騎士と・・・(ゆめ)


□No,002
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「ふあぁぁ。また補習か―――。」

「大変よね、毎晩朝帰り授業中は昼寝。でも、勾月は昼寝しないわよね。二人と違って。」


沙頼が言っているふたりとは、零と優姫だ。


「ホント空琅って、いつ寝てんだろ。あ。でも、居ないときもあるんだよね…」












いつもの見回りの最中、教室の窓から見える枢に優姫が見惚れていた。


「玖蘭枢は今夜も元気か?お前のヒーローは」

「べっべべべつに、枢センパイだけを見てた訳じゃないわよ。よし!
ナイト・クラスの皆さんは今夜も品行方正!
デイ・クラスの夜歩きさんもいないみたい!」

「そこまで、どもる事も無いだろ。」

「空琅!来てたんだ。」

「……」


空琅は、一つ溜息を吐いて外回りに向かった。


「ん――、なんで空琅は理事長の世話になってるんだろ。」

「そんな事知るか。中を回る。」


零は四年前に理事長が連れてきた。
理事長から零の両親は吸血鬼(ヴァンパイア)に殺されたと優姫は聞いている。
しかし、空琅に事については全く知らされていない。
記憶の無い優姫の両親も吸血鬼(ヴァンパイア)に殺されたのかも知れない。


「……もうっ…デイ・クラスの夜歩きさんはっけーん。」


デイ・クラスの片方は脚に怪我を負っていた。


「怪我してるの?血はまずいわ…
早く!寮に帰って!!」


「えっ何!?」


すると、ナイト・クラスの架院暁と藍堂英が出てきた。
優姫は対吸血鬼(ヴァンパイア)武器の棍棒『アルテミス』を二人に向けた。







外を回っていた空琅の元に血の匂いが届いた。


(……優姫の血の匂いが混ざってる…)


地面を蹴って血の匂いを追って校舎に向かう。
現場に着くと、デイ・クラスの生徒二名が気を失っていた。
藍堂が、


「首からいただいていい?」


その言葉に空琅は勢い良く藍堂に駆け寄り
優姫の顔の横にある藍堂の顎を蹴り上げる。


「――――っ!!」


見事に顎に入り優姫から手を離し、顎を押さえる。
解放された優姫を自分の後ろに隠すように移動させる。
すると


「学園での吸血行為は一切禁じられている。血の香りに酔って正気を失ったか吸血鬼(ヴァンパイア)。」


零が藍堂に対吸血鬼(ヴァンパイア)術式が施されている、銃を突き付けた。
空琅もすかさず、ホルスターから二丁持っていた銃の片方を架院に、もう一方は藍堂のほうに向けた。
二丁とも零が持っている銃と同様のものだ。


「零だめ!!」

「でも、もう味見しちゃった。」


その言葉に零は躊躇せずに、弾を放つ。空琅はそれをただ見ているだけ。
しかし、その弾は優姫によって遮られた。
弾が木に当たった拍子に木の破片が空琅の頬をかすったが、さして空琅は気にしていない様子だ。


「…何で俺まで、銃向けられてんだ?」

「藍堂先輩を止めなかったと言う事で。一応。」

「……不可抗力…」


架院と空琅はそんな話をしていた。


「その、『血薔薇の銃(ブラッディローズ)』おさめてくれないか。僕等にとってそれは脅威だからね……」


枢が出てきた瞬間に空琅は、銃をホルスターに戻した。
しかし、零はしばらく藍堂に銃を突き付けたままだった。
見かねた空琅は別の銃を取り出し、零の足元に一発放った。
その場にいた全員が驚いて空琅の方を見る。


「下ろせ、零。」

「…………………っち…」


空琅の言葉に零は仕方なく銃を下ろす。


「この痴れ物は僕が預かって理事長のお沙汰を待つ。いいよね、錐生君。」


零はしばらく枢を睨んでいた。


「……連れて行ってください玖蘭先輩」

「架院。なぜ藍堂を止めなかった。君も同罪だ……
優姫、失神している二人は…?」


がっくりっと暁は肩を落とす。


「はい、理事長が今夜の記憶は無かった事に……
かわいそうですけど。」

「そう……じゃ。後は頼むけど。
恐い思いをさせて悪かったね、優姫。」

「いえっ!!!
ほんのちょこっとかじられただけで何ともないですから。」


玖蘭は微笑んで、その場を去っていった。
そんな玖蘭を見ながら優姫が惚けていると、空琅が優姫の手を掴んだ。


「なっ、何よっ。」


自分の首からネクタイを取って藍堂に咬まれた手に、結んだ。


「空琅?」

「行くぞ、さっさと二人を運ぶ。」


空琅は、失神している二人を俵担ぎする。すると、零が空琅から一人受け取る。
そして、


「…ここは、血の臭いが充満していて気持ちが悪い。
こんな臭いを好むなんて、やつらが獣だと言う証だ――――」


眉間に皺を寄せ、零はその場を離れた。
零には、他人が踏み込めない何かを抱えている。
明け方、仕事が終わり戻った。
シャワーを浴び終わり、ドライヤーで優姫は髪を乾かしていた。

ガチャ バタン スタスタ


「何で入ってくんのよ!」

「文句があるなら明け方閉まっている寮の風呂に言え!
てめーがちんたらしてるのが悪ぃんだよ。」


ここは、理事長宅のお風呂だ。
そして、入ってきた零は躊躇無く着替えを始めた。
それに対して優姫は


「女の子の前で、堂々と脱ぎ始めるな!!」


顔を赤らめながら、零にモノを投げた。


「……」

「あっ今、どーせお前なんか女じゃねーよって思ったでしょ。」


カチャ

何気ない顔をして空琅は扉を開けた。


「お前等、早くしろ。何時まで待たせる気だ。」


空琅の静かな問いに二人は沈黙した。その後、空琅は静かに出て行った。

――私立黒主学園、ここは
  昼のデイ・クラス
  夜のナイト・クラス
  共存する学校――


「停学十日間かっー。
でもその価値はあったなぁ……優姫ちゃんの血…
血液錠剤(タブレット)だけの生活って僕に向いてないのかなぁ…
彼女の血に抗えなくてつい…
あ、でも空琅の血もイィ匂いしてた…
何処で怪我したんだろ…なんだろう…
あの匂い…流石に顎痛いけど……!」

「つい?」


枢は藍堂にビンタを食らわせた。


「すみません。」


藍堂はしゅんっとなった。枢はかなり怒っているようだ。
デイ・クラスの普通の生徒は知らない。
ナイト・クラスの全員が吸血鬼なのだと。


「優姫はもちろん、空琅に同じことをしてごらん?」






彼等(ゆうきたち)は知らなかった…



他にもまだ秘密があることを。























end.
 

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