BOOK

□温もり
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日が傾くまで二人で話した。

ムートと一緒の時間は何をしてるよりも満たされていて、幸せで‥‥。

時が止まればいいなんてことも願ってしまった。

「ムート。」

愛おしい名前を呼べば彼は笑顔で、「どうした?」と聞いてくる。

ムートが傍にいる。
どれほど夢みた事だろう。

だが、たった一つ不安がよぎる。

「ねぇ、ムート。
ムートは私のどこが好きなの‥?」

聞きたいが聞くのが怖かった言葉がこぼれた。

「え?あ‥‥っとその‥‥。」

照れているのか見付からないのか、彼から答えは返って来ない。

「テリーは私にあった時、獣だって思っていたわ。ムートは‥‥?」

「ステラは‥‥‥獣なんかじゃない。」

下を向きながら小さな声で彼は呟いた。

ムートが私を好きなのはわかっているけど、わかっていてもちゃんと言葉にしてほしい時だってある。

しばらく間があいた。

時計の音だけが部屋の中でこだまする。

ムートはまだ下を向いたままだった。

「ムー「ステラ。あのさ‥‥。」」

私の声はムートの声に掻き消された。

「その‥‥、上手く言えないんだけどさ、
オレ‥‥‥その‥‥‥‥あれだよ‥‥。」

途切れ途切れで話してくれるムート。

「あー‥‥‥‥、
言葉にするって難しいな‥‥。」

一生懸命考えてくれているのがよくわかる。

‥‥‥ステラ。」

「なに?」

「その‥‥、
オレはな、他の誰でもないステラだから好きになったんだ。
‥‥上手く言えないんだけどさ。」

そういい、ぎゅっとムートに抱きしめられる。

「‥‥ステラの全部が愛おしいんだ。
君が気にしているその耳も、手も足もすべてが。」

「ムー‥‥ト‥‥‥。」

嬉しさに涙がでる。
テリーに獣といわれ、色々な人にマンビーストと言われ‥‥‥。
とても気にしていた事も好きだと言ってくれた。

「な、泣くなよ!
泣かれたらどうしていいかわからないから‥‥。」

「嬉しくて‥‥止まらないの‥‥‥‥‥。」

「だから泣くなってば‥‥‥。」

泣く私をみて戸惑うムート。
そんな姿も可愛くて‥‥。

「ムート。」

「ん?どうし‥」

ムートが私をしっかりみたときに、顔を近付けた。

キスをしない程度で動きを止める。

そうすればムートが動くかと思って。

「‥‥ステラ‥。
ち‥近い‥‥‥。」

けれど、そう上手くいかなくて。

彼は私が思っていたよりもヘタレだった。

「ムート?どーしたの?」

「っ///べ、別に//」

尋ねれば真っ赤にして顔を離そうとする。

そのタイミングで私はムートにキスをした。

触れるだけの可愛いキス。

「ステラ‥‥‥。」

離れると今度はムートがキスをしてくる。

触れるだけかと思いきや、唇の間から舌が入り込んでくる。

舌と舌が絡み合う。

恥ずかしい気持ちと気持ち良さと‥‥。

夢でもみてるようだった。








「じゃぁ、オレはもう帰るわ。」

大分暗くなり、ムートはそろそろ帰らないと皆が心配すると言う。

「気をつけて‥‥ね?」

「もちろんだよ。」

入ってきた時と同じように窓から出て行くらしい。

「それじゃ。」

「うん。」

ふわりと窓からムートは飛んだ。

ムートがいなくなった部屋は何か色あせたように感じられる。

先程までいたムートの温もりがまだ残っている。



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