灰色の世界(ゆめ)


□ 玖夜 
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「地下通路?」


移動途中に小柄な方が、地下通路があることを話した。


「この町には、強い日差しから逃げるための地下住居があるの。
迷路みたいに入り組んでて、知らずに入ると迷うけれど
…出口のひとつに谷を抜けて海岸線に出られるのがある。
あのアクマという化け物は空を飛ぶ…地下に隠れた方が良いよ。」


神田は仕方なく一度通路に下りた。
それとほぼ同時に無線ゴーレムが鳴る。


ジリリリリン!


「トマか、そっちはどうなった?」


どうやらトマからのようだ。
ゴーレムから声が発せられる。


『別の廃屋から伺っておりましたが、先ほど激しい衝撃があってウォーカー殿の安否は不明です。
あ、今アクマだけ屋内から出てきました。
ゴーレムを襲っています。』

「わかった。今、俺のゴーレムを案内役に向かわせるからティムだけ連れてこっちへ来い。
長居は危険だ。今はティムキャンピーの特殊能力が必要だ。」

『はい。』


トマとの通信を終え、本題に入る。


「さて、それじゃあ地下に入るが、道は知ってるんだろうな?」

「知って…いる。」

「グゾル」


少女が心配そうに人形と思われる人に声を掛ける。


「私は…ここに五百年いる。
知らぬ道は無い。」


そう言いながら人形は被っていた帽子を脱ぐ。
その下には腐った肉、爛れた皮膚の姿があった。
それを見て神田は驚いた様子だ。


「くく…醜いだろう。」


帽子を再び被る。


「お前が人形か?話せるとは驚きだな。」

「そうだ…お前達は私の心臓を奪いに来たのだろう。」

「できれば今すぐ頂きたい。」


即答する神田に少女は驚く。


「デカイ人形のまま運ぶのは手間が掛かる。」

「ち、地下の道はグゾルしか知らない!
グゾルがいないと迷うだけだよ!!」


人形グゾルを庇う様に前に立つ少女。


「お前は何だ?」

(良い質問だ)


壁に寄掛り呆然と光景を見ていた天狼はそう思った。


「私は…グゾルの…」

「人間に捨てられていた子供…だ!!ゲホ…私が…拾ったから・側に…置いでいだ…!!!」

「グ、グゾル…っ!」

「ゲホッ、ゲホッ」

「………」

(人形が咳き込むかよ…
まぁ、何処まで突き通す気か見ものだ
まさか、神田気付いてないとかないよな…)









暗闇を二つの影が落ちる。
グゾルと少女だ。
少女は壁に爪を立てて落ちるスピードを減速している。そのまま砂に落ちる。
かろうじて二人は生きている様だ。


「大丈夫?グゾル。」

「ああ…ララが落ちるスピードを緩めてくれたから、たいした衝撃じゃあないよ…」

「よかった。」


砂に横たわるグゾルとその横にペタンと座っている少女ララの姿があった。
帽子が脱げたララを見ると彼女が人形であったことが良くわかる。


「!ララ、手を潰してしまったのか!?」


ララの左手の指はあらぬ方向に曲がっている。
先ほどの減速の時に潰してしまったのだろう。かなり痛んでいた。


「いいの、全然…
どうせグゾルが動かなくなったら私も動かなくなるんだのも…それまでもてばいいの…」


優しい目でそう言う。


「うっ!!」

「!グゾル!?」

「はあっはっ…ゲホッ」


ボタボタとグゾルの口元から血が零れ落ちる。
それを見てララは優しくグゾルを抱きしめる。


「もう、あまり時間はないのね…
私に何か出来ることはない……?」


















end.
 

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