LOG置き場!

□ありきたりな願い事
1ページ/1ページ


『一方通行と朝ご飯をたべる』
『一方通行とお昼ご飯をたべるってミサカはミサカは…』
『一方通行と夜ご飯をたべる』
『一方通行とお夜食をたべるってミサカはミサカは…』


ナンダコレ…

笹にぶら下がった色とりどりの短冊を少し覗いてやろうと、見てみれば、わざわざ願い事をする必要があるのか?と眉間に深い皺が入るような願い事達ばかりな訳で


「アホだろアイツ等」


普段当たり前に出来るような事ばかりが書かれた短冊を見てから自身も持つ何も書かれていない短冊に目をやった

数時間前、


「今日は七夕祭り〜!おひりめサンとひこぼしサンのなんたら〜で願い事を短冊に書く日さッ!」

「オマエなンたらの下りどォでもイインだろ?」

「うん!1日を幸せにねって思ってるよ」

「願い事とやらをしたいだけだろォが」


短冊を両手に持って何を書こうかな、と楽しそうに考えるトモを呆れる

七月七日。
今日は世間で言う七夕で年に一度、織り姫と彦星が会える日
簡単に言うとそういう日だが、そんなロマンチック話より願い事を短冊に書いて笹の葉に吊すその作業を彼女達は一番やりたいし、楽しみだ


「アナタの分もちゃんとあるからねってミサカはミサカはアナタにピッタリな真っ白な短冊をプレゼントしてみる」

「俺がやるとでも思ってンですかァ?」

「そういうと思ったから一枚だけあげてるのってミサカはミサカはしっかりと配慮したミサカを褒めてよねって」


打ち止めもトモ同様に両手に持った短冊の内、一枚を一方通行に渡した

今から五十個のお願い事を書かなきゃ〜!と手渡すだけ手渡して去って行った二人
どんだけ書くんだよと目をこじ開けて去っていく二人を凝視した

イベント事は大好きな黙っちゃいないトモと打ち止め

そんな訳で今に至る
別に書くこともなければ、面倒臭い書きたくもない
だが、やらなければ後が煩い

取り敢えず、アホ二人が何を書いているのか見てみると、アホみたいな願い事ばかりに一方通行は舌打ちをした


『一方通行と一緒におやすみするのさッ!』
『一方通行におはようって言うのってミサカはミサカは…』
『ミサカと一方通行とコンビニに行きます!』
『トモと一方通行とテレビを見るのってミサカはミサカは…』


読めば読むほど肩がずり落ちて来る
こめかみがピクピクして来た一方通行はおでこに手を当てて左右に首を振り息を吐いた


「クソガキとクソケツはナニ考えてンだァ?」


はァ…と漏れた息と共に他にもまだまだある短冊を目を細めて眺めた


『黄泉川と芳川と一方通行とミサカとみんなで遊園地に行きたい』
『黄泉川と芳川と一方通行とトモとミサカは初めての動物園に行ってみたいってミサカはミサカは』
『黄泉川と芳川ともやしとミサカでいっぱい遊ぶー!』
『黄泉川と芳川とモヤシとトモとお買い物に行くのってミサカはミサカは…』


ちょっと待て…
一方通行の額には青筋が段々と立ってくる


『レータがもやしから脱出できますよーに!』
『モヤシゃなくてうさぎさんになったら可愛いと思うのってミサカはミサカは真っ赤なおめめのあの人を想像してみる』
『真っ白猫サンでもいいと思うのさッ!』
『さんせー!ってミサカはミサカはトモに激しく同意してみる』


短冊で会話してやがる…

これは願い事でもなんでもない
それにさっきから読んでれば、もやしだモヤシだって…
ブチンッ!と一方通行の中で何かが切れた音がした


「スリ潰す!クソ共死刑だ、オイ!」


そんな怒声が飛び交うも今はトモも打ち止めも居ない訳で彼の怒りは届いていない


「レータが楽しそうだよミサカ」

「大きな声出してるねってミサカはミサカは興奮する程楽しんでるあの人を微笑ましく思ってみたり」


何を言っているのか分からないが取り敢えず声は聞こえる一方通行の怒りを二人は良いように解釈して最後の短冊を書き終えて一方通行の居る部屋へとかけて行った


「ちゃんとお願い事書いたー?」

「何書いたのってミサカはミサカはたずねてみたり」


バタバタと走ってきた二人にギロリと視線をうつし物凄い目つきの一方通行と対照的ににっこにこのトモと打ち止め

怖い顔も気にせず、前に立った二人に両手を上げ勢い良く振り下ろした


「なんでチョップー!?」

「理不尽過ぎるのってミサカはミサカは涙目でアナタを見つめてみたり」

「あァン?まだまだ足りねェぞクソ共が」


まさか本当にすり潰す訳にはいかないので、この怒りを渾身のチョップで晴らす

もやしの罪は重いのだ。

全く訳の分からない状況に痛い痛いと双方から放たれるが、取り敢えず交互にチョップチョップチョップ…

普通に見れば一方通行はただのガキだ


「意味は分かりませんが、頭は痛いだけどー!」

「最後の短冊をボロボロの身体でつけてみるってミサカはミサカはヨタヨタしながら前へ進んでみる」


やっとチョップから解放されたトモと打ち止めは一方通行をくぐり抜け笹の葉に書いた短冊をつるした

完成したそれにキャッキャッと騒ぎ、頭のジンジンとくる痛みを無理やり飛ばしてはしゃぐ

二人の最後の願いは一緒だった


『ずっとみんなで一緒に居られますように』


最後の短冊に込められた願い

一人で遠くに行かないで

一つ一つの短冊にはそう言う願いが込められているのだ
みんな一緒がいい、一方通行と一緒がいいと…


「ンなッ!?なンだァ?」


二人の吊した短冊を見て、一緒時が止まっていた一方通行は、二つの重みを感じ我に返った

いつもの事ながら、急に飛びついて来た二人をよろけながら支え驚いた


「願い事一つ叶ったねミサカ!」

「そうだねトモってミサカはミサカはアナタの腕にぶら下がってみたり」

「…チッ、クソが」


『三人一緒に居ること』
まさに叶えられた一つの願い事だ。

何だか胸のあたりがムズムズするのは何故か?
それはトモと打ち止めが暖かすぎるからだろう

だが一方通行は気付かない
いや、気付かないフリでもしているのか


「で、アクセラのお願い事はなんなのさ?」

「あン?ンなもンねェ」

「早く書かないと七夕終わっちゃうってミサカはミサカは忠告してみたり」


早く書けー!と飛び乗られた。
バターンと三人仲良く床の上に倒れ込んだ
そんなトモと打ち止めは、本日二度目となる一方通行からのチョップを受けることになる

楽しそうに聞こえてくる声にリビングのテーブルに腰掛けていた黄泉川と芳川は微笑みあっていた。

結局彼は、短冊には何も書かなかった
その代わりに心の中でそっと書いたものがある


‘アホ面でこの先も笑ってろ’


気付かないフリをするが気付いているのだ。
この笑顔が好きだと言うことに


ありきたりな願い事
(胸が大きくなりますようにって書くの忘れてたってミサカはミサカは取り乱してみる)
(フンッ、端っから無理な願いが叶うわけねェだろォが)
(私はちゃんと書いたのさッ!あぁッ!?大きくなった気がしてきたぁあ!)
(あン?どォみてもまな板だろ)

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]