灰色の世界(ゆめ)


□弐拾夜
1ページ/1ページ



















神田が任務に出かけてから3日経った頃、アレンとリナリーも任務に出る事になった。
内容は、「連絡が取れなくなった神田探し。」だそうだ。
ローマに任務に出た神田と連絡が取れなくなったそうだ。
コムイにその任務を預かったアレンたちが、司令室から出てきた。
出てきたアレンは信じられないと言う顔をしていた。
リナリーはどこと無く心配そうな顔をしていた。


「本当に神田と連絡取れなくなったんですか?」

「アレン君、さっきも言われた通りよ。
私達はそれを確認しに行くんでしょ。」

「それはそうですかど……」

「あ、天狼。兄さんが呼んでたわよ。」

「リーバーから聞いている。リナリー、神田を頼んだ。」


擦れ違いざまにそう言ってパタンと、司令室に入って行った。
リナリーは驚いた様子で、振り返ったが既に天狼は司令室に入っていた。


「如何したんですかリナリー?」

「……いいえ。行きましょう。(神田、無事でいてね。)」


司令室に入って天狼は盛大な溜息をついた。
それに驚いたのか、コムイは顔を上げた。


「どうしたの?天狼くん。」

「何でも無い。」


ソファーに深く座り込んだ。


「なら良いけど。それよりね。
さっきリナリー達から聞いたかも知れないけど、神田君と連絡が取れなくなっているんだ。
天狼くんをそっちに回したいのは山々なんだけとね。暫くここで待機して欲しいんだ。」

「別に、良い。お前が決める事だ。」

「………そっか。
じゃぁその間にね、科学班のお手伝いを頼もうと思っているんだ。
ほら、何かやっている方が気が紛れるだろ?」

「任務があるならそっちを優先させろ。」

「ハハハ、天狼ならそういうと思ってたよ。
ごめん、君を試すような事言って。
分かった。じゃあ早速任務に向かってもらおうかな♪なるべく急ぐ任務なんだ。」


コムイに任務を言い渡され、急いで向かった。
今回一緒のファインダーはトマだったのが幸いだった。
トマと共に現地に向かう。
任務内容は「最近アクマが多く出没している。そこのアクマの殲滅」天狼に持って来いの任務だった。


「それにしても、神田殿は大丈夫でしょうか。」


汽車がいっぱいで、トマは天狼がいる個室に入っていた。
天狼は一瞬苦い顔になったが、直ぐにいつもの無表情に戻った。


「さぁな。トマ、今回の任務身に危険を感じたら直に逃げろ。」

「は。」

「どのLevelが何体いるかが、ハッキリしていない。」

「分かりました。」


それから、アクマが多く出没していると言う所に近付くに連れて、アクマに襲われる回数が増えていった。
その間ほぼ、野宿だ。
現地に着くなり、多くのアクマに取り囲まれた。
トマは、かなり驚いていた。
しかし天狼はいたって冷静だった。


「 発動……(change)トマそこから半径1mから出るな。」

「分かりました。」


天狼は燦黎で、次々とアクマを倒していく。
トマに向かっていくアクマはことごとく、弾き返された。
天狼が、燦黎の一部をトマの辺りに張り巡らせていたからだ。
倒したアクマの数が30体を越した辺りで、どこからとも一人の男が現れた。
普通の人間だった。


「なっ!んな所に人間がいるんだ。トマ、そこからそいつの所に行け!」


そう言うと、トマの周りの燦黎の発動を止めた。
トマは天狼に言われた通り、男の方に走っていった。
無事にトマが辿り着くと、


「そこから、半径2m以内から動くな。直ぐ終わらせる。」


再びトマと男の周りに燦黎を張り巡らせ、アクマと対峙した。


「え?は?なに?」


男は何がなんだかわからないようだ。
天狼が言ったとおり、モノの数分でアクマは全て破壊し尽くした。
天狼は燦黎の発動を解いた。


「お前ら、無事か?」

「何とか天狼殿のお蔭で。ありがとうございました。」

「いや。それよりお前。何でこんな山奥にいる。」


天狼は男に聞く。
180pは超えているだろう男は、


「いやー、道に迷っちゃったらさ爆発音やらなにやらが聞こえてきたから。
ちょっとした好奇心ってヤツさ。」

「どこから来た。」

「フラントとかいう村に向かってきたんだけど。
どっからきたかは分かんないな。
それより、さっきの機械見たいのは何だったの?」

「アクマ。人間の心が生み出した千年伯爵の玩具。」


天狼は男に背中を向けて歩き始めた。トマもその後を着いて行く。


「ちょっと?まったまった!」


天狼は足を止めて男の方を見た。


「付いて来い。村に連れて行ってやる。」

「マジ?助かった〜。さっきみたいなのに会ったら俺死んじゃうもん!
そう言えば、さっきのアクマとかってーのの話聞かせてよ。」

「…………………人間の悲劇と魂と人間の体、それに骨組み。それらが材料で出来ている。
悲劇が千年伯爵と言う人物を呼び、千年伯爵がアクマを作り出す。
作り出されたアクマは人を殺し歩く、兵器へと再形成される。
だそれだけだ。」

「じゃぁ、アンタはソレを壊して歩くのが仕事?ヒーローみたいだな。」

「俺等はただの人殺しだ。」

「「?」」


トマと男はクエスチョンマークを浮かべていた。天狼はさくさくと歩いていく。


「そう言えばお名前お聞きして宜しいですか?」

「オレ?オレはティキ。」

「私はトマと申します。あの方は天狼殿。」

「……天狼ねぇ。(なるほど…アイツがねぇ…)」

「着いたぞ。」


天狼は足を止めてティキと名乗った男にそう言った。
ティキはヒョコッと顔を出して、天狼の目線の先を見た。
そこは賑やかな村だった。


「やっと、着いた!って、言ってもこの下、崖だし。」

「こっちだ。」


天狼は再び歩きだした。
なるべく緩やかな坂を歩き村の前へとティキを案内する。
村の入り口とも呼べる場所はかなり賑やかだった。お祭りがあるらしい。


「案内ありがとさん!じゃ、オレこれから仕事仲間と仕事しに行かなきゃならんのでね。」

そう言って村の中に消えていった。
ティキの姿が消え、トマが教団に連絡を入れた。


『やぁ、どうだった?』

「別に、多くのアクマがいた。それだけ。」

『そうか、元気そうで何よりだよ。あ、そうそう。
神田君ね、肉を切らせて骨を断つ戦法で、何とかイノセンス回収したみたいだよ。
連絡取れなかったのって、ただの意識混濁みたいな。
そんな感じだったみたいだよ。
良かったね、なんとも無くて。』

「莫迦か、アイツは……
任務は無事終了。これから戻る。」


ほんの少しだけ天狼の顔に安堵の色が窺えた。


『分かった。気を付けてね。』


通信を切り、駅へと向かう。


「良かったですね。」

「何が。」

「神田殿。何とも無さそうな話し、ていたじゃないですか。」

「別に。」

(素直じゃないお方だ。)


天狼とトマはそのまま汽車に乗り込み、教団へと向かった。



途中、コムイから情報が全くなかった、奇怪現象が偶々立ち寄った街で起きてた。
エクソシストの仕事はイノセンスを回収し、アクマを破壊する。
仕方なくイノセンスを回収しに行った。
途中で、数体のアクマに遭遇し、無駄に時間を食った。
お陰で教団に戻るのが数日遅くなった。
コムイにその事を伝えたのは、回収し終わり今から汽車に乗るという直前だった。


「リー。途中の街でイノセンスを回収した。」

『ちょっと!天狼。連絡もしないでどこにいたの!!?』

「リナリー?」

『…ひっく……っく……ょていより…すっごく遅く…っなって……っく…』

「わりぃ。」

『無事に帰ってくるまで許さないんだから!!』


一方的に電話が切られた。
天狼とトマ急いで汽車に乗った。
淡々と流れる景色を横目で見ながら、教団へと汽車は走り続けた。
教団に着いたのは昼頃だった。


「天狼、お帰り。大丈夫だった?」

「……リナリー…」

「もう、怒ってないわ。
無事に帰って来てくれたでしょ?ホント、素直じゃないんだから。」

「…心配かけた。」

「良かったわ。無事で。
それより神田に会いに行ったら?」


リナリーがクスリと笑うと、天狼は心成しか安心した顔をしてリナリーの頭をポンポンと叩き、その場を離れていった。
リナリーの傍に居たアレンは話には入ってこずに、ただリナリーの隣にいた。
天狼も、さしてアレンの存在を気にしていない様子だった。


「リナリー、聞いていいですか?」

「なぁに?アレン君。」

「天狼って、いつもあんな感じに、誰にでもあぁなんですか?」

「そうね、誰に対してもそうよ。」

「そうですか。心成しか、リナリーに心を許しているように見えるのですが。」

「天狼のこと気になる?」

「い、いえ…特には。」


アレンはうまくリナリーにかわされた。


「それにしても今回は大変だったわねアレン君たちも。」

「そうでもありませんよ。むしろ、帰ってきた後のコムリンの方が酷かったです。
なんせ、クロウリーはアクマに間違えられるし、ラビはオムライスになるし………」

「ごめんね、アレン君。兄さんにきちんと言っておくから。」



その頃天狼は部屋に戻り、久しぶりの睡眠をとった。
































end
戻る→灰色の世界

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ