灰色の世界(ゆめ)


□ 壱拾陸夜 
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あれから数日間天狼は科学班の人々と同じ生活をしていた。
科学班の人々は相変わらずかなり憔悴し切っている。
しかし天狼は数日前とほとんど代わらなかった。
その間の任務は珍しく天狼のところに入ってこなかった。
そんなとき、コムイのところにリナリーとアレンが呼ばれた。
任務らしい。その後、リーバーが天狼を呼んだ。
コムイが呼んでいるとの事だった。
天狼は書類を切りの良いところで終わらせ、司令室に向かった。


「任務か。」

「疲れてるところ悪いけど。」

「疲れているはず無いだろ。」

「今度はベルギーだよ。
ホントは、もう一人付けたい所だけど、人員割いていられないんだ。
でも、現地近くに別任務で行ってる人が居て、その人達と合流してくれないかな?
一人の方が楽だろうけど、そうも言ってられないから。」


天狼は資料を受け取り早々に任務に向かった。任務内容はイノセンス回収。
任務先に着くと、先に現地入りしていたエクソシストが出迎えた。


「ブックマン。」

「ちょっと天狼、オレも居るさ!
今回はオレとも一緒!」

「天狼、久しいな。任務の内容は…」

「聞いている。」

「無視さ〜?酷い。」


天狼は完璧にラビを無視してブックマンと話している。
ブックマンの話によるとイノセンスの見当は付いているらしい。


「詳しくはファインダーに聞くといい。」

「よろしくお願いします。シグと申します。
恐らくイノセンスのせいで、この街は霧に包まれているのだと考えられています。
イノセンスのありかは恐らく、あの建物です。」


シグと名乗ったファインダーが指さしたのはこの街の中心だった。
もちろんこの辺り一体に立ち込める霧の所為で見えない。


「後でご案内します。あの周りには住宅が多いので、街への被害が気になります。
アクマも出没しているようです。こちらです。」


シグを先頭にして街の中心に向かう。中心に向かうに連れて霧が一層濃くなっていく。


「この建物は、時刻を知らせる鐘が付いている時計塔の様な物です。
現在、アクマは居ませんが、夜になるとこの建物を囲むようにして集まり出すのですが、近付けないらしく、それ以上のことは全く。
我々も中に入ろうとしたのですが、我々も拒まれまして。」

「ようは、エクソシストなら入れる可能性が高いってワケさ?」

「えぇ。」


天狼はそのままズカズカとその時計塔の中に入っていった。


「っちょ、天狼!そんな急に入ったら、ってぇえ!」


天狼はそのまま、建物の中に消えていった。
それを追いかけようとラビが時計塔に近付いた。
しかし、なぜかラビははじかれてしまった。


「ワシらは外のアクマを片付けるとしよう。」


中は螺旋階段が上まで繋がっているだけだった。
時計塔の中は霧が無く、上までしっかり見えた。
天狼は既に3分の1程の辺りに居た。
カツーン、カツーンとブーツの音が響いていた。
最上部に近付くに連れ天狼の腰にある燦黎が「キィイーン」と何かと同調しているような音を立てていた。
イノセンスがある証拠だ。その事を気にする事なく階段を上って行く。
最上部にある鐘の真ん中にイノセンスが埋め込まれていた。
それを難なく取り外した。
イノセンスを取り外すと同時に、霧が晴れて行った。
すると、一気にアクマが姿を現した。
イノセンスをポケットに入れ、燦黎を開放した。
Level1しか居らず、アクマは簡単に倒されていく。
何を思ったのか天狼は急に外に身を投げた。
アクマはそれを追いかけて下へと下がって行く。

その頃ラビ達は時計塔の下で、戦闘を繰り広げていた。


「切り無いさ!」

「喚いても始まらん。さっさと手を動かせ手を!」

「言われなくても分かってるさ!」


ラビが喚いていると視界の隅に、人が落ちて来たのが見えた。
ラビは驚いて上を見る。


「わわわ!人が降ってくるさ!」

「ん?あれは…」

「……Jr、退け。」


天狼の低いどすの利いた声が届き、ラビは急いでその場から動いた。
天狼は難なく着地した。
着地した天狼はそのままアクマと交戦に入る。


「天狼!何処から降って来たんさ!」

「上。」


その後天狼はラビの問いかけに全く応じようとせず、どんどんアクマを薙ぎ倒して行く。
先程まで、切が無いくらい居たアクマの数が天狼によって減って行った。


「天狼……じじぃ。愉しんでる様に見えるのは俺の気のせいさ?」

「……ムダ口叩いてないで、早く終わらせるぞ。」


ラビとブックマンもようやく参戦し、アクマを全て倒し終えた。


「任務終了さ〜。それよりなんでさっきは上から降って来たんさ?
普通の人間だったら、死んでるさ。」

「狭くて、分が悪いから。」

「それだけで?階段下りて来れば良かったさ。」

「面倒だ。繋がった。リーに代われ。」


どうやら、この会話をしている間に天狼はラビのゴーレムを駅のホームの、電話に繋いでいた。


「って、何で勝手にオレのゴーレム使ってるんさ!
てか、本人じゃなきゃゴーレムで通信って…」

「あぁ、イノセンスは回収した。」

「また無視さ〜?」

『じゃぁ、そのまま次の任務に行ってくれるかい?場所はロシア。』

「分かった。」

『あ、そうだブックマンに代わって。』


天狼は無言でブックマンに代わった。


「……分かった。今から向かおう。それでは。ラビ。」


ブックマンはゴーレムの通信を切って、ラビを呼んだ。
天狼はイノセンスをコムイに渡すように頼みそこで別れた。
そしてそれぞれの次の任務に向かった。























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