気まぐれあの子の小武士道

□ちゃいるど・ぱにっく
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ある日の、朝。

千鶴は、朝食の準備が出来たのに起きて来ない優希を心配し、起こしに向かっていた。

からくり(携帯)を使って毎朝決まった時間に起きる優希が、寝坊することは珍しいからだ。

まさかまたいつかの様に、高熱を出して寝込んでしまっているのでは、と、千鶴は急いで、優希と共に使っている部屋へと急いだ。

優希はいつも頭まですっぽりと布団をかぶって寝ているため、千鶴が起きた時には優希の状態の確認が出来ないからである。


「優希ちゃーん。朝食の準備が出来たんだけど、起きてる?」


閉じられたままの襖の向こうに声をかけるが、返事はない。

まだ寝ているのかと思い、これ以上遅くなると騒がしくなる輩が若干一名いるので、千鶴はもう一度優希の名を呼びつつ、そろそろと襖を開けた。

そして次の瞬間、目に飛び込んでくる違和感。



「…………え?」



   †††



千鶴が優希を起こしに行ってからいくらか時間が経ったのに、優希はおろか千鶴も戻って来ない。

これ以上待てないといつもの様に騒ぎ出す新八を落ち着かせ、土方はぶちぶち文句を言いながら、彼女達に与えている部屋へと向かっていた。

廊下を曲がったところで見えたのは、二人が使っている部屋の襖が、僅かに開けられているということだった。


「あいつら…何してやがんだ」


遅い、と文句の一つでも言ってやろうと思った土方は、乱暴な足取りで部屋に近付き、半開きだった襖を、思いっきり開けた。


「おいてめぇら!いつまで待たせ…やが………ん…」


勢いよく部屋に入った土方だったが、目に飛び込んできたそれに、口をあんぐりと開けて固まった。


「おい、雪村……それ」


それ、を指差しながら、土方は先に部屋の中にいた千鶴に、尋ねた。


「えぇっと……多分、優希ちゃんです……」


千鶴が、自信なさげな理由。

それは、大人なはずの優希の、子供のように小さくなった姿のせいだった。



   †††
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