華蓮学園高等部

□04.二つの感情
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集会も終わった頃に、教頭の鈴根先生に呼ばれた。
何か問題があっただろうか。

「桜坂君、橘副理事長が呼んでるから理事長室へと向かいなさい」

「……わかりました」

「あと、君が生徒会長で良かったと思っているよ。これからも頑張りなさい」

「ありがとうございます」

俺が生徒会長で良かった?
四条のような革命を起こそうと考えるようなカリスマじゃないからか。
教師の視線から見て、俺は“安全”な生徒だから、そういうことだろうか。


「桜坂さん」

「水野か」

「教頭に呼ばれてましたね。副理事長のお話しの最中に話していたのがバレたんでしょうか?」

「いや、それじゃない」


水野にそう言って、俺は理事長室へ向かうために歩いていく。
理事長室は、ここからは遠くはない。
でも、副理事長が俺を呼ぶだなんて、初めてのことだと思う。

そもそも、理事長はどこに遊びに行ってるんだろうか?
あの若さで副理事長を勤めるとは、有能だということは分かるけれど、かわいそうだと思ってしまう。


理事長が彼を信頼しているんだろう。

でなければ、“副”である彼に、学園の行く末を任せるだなんて。
実際には、副理事長の彼が学園を動かしていると言って間違いじゃない。

やっぱり、有能であり、信頼できるほどの腕と弁が彼にあるということなのだろうか。






「理事長室……」


なぜ、俺を呼んだのか。
それは、この中にいる彼が考えていることで、彼にしか分からないことだろう。


ドアを二回ノックする。

「桜坂です」


「ああ、どうぞ。中に入ってきてくれ」

優しくて低い大人の男性の声が理事長室の中から聞こえた。
この声は、さっきも聞いた。




副理事長、彼がいる。


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