見てろよ神様
□だって知らない人
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「知らない人って酷くねーか!?前に自己紹介しただろ!」
『……』
「今度は無視か!」
何なんだお前!と騒ぐバンダナこと永倉さん。
一応名前は覚えているがこののっけからのテンションについていけない私。こんなところで人見知りセンサーが反応しまうとは……どうしよう。
「落ち着けって新八っつぁん!紫帆は人見知りするんだよ。」
黙り込んでいる私を見かねてか平助が助け船を出してくれた。
「人見知りねぇ…」
「そうそう。だから勘弁してやってよ。」
「ま、そういうことなら仕方ねーな。よろしく頼むぜ紫帆ちゃん。」
そう言って永倉さんはニカッと笑った。筋肉がすごいし平助よりはるかにでかい永倉さんに距離を感じてしまった私だけどこうして見ると案外平気かもしれない。
『…よろしくお願いします永倉さん………でこれからどっか行くの?』
そうは言ったもののすぐに話しかけられるものじゃないので私は視線を平助に移した……が反らされた。え、何で?
「えっと紫帆ちゃん?皆さん島原に行くんだって…あ、私は行かないんだけど」
『島原?島原って何?』
「えっと、それは……」
「島原っつーのはここらで有名な花街のことだ。」
今度は千鶴が言葉を詰まらせるとそれを見た原田さんが苦笑して口を開いた。
ふーん花街かそうか。この時代だとまだそーゆうの許されてるんだっけ。確かに千鶴は連れてけないよね。
『平助もお年頃ねぇ…』
「お前に言われたくねーよ!あと俺は女ってわけじゃねーし、酒飲んで騒ぎたいだけっつーか……まぁ新八っつぁんはどうだか知らないけど?」
「平助…ここで俺に振るのか?」
永倉さんもまた気まずそうに私の顔をちらちらと伺っている。そんな気にしなくても良いのに…そんなことに口出しする権利私にはないし。
『いや、私別に島原に行くのが悪いこととは…』
「だよな紫帆ちゃん!」
『ひぃ!』
そう言うと永倉さんは私の肩をガシッと掴んだ。それに私は短い悲鳴をあげる。力がハンパねぇ…!
「でも、こんな昼間から行くのはどうかと思います!まだ仕事している隊士さんの方々もいらっしゃいますし…」
と千鶴は小さく異論を唱えた。
「あのよ、近頃の京は何かと物騒なんだ。俺たち新選組だってうかつに夜遊びできねえ。」
「……はい。」
「だから常識に縛られず行きたいときに行く!真っ昼間から遊びに行くことを迷わねえ!」
永倉さんは自信満々にそう言いきった。
『おぉ…』
「(それ、とても間違っている気がします…!)」
確かにそうなのかも…仕事ばっかしてても疲れるもんね。
千鶴がそんなこと考えているとはつゆ知らず。私は送り出す気満々で居た。
「お前が女の格好してくれるんなら、それだけで充分に目の保養なんだけどな。」
「そ、そんなっ!?」
そんななか、原田さんが永倉さんの言葉をフォローするように口を開いた。
「あ、オレも絶対可愛いと思う!色々落ち着いたら、振り袖着て見せてくれな。」
そしてそれに同乗するように平助も千鶴に言った。千鶴は照れて何も言葉を発せないようだった。
「もちろんお前もな。」
『お世辞でも嬉しいです原田さん。』
気を使って私にも声をかけてくれる原田さんはやっぱり優しいモテ男だと思いました。
「あ、俺も見た」
『黙れ平助。』
「何故っ!?」