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□その姿が‥‥。
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「ムート、お前好きな奴でも出来たろ〜。」
オレは、ゴマ山脈の見張り小屋の窓からアルファ山を眺めていた。
そこにテリーがやってきてそういった。
「‥‥なんでそう思うんだ?」
「最近、よく外を眺めながらため息ついてるだろ?それでさ。」
兄弟の様に一緒にオレ達は育った。
そのためかお互いに何かがあるとすぐにわかる。
「なるほどな。さすがテリーだな。」
「ムート、言いに行かなくていいのか?」
「なんで?」
いきなりの質問に驚いてしまった。
「相手は王女。政略結婚や婚約もあるぞ。ってムート?!!」
政略結婚−‥‥‥
その言葉を聞いてオレは駆け出した。
首都ベルフネ。
そこに彼女はいる。
行こう。
伝えるんだ!!
君に会いに行こう。
こんな所で悩むより会いに行って、傷付いた方がずっといい。
あの笑顔も涙もすべてが愛しいから。
もう一度、会いたい。
声が聞きたい。
胸が裂けそうなぐらい君が好きなんだ。
どこまで伝わるかわからないけど‥‥‥。
「ったく、思い付いたら即行動か。
ちゃんと伝えてこいよムート。」
ゴマ山脈の見張り小屋にひとり取り残されたテリーはそう呟いた。
−−−−−−−−−−−−
あの時、ムートについて行きたかった。
けれど私は王女である。
兄さんの想いを捨てる訳にもいかずベルフネに残った。
けれど、最近ムートに対する想いが募るばかりで仕方がなかった。
近々、婚約者を決めなければならない。
ムート、あなたは何処にいるの‥‥?
そんな想いで自分の部屋に篭っていた。
泥棒のおかげで外にでることが許されなかった。
「ステラッ!!」
背後から声がした。
そこには窓しかない‥‥はずだった。
「ムー‥‥ト?ムートっ!!」
そう、窓からムートが入ってきたのだった。
出入りができないのならと窓から入ってきたのだろう。
「あ、えと‥‥そのっ///
別に会いにきた訳じゃないからなっ///」
思いっ切り頬を赤らめて私が求めてた答えを否定する。
けれど、逆にその姿が可愛くて‥‥。
私はムートに抱き着いた。
「会いたかった。」
顔をみると赤面させ、まるで魚のように口をパクパクさせている。
「っ〜///
そ、そのステラ。」
「大好きよ。」
本当はムートに先に言って欲しかったが、一生懸命その言葉を口にしようとするムートが可愛くて。
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