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□Trick or Revenge
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「た〜いちょ、お酒くれないといたずらしちゃいますよぉ〜♪」
「………何の真似だ松本」
部屋に入るなり、酔った乱菊が満面の笑みで言ってきた。
言われた冬獅郎は意味が分からず、悪ふざけに早くも怒り気味。
大体、いつの間に此処は宴会場に化したというのか…。
「たいちょお知らないんですかぁ〜?現世のお祭りですよぉ♪さぁ隊長、お酒くれないなら悪戯しちゃいますからねぇ〜♪♪」
「……あ゙?」
「悪い冬獅郎、俺が乱菊さんにハロウィンなんて教えたばっかりに…」
見兼ねたように、横から話しかけたのは一護。
そう、この場には今現世組面々も居るのだ。
「…はろうぃん?」
「子供達がお化けの仮装して遊ぶんですよ〜それで、ご褒美くれなかったら悪戯していいんです♪」
「や、乱菊さんソレちょっと違う…ι」
「何なんだ?黒崎」
「やっぱお前も知らねーか。ま、コッチにはそんな行事ねーもんな。日本にだって元々あるモンじゃないし…」
何やら一人でごちりだした一護を、うざったそうに「早く説明しろ」と言わんばかりの目で冬獅郎が睨んだ。
「えっと…ハロウィンていうのはだな、簡単に言えば…まあ子供達がお化けの仮装をして「お菓子くれなきゃイタズラするぞ」って言ってお菓子を貰って回るんだ。つってもそんなのはアメリカかなんかの話で、俺達日本人はやらねーけどな。元々は『お盆』みたいなモンらしいぜ」
「成る程な…松本が食いつきそうな話だ」
「す…スマンιι」
自分がいらぬ『ネタ』を提供したせいで、この状況を生み出してしまった事に責任を感じているらしい一護は気まずそうに周囲に目を走らせた。
とはいえ、そんな一護もこの宴会を楽しんでいる一人である。
この宴会は、ハロウィンの話を聞いた乱菊が「自分達もハロウィンを祝おう」と勝手に人を集めて始めたのだ。
勿論、『鬼』の居ぬ間に。
冬獅郎は早く仕事を済ませ自室で寝ていた。
乱菊はまだ残っている仕事を続けている筈だった。
先程目覚め、騒がしさと大勢の気配を感じ外に出てみた所、ちょうど隊の者に呼ばれ此処へ連れて来られたのだ。
幸い今日の仕事は終えているようだが、酒の入った乱菊にあまり近付きたくないのが本音…。
基、酒の入った奴には誰であれ近付きたくはない。
いや寧ろ、酒に近付きたくないと言った方が妥当かもしれない。
大概いい事は無いのだから。
早々にこの場を立ち去りたい…のもまた本音。何か嫌な予感がする。
だがもはやそれは叶わぬのが、事実。