SHORT

□バレンタインの話
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「うまっ!うまっ!」

「だからさ…やめろや」

「いいじゃん、減るもんじゃないし」

いや減ってるよ。てか、お前には道徳というものがないのか?…あ、その前に常識がないのか。この○○…
って、かなり暴言吐きまくってるな。ごめん、ケンタ。

「でもなぁ…」

今日はバレンタインディという日らしい。女の子が好きな人に思いを伝えるためにチョコレートを渡す日。いや、好きな人でなくても、いつもお世話になってる人に渡して、感謝の気持ちを伝えるという日でもあったはず。

あの子は友也くんという人に、好きという気持ちも、感謝の気持ちも伝えたくなくなった。じゃあ、今は、彼のことをどう思っているんだろう?嫌いになったの?無関心になったの?それとも…。

「は…腹痛い…」

「ばっか!だから辞めとけって言ったんだよ!」

「え…聞いてない…」

「てか常識だろ?僕たち犬にそういうのは危険なんだよ」

「そんなぁ…」

半泣きのケンタを薬草がいっぱい生えている原っぱにつれていってやる。これだから元飼い犬は生温いんだ。すぐに勝手に死ぬし、すぐに保健所に捕まる。俺みたいに生まれたときからノラだったら…。

いや、やっぱりあいつらが羨ましい。付けられた名前があるから。

…友也くんという人は名前があって、他人に思われていて、きっと殺される危険性もなくて…きっと幸せなんだろうな。

だから幸せを持ちきれなくて、こうやって余った幸せが僕らの方に回ってきたんだろうな。




…いや、だけど、

迷惑だね。

実際にケンタは腹を壊したし。


他人の思いは、時として最悪な毒になるんだよ。





その包みの中には、やはりピンクの可愛いカードが入っていた。

そこには、こう書かれていた。










『愛してた』


fin.
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