気まぐれあの子の小武士道
□ちゃいるど・ぱにっく
1ページ/9ページ
ある日の、朝。
千鶴は、朝食の準備が出来たのに起きて来ない優希を心配し、起こしに向かっていた。
からくり(携帯)を使って毎朝決まった時間に起きる優希が、寝坊することは珍しいからだ。
まさかまたいつかの様に、高熱を出して寝込んでしまっているのでは、と、千鶴は急いで、優希と共に使っている部屋へと急いだ。
優希はいつも頭まですっぽりと布団をかぶって寝ているため、千鶴が起きた時には優希の状態の確認が出来ないからである。
「優希ちゃーん。朝食の準備が出来たんだけど、起きてる?」
閉じられたままの襖の向こうに声をかけるが、返事はない。
まだ寝ているのかと思い、これ以上遅くなると騒がしくなる輩が若干一名いるので、千鶴はもう一度優希の名を呼びつつ、そろそろと襖を開けた。
そして次の瞬間、目に飛び込んでくる違和感。
「…………え?」
†††
千鶴が優希を起こしに行ってからいくらか時間が経ったのに、優希はおろか千鶴も戻って来ない。
これ以上待てないといつもの様に騒ぎ出す新八を落ち着かせ、土方はぶちぶち文句を言いながら、彼女達に与えている部屋へと向かっていた。
廊下を曲がったところで見えたのは、二人が使っている部屋の襖が、僅かに開けられているということだった。
「あいつら…何してやがんだ」
遅い、と文句の一つでも言ってやろうと思った土方は、乱暴な足取りで部屋に近付き、半開きだった襖を、思いっきり開けた。
「おいてめぇら!いつまで待たせ…やが………ん…」
勢いよく部屋に入った土方だったが、目に飛び込んできたそれに、口をあんぐりと開けて固まった。
「おい、雪村……それ」
それ、を指差しながら、土方は先に部屋の中にいた千鶴に、尋ねた。
「えぇっと……多分、優希ちゃんです……」
千鶴が、自信なさげな理由。
それは、大人なはずの優希の、子供のように小さくなった姿のせいだった。
†††