ナゾトキ×ツインズ

□3.ライアーズ・センテンス
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さて、今度は何を書こうかしら。
イチそう言い、愛用のパソコンを立ち上げた。
今日も相変わらず暑い。

「何でクーラー使わないんだ……。」
「節電よ、節電。イツキはこれでも読んで気を紛らわせなさいな。」

一人で涼しい顔をして言われ、無性に腹が立ってくる。渡されたのは、予想通りのそれ。前回の結果にどうしても納得が行かない俺は、懲りずに字面を追った。






その日は、ここ十年でも記録的な寒さだった。

「こりゃ、下山するのは雪が止んでからの方が良さそうだ。」

この小さなホテルのオーナーでもある、おじいちゃん……もとい、秋吉耕史さんは言った。

「えぇー……勘弁してくださいよ。明日は仕事が、」
「この感じだし、二、三日は無理かもねえ?」

別にいいんじゃない?働き詰めなんだから、羽を伸ばせば?
あっけらかんと言ったのは秋吉楓さん。オーナーの娘だ。夫である秋吉昴さんは余程仕事が気掛かりなのか、そわそわとしていて落ち着かない。

「朱鳥は帰れなくて残念?」
「いえ、寧ろ天候を理由に学校を休めます。」
「はぁ……この人も見習えば良いのに。」
「あははっ、そういう人と結婚したんでしょう?」
「……相手、間違えたかしら。」
「え」
「聞こえてるぞー。朱鳥もなかなか酷いな。」

戸籍上、私はこの二人の娘だが、血縁的に正確な表現をするならば、姪、と言う事になる。

「何やってんだ、こんな所で。荷造りはどうした?」
「あ、何か二、三日は無理かもって楓さんが。」
「え……何だよもう。動いたら腹減った。夕食はまだかー。」
「さっき厨房行ったら作ってる最中だった。」
「よし、じゃあ遊ぶか。」
「切り替え早っ!」

久也くんは昴さんと楓さんの正真正銘血の繋がった息子。つまり私の同い年の兄で従兄弟。お互いそりゃもう本当の兄妹同然に育っている為か、接し方はかなりフランクだ。

「ごめんなさい、ちょっとだけ静かにして貰えるかしら?」
「あっ、!」

いっけない。そう言えばここ自分の家じゃ無いんだもんね。秋吉の人間以外にも泊まっている人はいる。久也くんもちょっとバツが悪いようだ。

「騒がしくしてすみません。」
「申し訳ありません。」
「あらあら、従業員でも無いのにそこまで謝る必要ないわよ。今寝た所だったから。」
「寝た?……あ。」

女性が示す通り、そこにはソファですやすやと眠っている子共がいた。

「わー……可愛い……。」
「お持ち帰りするなよ。」
「……久也くん酷い。」

やり取りを見ていた女性はくすくすと笑う。

「やだ、もう……ええと、名前をお聞きしても?」
「えぇ、勿論。私は中村乃愛。この子は浩和よ。よろしく。」
「乃愛さんと、浩和くんですね。記憶しました!私は秋吉朱鳥です。で、こっちが……。」

ちらっと久也くんの方を見た。何だか仰々しいお辞儀をしている。またふざける……。

「秋吉久也と申します。」
「あら、ご兄弟かしら。それに、秋吉って……。」
「ええ、まぁ。ここのオーナーの孫になります。」








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