あの人の甘い罠に気をつけて
□02.密会の鉄則
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「じゃあ、気をつけて帰れよ」
すっかり日が暮れた。
二人きりの時、チャイムの音が鳴っていたなんて気付かなかった。
早瀬先生に夢中で、みんなが下校してることにすら気付けなかった。
夜は、まだ長いけど。もう、ぽっかりと月が浮かんでいて、月は堂々と夜が来たと主張していた。
「早瀬先生も気をつけて」
「今は二人きりだろ」
月のように、堂々としていられるかな。
「あ、智貴。智貴」
「今度、二人きりで敬称付けたら罰ゲームだからな」
微笑む早瀬先生。
“智貴”って呼ぶのは緊張する。
でも、きっと。
もっと、もっと、
二人で居たら、慣れるよね。
【密会の鉄則】