REQUEST

□せいじゃの話
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リクエスト小説。
mixiできりばん28000を踏んだ方より
「 なら、高校青春純恋短編ストーリーを。ただし、女の子が男勝りの女の子が好きになるって縛りで(笑)」
てリクエストいただきました〜。




放課後の教室に君と二人きり。


…ミファソ

ドミファソ…

ドミファソ・ミ・ド・ミ・レ…

「この間あずみ屋でさー、久々にロケット鉛筆見つけてさー」

ミミレ・ド・ドミソ・ソファー…

「買おっかなあて思ったんだけど、隣にロケット色鉛筆てのも売っててさー、そっちのが超惹かれちゃってー」

ミファソーミー

「まあ結局何も買ってないんだけど」

ドーレー

「ういっくしゅっ!」

ドー♪

「あ、鼻水」
「あのさ」

ビー玉のような蒼い瞳。

「…煩いよ、真由」

その瞳が、そのやりきれない程に美しい蒼が、

その瞬間、
私だけのモノになった。

「………ごめんね、リズ」

私が謝りながら微笑むものだから、リズがくっきりと眉間に皺を寄せる。

「変な奴」

…それが美しすぎて、
それが嬉しくて、
それが切なくて、

「…今時ハーモニカとか吹いちゃってる女子高生に言われたくないよ」



私は泣いたんだ。

顔で笑って心で泣いて、

下心ではやっぱり笑って。





その行為にこれといった意味は無かった。

ただなんとなく。
急に己の瞳を蒼くしたくなっただけの事。ちょっとした思い付きの事。

だから思い付くやいなや、すぐさま眼鏡屋に直行。
すぐさま度無しのカラコンを購入。
視力1.5の私にとって、生まれて初めてのコンタクトレンズ。それはただただ違和感と痛みまみれなモノだったけれども…
鏡を見た瞬間、
その違和感が全て無に溶け込んでいった。

ボサボサの黒いショートカットに鋭く大きな瞳。
ああ。
やっぱり私には【蒼】が似合う。

これなら…気付いてもらえる。

ただひたすら満足だった。

意味なんて無い。
理由なんて無い。

私はただ、ひたすら満足だった。





リズがリズになって、約三週間程の月日がたった。

ある日突然【蒼】くなった友人に、クラスメイト達は心底驚いた。
先生達も心底驚き、リズがリズになったその日の放課後、リズを至極当然のごとく職員室まで呼び出した。

しかしリズはそれを無視しするでも誰かに自慢するでも臆するでも無く、
たんたんと職員室に向かい、たんたんと鼻血まみれになりながら教室へと舞い戻った。

「似合うと思いませんか?…て聞いたら殴られちゃったよ」

そう言うと、リズは照れくさそうにして笑った。

リズはその日から蒼い瞳というだけで皆から【リズ】と呼ばれる様になり、
リズを殴った先生は体罰問題だと学校から姿を消した。

相変わらず子供に甘ったるい世の中だと思いつつも、そんなリズの自由奔放さを崇拝する人が一気に増えた。

私もそのうちの一人。




…いや、
厳密に言えばそうじゃない。か。

「ねえ、リズ」
「あ?…なんだ。真由か」
「その蒼い眼さ」
「辞めろよなー。お前まで【リズ】とか呼ぶの」
「辞めてよ」
「え」
「辞めなよ」

似合わないよ。

…とは言えなかった。けど、

「…何で?」
「…別に。ごめん」
「何で?気になるだろ」
「………………」
「…ガキか」
「リズに言われたくない」
「ふーん」


そして、リズはまるで何事も無かったかの様に去っていく。
何事も、無かったかの様に。

「………………」


…いつもいつも、
自分だけで全部決めちゃうんだよね。

リズは私の親友だった。
リズは【リズ】になる前から私の親友だった。
我が道を行くリズと、その道を後から辿りたがる私。
リズは私の親友で私の憧れ。
保育園からずっと一緒。
ずっと親友。
ずっと二人で。
ずっと…………………ずっと…?

…当たり前か。
【リズ】はリズのモノなんだから。
私のモノじゃ、ないんだから。
それにそういうのがリズの良い所なんじゃないか。

だから皆も【リズ】を視るようになって…。

リズがますます遠くなった。


「…あー、もう!」

何だか変だ。私。
特にリズが【リズ】になってから。

ずっとずっと親友だったのに。
ずっとずっと大好きな親友だったのに。
ずっとずっと、

リズは私のだったのに…。


「…ガキか!」

独り言が大きい私を見て、クラスメイト達がいぶかしんでくる。

でもいいんだ。
あんたらがリズを視るから、こんなにも私はイライラするの。
だからいぶかしまれても罪の意識なんて感じない。

…何でイライラするかは知らないけどさ。

しかも、
皆じゃなくて【リズ】にイライラする。



このままじゃあ、
リズを嫌いになっちゃうかもしれない。

あんなに大好きな親友だったのに。



心が狭いな、私。


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