灰色の世界(ゆめ)


□ 壱拾肆夜 
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――大嵐のため、本日汽車の運行に支障が出ております。
大変申し訳ございませんが、本日の汽車の運行は暫く運休となります。
繰り返しお伝えいたします。本日の――











マテールの都市を出発し、汽車に乗ろうとした。
すると、突然雨が降り出しそのまま嵐へと変貌を遂げた。
おかげで、足止めを食らう羽目になった。
数時間すると、雨脚も弱まり汽車の運行が可能になった。
汽車に乗り込み、目的地へと向かう。


「神田、お前まで着いて来る必要ないだろ。
どうせ、アクマ何体か壊してくるだけだ。」

「任務だ。それ以上でもそれ以下でもない。」

「あぁそうかい。
礼くらい言ったらどうだ?これのおかげで、一日早く退院できたんだからな。」


天狼は右手首の傷を見せる。
傷は生々しい色をしている。


「…テメェわざとそれを治してねぇのか…?」

「いんや、イノセンスで付けた傷は治りづれぇんだ。」

「………わりぃ………」

「そこで、謝るか普通。
まぁ、いいや。それより、これ良く読んどけ。」


神田は天狼から資料を受け取った。
内容はマテールに来る前にコムイに天狼が渡されていた資料の内容だった。
イノセンスの可能性もあるらしい。


「今回は恐らくイノセンスはハズレだ。アクマの方が主戦になるな。
Level2は俺1人でやるから手ぇ出すなよ。」

「流石に、テメェの巻き添え食らって死にたかねぇ。」

「着いたら起せ、寝る。」


天狼は寄掛り眠りについた。
神田は苦笑した。
天狼は基本人前では寝ない。
しかし、神田やリナリーだけならば、時折こうして睡眠をとる。
つまり、マテールの病院では寝ていない。
正確には眠る気が起きなかった。
しかし、天狼も人だ。
五欲には勝てない、安心して寝られる場所では寝る。
それが偶々教団の自室と神田、リナリーの前と言うだけだ。


「……!………ユキ、起きろ。」


神田に揺すられ重たそうに目を開けた。
光が眩しいのか目を細めている。
眉間に深く皺が刻まれている。
不機嫌そうな顔をして立ち上がった。
外はムカつくほどの晴天だった。
ホームの外には、ファインダーが待機していた。


「現在の状況は。」

(生き残りが居たのか。)


神田がファインダーに聞くと、ファインダーは怯えながら現在の状況を話し始めた。
生き残ったファインダーはこの場にいる3名だけ
把握できているアクマはLevel2が4体とevel1が多数。
確実に20体以上は居るらしい。
街の住人の殆どは別の街に移動したらしい。
イノセンスの存在は確認されていない。
恐らくイノセンスは無い。
天狼の読みは当たっていたらしい。


「神田、予定通りLevel1以外には手を出すなよ。」

「その代わり、ヤバくなった時点で手出すぜ。」

「んなヘマしねぇよ。」


天狼は不適に笑って見せた。神田もそれに釣られて微かに笑った。


「そこのファインダー。
テメェ等の任務はココまでだ。本部に戻れ。」

「いや、しかし!」

「ここに居ても足手纏いだ。死にたいなら別だけどな。」


神田と天狼はファインダーを残し、アクマが出没していると言う街の中心地に向かった。
街の中心地は閑散として、アクマの気配が充満していた。
二人がイノセンスを発動したとほぼ同時にアクマが姿を現した。
その中にLevel2のアクマは居なかった。


「神田、任した。」


天狼はそう言ってアクマの気配を追って中心地から離れて行った。
神田は天狼の言葉を聞きながら次々とアクマを破壊して行った。
少し離れた所に行くとLevel2のアクマが姿を現した。
4体とも自我が芽生えた割に行動が何処と無く不自然だった。
そのことを頭の片隅に追いやり、アクマの攻撃を避けていった。


(Change.)


天狼のイノセンスが忽然と姿を消した。
アクマはそのことを、さして気にしていない様だった。
天狼が動き回っている中、アクマの動きが段々と悪くなって来る。
天狼はニヤリと笑った。すると右手を強く握った。
同時にアクマは全く身動きを取る事が出来なくなった。


「なっ!」

「何が起きた!」


アクマが口々に言う。


「(今更かよ、気付くの遅すぎ)bye-bye.」


右手に力を入れる。アクマの体が拉げそして爆発。
アクマが消えると天狼の手元にワイヤーの様な紐が集まった。
それをキュッと握ると刀の姿に変わった。


「お見事、流石。
なるほど、アクマの攻撃をかわしながらそれを張り巡らせてた訳ね。」


天狼の背後から声がした。
天狼は視線だけ声の方向に向けた。
そこには、Level3のアクマの姿があった。


「へぇ、アクマだって分かっても構えないんだ。」

(Change.)


天狼は腰に燦黎(イノセンス)を掛けてアクマの方を見た。
アクマは未だ、人型をとっていた。
暫くの間天狼とアクマは睨み合っていた。先に沈黙を破ったのはアクマだった。


「今日はさ、戦いに来た訳じゃないんだよね。」

「……」

「反応悪いなぁ。
キミを掻っ攫いに来たんだ。」

「……あっそ……」

「出来れば自主的に♪だから、ついて来てくれないかな?」

「……はい、行きます。
なんて言うとでも思った?」


天狼は右手を握った。紐にアクマが拘束された。


「なにっ!そこから動いてないのに、どうやって。」

「避けながら張り巡らせたなんて、一言も言ってないが。」

「それに、アンタの腰にはイノセンスが有るだろ。」

「それがどうした。
Break a string.(切り裂け)」


滅茶苦茶に硬いとされているレベル3のアクマが、切り刻まれバラバラと落ちていった。
ゼリーを糸で切った様にあっさりと。
その後アクマは粉々になった。


「他愛無い。」


天狼は神田の所に戻った。
神田の方も楽に片付いたらしくこちらに向かってきた。




























end.
 

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