見てろよ神様
□たんじゅ…ゲフンゲフン!
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『痛ったぁー…』
重力に逆らえるわけなんてなくて私はあえなく落下した。
腰を強打したものの上手く受け身を取れたのかそんなに痛みはない。
自分の運動神経の良さに感謝だな…見たところ自転車も壊れていないようだった。
あらかた状況を把握し、脳が働き始めたところで1つ疑問が浮上する。
『…ここどこ?』
まわりを見渡すと広がっているのは木造の建物とか、着物を着て髷を結っている人々。
こんな場所私の家の近くには無かったはず…つーか時代遅れにもほどがあるだろ。
『…まさか!私のハイパーミラクル脚力でもう京都についてしまったとでも言うの!?』
シーン
『…あ、れ?』
あたりは静まりかえった。
お、おかしいな…いつもの友人のお茶目なドッキリならここで、んなわけねーだろ!とかなんとか、キレの良いツッコミが飛んでくるはず…
ツッコミの代わりに私を哀れむような視線がまわりから注がれた。
何この羞恥プレイ。恥ずかしっ!
「おい、お前そんな格好で何をしている。」
『え?』
顔を手で覆い、見ないで見ないで!と1人で騒いでいると後ろから声をかけられた。
「何をしていると聞いている。」
『何って、私はあの階段から落ちて………あれ?』
そう言って指をさすとそこに階段など無かった。どういうこと…?
私が唖然としているとその男にパシッと手首を掴まれた。
『…?何ですか?』
「お前のその格好、娼婦であろう。相手をしろ。」
『しょうふ?しょうふって何?』
「何、今さらとぼける必用もあるまい。行くぞ。」
いや、とぼけるとかじゃなくて。ほんとに分かんないんだってば。日本語のボキャブラリー少ないんだよ、悪かったな!
『…でも、あなたが言ってるしょうふ?ってのと、私は違うと思うんで離してもらって良いですか?』
引っ張られる力に反抗するように私も足に力を入れる。
「恥ずかしがるな、気にせず俺についてくれば良い。」
いや、恥ずかしいとかそういうんじゃなくて…全然話し聞いてないなこの髷野郎。
男は手を引っ張り私を暗い路地裏に引き込もうとする。
なんかやばい雰囲気。逃げなきゃ!直感的にそう感じ、行動を起こそうとしたその時、
「やめなさい!」
『!』
「何だぁ?てめーは。」
1人の少年が私と男の間に立ちはだかった。
まわりはみんな見て見ぬふりだったから、あてにならないかと思ってたんだけど…
「彼女嫌がっているじゃないですか。その手を離して下さい!」
「てめぇ、日々国のために働いてる攘夷志士様に逆らおうってーのか?」
はて攘夷志士?なんだそれ。ダメだ分かんない言葉ばっか出てくる。
「国を守ろうと思う気持ちがあるならば、何故嫌がる女性を無理矢理連れて行こうとするのです!そんな方にこの国の未来を託すことなど出来ません!」
少年がそう言い放つと男は顔を真っ赤にした。
「言いたい放題言いやがってクソガキがぁーっ!」
『っ!』
「きゃ、」
男が刀を鞘から抜き振り上げる。
そのため私の腕は男から解放されたが今度は少年が危ない。
やばい、どうにかしないと…!
『フンッ!』
「ぐはっ!」
そう思い私は男の懐に入り込み鳩尾を蹴り込んだ。男は無様に尻餅をつく。
『女だからってなめんなよ!』
男に蹴りを喰らわせたあと、私はすぐさま自転車にまたがって少年に声をかける。
は、早く逃げなければ…!反撃されたら流石に死ぬ!男…ましてや刀を持ってる奴になんて勝てるわけない。残る選択肢は逃げるのみだ。
先程は余裕ありげな台詞を吐いたが内心はドキドキだった。
『の、乗って!』
「っえ?」
『逃げるよ!』
男を見ると鳩尾をおさえながらも、もう立ち上がっていた。
でも少年はどこに乗れば…なんておどおどしている。早くしないとアイツ完全復活するぅぅぅ!
私は片手で荷台をバンバンと叩いた。
『普通に荷台んとこ!早く早くっ!』
「はっはい!」
『ちゃんと腰に掴まっててね!』
少年の手を掴み自分の腰に固定させる。ちゃんと乗ったかを確認して走り出した。
「このクソガキどもぉぉぉっ!」
後ろで男の怒鳴り声が聞こえた。