見てろよ神様
□めんどくさっ
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「これ以上僕の手を煩わせないでよね。誰が君をここまで運んできたと思ってるの?」
『すみませんありがとうございます。』
アイアンクローから解放された私はすぐさま沖田さんに謝罪とお礼を述べた。
…でも、もとはと言えば沖田さんが追いかけて来なければ壁にぶつかることも無かったはずだ。
しかもなんだかぶつけた額以外にも体全体が痛いし。ほんとにここまで運んでくれたの?引きずってきたの間違いじゃない?
疑問や不満は色々あったがそれを言う勇気なぞ私にあるわけもなく私は素直に謝る。
そうさ!私はどうせチキン野郎さ!
『あの…』
「…何」
『ひぃっ!』
そう声をかけると沖田さんはもの凄く冷たい表情で私をみる。
な、何で!?話しかけただけなのに何でこんな睨むの!?いつもの笑顔はどこへ………いやあの顔もあれはあれで恐いけども…
『この状況はいったい…』
そんな逆境にも負けず私は勇気を振り絞って沖田さんに問った。
「あぁ、今は千鶴ちゃんが僕達の巡察に着いてきても良いだけの実力があるか、一くんが見極めるところだよ。」
『そ、そうなんですか…』
私が寝ている間にそんなことが…つか千鶴勇気あんなぁ…新選組の人相手に。
「よろしくお願いします!」
声が聞こえ視線を向けると小太刀を構えていると千鶴がいた。でも斎藤さんは小さくうなずくだけで刀に手を置いたまま動く様子を見せない。
「行きますっ!」
そして千鶴が声を張り上げ斎藤さんへ向けて大きく踏み込むと、
カキーンッ
一瞬で斎藤さんは千鶴の刀を弾き、首筋に刀を突きつけた。は、速すぎて見えねぇ…!
「師を誇れ。おまえの剣には曇りが無い。…太刀筋には心が現れる。おまえは師に恵まれたのだろう。」
そう呟くように言って斎藤さんは刀をおろした。
「大丈夫?やっぱり驚いたかな。斎藤くんの居合いは達人級だからね。」
沖田さんは満面の笑みを浮かべながら弾き飛ばされた小太刀を千鶴に渡した。つか千鶴と私に対する態度違いすぎない?
「す、すいません!ありがとうございます!なんとか、大丈夫です……でも居合いって?」
今の斎藤さんの技は居合いというらしい。何だか難しい説明をしていたけどよく分からなかった。
分かったことと言えば、居合いは速いけど威力は弱い。
でも斎藤さんなら大丈夫!さぁっすが新選組っ☆と言うことぐらいだ。
所詮私の頭で解釈はその程度だ。
まぁ結果的には千鶴は完敗だったけど、巡察に連れていく位なら平気だろ、ってことで斎藤さんが土方さんに頼んでくれるらしい。
沖田さんも斎藤くんのお墨付きなんてすごいと千鶴を褒めていた。
千鶴にこんな才能があったとは知らなかったな…気がきく可愛い女の子、ってだけじゃないんだね〜
すごいすごい、と1人感心していると、
「じゃあ次は君の番だね。」
『……』
悪魔の囁きが聞こえた。
「次は君の番だ、って言ってるのが聞こえないの?」
『いやいや私?私は良いですよ〜別に巡察なんてついて行きたくないし恐いし。』
「何言ってるの。あの子がやったんだから次は君でしょ?」
『尋問された時もその流れでしたよね。だいたい私刀持ってないですし。ね?』
「そんなの素手でやればいいじゃない。」
『死ねってか。』
そう言うとあはは冗談冗談と笑い飛ばされてしまった。冗談に聞こえる冗談を言え。
「刀なら僕のを貸してあげるから。」
『で、でも…』
「良いからくだくだ言わないでさっさとやりなよ。斬られたいの?」
『分かりました!分かりましたから刀に手をかけないで!』
分かれば良いんだよと笑顔で言うと私に刀を渡した。マ、マジでか…マジで私もやる流れなのか。
「じゃあ相手は僕で…」
『斎藤さんでお願いしまーっす!』