BOOK
□いつかきっと
1ページ/2ページ
「ん‥‥。」
布団からでると朝の冷たい空気が自分に纏わり付く。
もう朝か。
もう少し寝ていたいとも感じた。
王宮にいたときはもう少し寝ていたっけ。
エナジストとしてカルトンに選ばれたものの、あまり戦闘慣れをしていない自分には少しきついと感じた。
稽古はするものの、実際外にでてこんなにたくさんのモンスターと戦ったのは初めてだった。
ふと、横をみるとまだムートは寝ていた。
一緒に寝ていたはずのテリーとクラウンの姿は何処にもなかった。
何処に行ったのかとか考えたが安らかに寝ているムートを見ると二人のこと考えることより、目の前にいる彼をじっくりと見ていたいと感じ始めた。
細身で簡単に壊れてしまいそうな彼。
けれど、全然そんなことはなくて‥‥。
実際に一緒に戦ってみると、誰よりも戦い慣れているようだった。
戦っている時の彼は本当に美しかった。
流れるような攻撃に敵の攻撃もひらりとかわせる身軽さ。
自分とは何もかもが違った。
自分は彼のように体力があるわけでもなく、攻撃力も、身軽さもなかった。
エナジーはあっても使い方がわからなければ意味がない。
プライは使えるが、彼のようにリバイブは使えない。
自分がここにいるのは彼らの邪魔ではないのだろうか‥‥?
だったら‥‥。
ハルマーニは静かにムートいる部屋をでていった。
「はっ!!」
宿屋をでて、モンスターと一人で戦ってみた。
少しでも彼に近付きたくて‥‥追いつきたくて‥‥‥‥。
いつかはこの手で彼を護りたくて。
少しずつでも戦って強くなりたかった。
「ハルマーニっ!!」
遠くの方でムートの声がしたが、今の彼の耳には届かなかった。
「っ!!」
上手くよけきれず、敵の攻撃を受けてしまう、そう感じた瞬間だった。
「危ないっ!!」
たった一瞬の出来事だった。
右側から黄色の何かが飛んできて自分を左に飛ばした。
それが何かなんて考えるよりも先にわかった。
それは顔を上げ、微笑んだ。
それと同時にモンスターの攻撃がヒットし、それは後方に飛ばされた。
「っ!!ムートっ!!」
ムートは地面にたたき付けられ動かなかった。
「このぉ−−っ!!」
怒りにまかせて敵を攻撃したのは覚えているが、気付いたら敵は消滅していた。
「ムート!!」
私はムートの傍にかけよりプライをかけた。
「ハルマーニ‥怪我は‥‥?」
「私は大丈夫です‥‥。」
情けない。
護りたかった人に護られてしまった。
「あの‥‥ムート。
ありがとうございます。」
「気にするな。
それに君にプライをかけてもらえてるしね。」
にっこり笑って彼は言った。
「‥‥いつか必ずムートを守ってみせますから。」
ふとこぼれた本音。
それはムートの目を丸く変形させた。
「‥じゃもっと強くならなきゃね。王子様。」
そう言った彼は頬を赤らめ、笑っていた。
「えぇ、もちろんです。」
いつか必ず君を護れるような王子になってみせます。
Next→あとがき