレは、


「………ん?」

「茹で蛸にでもなる気かァ?」


頭を持ち強制的に顔を上へと向かせる
先程より虚ろな目のトモと目が合った
反応の遅れ僅かに首を傾げたトモに一方通行は、そのまま自身のおでこをトモのおでこに当てた
そうすると、平熱より大分高いであろう熱気がおでこを通して伝わってきた

どうでもいいが、その自然なデコ合わせは何なんだ…


「そんな顔近付けちゃって、レータからのチューなんて特典が付いてくるのかにゃー?」

「クソロリコンの真似なンざしてンじゃねェ」


数センチで互いの唇が触れ合う距離で眉を垂れ下げて笑うトモに一方通行は、唇ごと噛み付いてやろうかと思った


「寒くて身体がギシギシして痛いんだぁ、頭フワフワでどーしよ?」

「そらオマエ、風邪ってヤツなンじゃねェのか」

「風邪ってヤツになったコトないから分からなーい」


一方通行は反射していた為、トモは透明人間だった為。
風邪にかかった事など勿論ない
知識が無く、取り敢えず寒いので人肌の暖かさを貰いに一方通行にしがみつくトモ

だが、ずっとこのままの状態も埒があかない


「トモオマエ、」

「………」


カエル似の医者にでも見てもらえ。
そう言おうと思ったが、トモは先程よりぐったりとし一方通行へと身体を預けていた

等々、返答しなくなったトモは荒々しく息を零すだけ
瞳を閉じふぅーッと息を吐く動作をしてからカッと目を見開いた一方通行は、


「ほっンとオマエ手間の掛かるヤツだよなァ!?」


トモを抱きかかえ、カエル似の医者が待つ病院へと慌ただしく走って行った

チューは無かったが、お姫様抱っこと言う特典をもらえたトモはそんな事も知らずに彼の腕の中で何故か微笑していた


「急患一人早く見やがれクソが!」

「扉は蹴破らなくても普通に開くからね?」


バーンと勢い良く破壊しそうな勢いで扉を蹴り開けた一方通行は、入るなり抱えたトモをカエル似の医者へとズイッと見せ付けた
特に驚きもせずにトモの顔を覗き込みながらカエル似の医者は呆れた様に、


「君は大切な物になると随分過保護だよね?大丈夫、ただの風邪だ」

「死ぬなンつー事になったらタダじゃァおかねェぞ」

「驚くほど大袈裟だ」


顔を真っ赤にするトモの額に手をあて、風邪っぽいねと呑気に言うカエル似の医者に一方通行はイライラした
医者から言わせれば、ただの風邪なのだから仕方ない


「今すぐ治せ!今すぐ治療しろ!後回しになンかしやがったらブッ殺す!」


もう一人の少女だけでなく、トモの事にも大概な過保護スキルを発揮する一方通行だった



本音が出るとき
(どうやら季節外れのインフルエンザみたいだね)
(あくせらさむい…)
(クソ医者、トモが寒がってンだろォが!)
(インフルエンザは五日程安静にしてるといい)
(悠長に五日もふざけンじゃねェ!)

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