BOOK

□雪
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ふわりと空から白いなにかが降ってきた。

それは地面に落ちると砕けた。

そして砕けたそれを風がさらってゆく。

無数に空から降る白いもの。

それを見るのは初めてで‥‥。

前に父さんが「「雪」」というものだと教えてくれたっけ。

雪は自分にも降り積もり体温を奪ってゆく。

寒いはずだが寒さなんて感じなかった。

不思議で‥‥どこか神秘的なそれにいつしか目を奪われていた。

「ここってすごく寒いのね。」

と、いう声が後ろから聞こえてくるまでは。

驚き後ろをみれば一人の少女がいた。

「‥ステラ‥‥。」

彼女はにこっと笑い、久しぶりと言った。

「どうしてここへ‥?」

「ちょっと、用事があってね‥‥。」

用事とはなんだろうか。

気になるが聞けない自分がいる。

こんなにオレはヘタレだったっけ?

ステラに対しては、自分でもそう言いたくなるぐらいだった。

嫌われたくない。

そんな気持ちがいつも先走り、何も出来ない。

よくこんなんで旅のリーダーなんて出来たな。
そう思う。

「‥‥‥ムート。」

「は、はい!」

突然呼ばれびっくりしたのか声が裏返ってしまった。

恥ずかしいと思いながらも前を見れば、彼女は笑っていた。

「そんなにびっくりしなくてもいいのに。」

そう言いながらもクスクスと笑うステラ。

その姿は、今すぐ抱きしめたくなるほど可愛かった。

そう思うものの行動出来ないのが悔しい。

テリーは自分がいてもお構いなしにカリスに抱き着いてるのに‥‥‥。

「あ、あのさ‥‥もし、嫌じゃなければ‥なんだけどね‥‥‥。」

ステラにしては珍しく、顔を赤らめ、途切れ途切れに話して来る。

「‥‥あの。
よかったら‥その‥‥‥。」

そこまで言って一回言葉を区切り、深呼吸をする。

そうしてじっとオレを直視して言った。

「良かったら一緒にベルフネまで来てもらえないかな?」

そんなに区切りながら言うことなのかな。

そう思ってしまった。

でも、オレだったら絶対に言えないや‥‥。

「いいよ。でもどうして?」

そう返すと、はぁ‥と
大きなため息を付かれた。

「意味が通じてなかったのね‥‥。」

「意味‥?
え、だって一緒にベルフネへ行くんだ「違う。」‥。」

言葉を途中でさえぎられてしまった。

彼女は下を向き、表情は見えない。

ヤバい。
嫌われた‥‥?

そう思った。

その上、雪も激しくなり、表情が見えないどころではなくなってきた。

先程の言葉の意味を考える。
けれど答えが簡単にでるわけなくて‥

次第に風も強くなり、周囲一メートルほどをみるのがやっとなぐらいにまでなった。

ステラに何と声をかけようか。

そんなこともまともに考えられなくなってきた。

寒い‥。

ステラ‥‥。

近くに行きたい。

そんな思いで、ステラに近寄ったはずだった。

なのに、オレは転んでしまった。

「ムート?ムート!ムー...」

ステラの声が段々と遠くへいく。


そこでオレの意識は途切れた。











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