クリムゾン・ブラック
□ペルソナブラック
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そういえば。
葛生が教室から出て行った。
トイレだろうか。保健室だろうか。
人間は、どうやら他人を好きになってしまうと色々と勝手に相手のことを心配してしまうように出来てるらしい。
「は、花井さん、立って」
「すみません」
授業終了のチャイムも日直の挨拶も聞こえなかった。
俺のカラダは、とても都合良く出来てるようだ。考え事をして悩めば悩むほど周りの声が聞こえなくなる。
そう、俺を悩ます最大の原因。
葛生財閥の御曹司、葛生遼太郎。
ただ一人だ。
彼を探さなくてはいけない。
俺が彼を探さなくてはいけないような関係性ではないけれど、好きな人のことを放っておけるほど俺は強くない。
教室を出て、廊下を歩く。
たくさんの人混みで行き交う賑やかな廊下が、なぜか静かだった。理由は分かる。俺が原因だからだ。
「Aの顔が恐いぞ」
「何を探してんだ?」
「知らねーよ」
「血祭りする相手でも探してるんじゃ」
血祭りする相手じゃない。(血祭りとか喧嘩とかそういう痛くて怖いのは嫌いだからと俺が言っても通じない。)
俺の探しているのは、葛生遼太郎だ。
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