灰色の世界(ゆめ)


□ 壱拾夜 
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人が四つん這いになって初めて身動きが取れるような狭い通路の中にアレンは居た。


「ど、どうしよう…迷った。」


半べそをかきながら頭を抱える。


「あ゛あ゛あ゛っ!!!
むやみやたらに動くんじゃなかった!
ここすごい迷路だよっ!こんなトコで迷子になってる場合じゃないのに〜〜〜〜〜っ!!ティムキャンピーがいてくれたらなぁ…」


神田の元に居たティムキャンピーはパタパタと壁に寄っていく。
ピトっと壁にくっつく。
神田たちの目の前に現れたアレンは瞳孔が開ききっている。
服の汚れもひどく、おぼつかない足取りだ。


「…カ…カ…ンダァ…」

「さ、左右逆…っ」


神田は即座に六幻を発動させた。


「どうやらとんだ馬鹿のようだな。」

「カ…ン…ダド…ノ…」

(?神田殿…?………!)

「厄災招来!界蟲『一幻』!!!無に還れ!」


神田の攻撃が左右逆のアレンの元に向かっている。
左右逆のアレンの目元には涙が浮かんでいる。
神田の攻撃を二つの影がさえぎった。


「!!」


一つはアレンのイノセンス。
もう一つは天狼の燦黎だった。


「ウォ…ウォーカー殿…」

「君は…?」

「モヤシ!!!!!それに天狼!?」

「神田…」

「どういうつもりだテメェ等…!!
なんでアクマを庇いやがった!!!」


神田のすごんだ声が響く。


「神田。それはアクマじゃない。」

「神田、僕にはアクマを見分けられる「目」があるんです。
この人はアクマじゃない!」

「ウォーカー…殿…」

(顔に切れ目が……!?)


アレンの姿をした人の顔の切れ目を引っ張って破いた。
破けた皮膚の下からトマの顔があった。


「それはトマだぜ。」

「トマ!!?」

「何…っ」


神田の後ろに居るトマが驚いた顔をしていた。


「そっちのトマがアクマだ神田!!!」


アレンがそう言う前に天狼は神田の元に行き、トマの姿をしたアクマに燦黎を向ける。
アクマは神田に殴りかかる。
神田の代わりに間に入り込んだ天狼が吹っ飛んだ。

壁と共に姿が消える。
天狼の燦黎が手から落ちた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」


持ち主が消えた燦黎は本来の色を失い
黎黒色になっいる。


「ユキ!!!」


神田は天狼が消えた壁に向かって走っていく。
天狼はアクマの左手によって壁に押し付けられている。
天狼の口元からは血が流れ出ている。
アレンは天狼が置き去りにしていった燦黎を必死に抜こうとしていた。
しかし、びくともしない。


「へへへ、お前等と合流した時からこの格好だ。
黄色ゴーレムを潰した時、一緒にあのトマって奴見つけたんだ。
こいつの「姿」なら写してもバレないと思ってさぁ。
ほら、お前等も左右逆なの気にしてただろ?
白髪の奴の「姿」をあいつに被した…
へへへ私は賢いんだ。
私の皮膚は写し紙。
まんまと殺られたなお前等。」


「…はっ!んなもんはじめっから知ってる。
知ってて、テメェがどんな行動に移すか見てたんだよ
バァーカ」


蔑む様な目でアクマを見る。
それでアクマの感情を逆撫でしてしまった。
アクマは写し取ったアレンの腕で天狼を斬り付ける。


「ケケケケケ!」


何度も何度も斬り付ける。
そこに神田が到着し、その光景に神田は怒りを爆発させた。

神田はイノセンスを発動させてアクマに斬り掛かった。
しかし、それは見事にかわされた。
そして神田は天狼より酷く刺された。
体中が、紅で染まっている。
それでも神田は立ち尽くす。
天狼は壁に寄掛りその光景を見ている。
目の前で見たくも無い光景を見て
それに対して何も出来ない自分に腹を立てていた。
足が一歩も動かないのだ。


「アレ?死ねよ!」


アクマは神田の頭を殴る。
神田はそれでも立っている。


「死ぬかよ…」


神田の足元には血の水溜りが出来ていた。


「俺は…
あの人を見つけるまで死ぬワケにはいかねぇんだよ…
(俺は…)」


神田の目の色がくすんで行く。
それと逆に天狼の眼が見開かれる


「ギャヒャヒャヒャヒャ!スゲーー立ちながら死んだぞ!」

「Sannrei, Return.(燦黎、来い)」


黎黒色と化して、ビクともしない燦黎が本来の色を取り戻した。

アレンが驚いて手を離すと、そのままその場から消え、天狼の手元に燦黎が現れる。


「貴様ぁぁぁぁ!!!(Slit(斬り裂け)!!!)」


天狼は燦黎でアクマを斬る。






アクマの体は半分に斬られた。
そこにアレンが来る真っ二つになったアクマをさらに殴り飛ばす。


「ユウ!!!」


天狼は急いで神田の元に駆け寄る。
神田は力無く天狼に寄掛る状態になった。


「…ハぁ………ハぁ…」

(まだ生きてる…)


簡単に死なないのが解っていても、神田が傷つけられると天狼は見境無くなってしまう
すると、アレンが後ろから現われる


「天狼!神田は…?生きてる様ですね。」

「テメェはトマを運べ。
ここから移動する。」


吹っ飛ばされたアクマは地べたに這い蹲っていた。


「うーー、ちくしょーあんニャロ。
ボディが半分になっちまった…!
どこ行った!?」


暗い廊下の中アレンがトマを担ぎ、天狼が神田を担いで歩いていた。


「…ハ…ハ…痛(つ)っ!」

「ウォーカー殿…私は置いていってください。
あなたもケガを負っているのでしょう…それに天狼殿の方が重症です……」

「トマ、今は自分の事だけ考えてろ。
こんな怪我の掠り傷程度だ。」

「僕の方は、なんてこと無いですよ。」

天狼の歩いた後には血の道が出来ていた。


「くそ…自分がどこに居るかわからない。どこか…手当てできる場所は無いのか……?)
………歌…」















マテールは
「神に見離された土地」
と呼ばれていた
切望に生きる民達は
それを忘れる為人形を造ったのである
踊りを舞い
歌を奏でる
快楽人形を






















end.
 

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