見てろよ神様
□食卓は戦場
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『ぐぉぉぉ…痛い…!』
「だ、大丈夫紫帆ちゃん?」
千鶴が心配そうにそう声をかける。私は激しい痛みをこらえながら小さく大丈夫…とだけ答えた。そして、やつに向き直り、
『鞘投げつけることないじゃないですか沖田さんんん!!!眉間に当たったんですけど!?』
「斬られなかっただけ感謝してよね。」
そう必死に訴えたがやつは不機嫌そうな顔でそう言ってのけるだけだった。いつか絶対泣かしてやる!
『ってか何故に沖田さんがここに?』
「さっきそれ私が言った…」
「総司、無駄話はそれくらいにしておけ。」
「!」
と、次にそこに現れたのはお膳を持った斎藤さん。するとそれを確認をするなり千鶴は顔を青くした。独り言を聞かれていたのが嫌らしい。
「斎藤さんも聞いてたんですかー!?」
「……つい先程、来たばかりだか。」
「良かった…!あ、そのすみません。いきなり叫んだりして…」
その言葉に千鶴はホッと息をつき、突然取り乱したことについて謝った。
「気にするな。…そもそも今の独り言は聞かれてた困るような内容でもないだろう。」
「!」
『……』
いや、ばっちり聞いてんじゃねーか。
「それと國枝、お前はあまり人の悪口を言うもんじゃない。」
『え、声に出てました?』
「そうではないが、邪悪な笑顔がにじみ出ていた。」
『……』
「夕飯の仕度ができたんだが、邪魔をしただろうか。」
『(邪悪…)』
「いえ、邪魔とかじゃ──」
「あのさー!」
斎藤さんの言葉に若干ショックを受けているとバタバタと足音をたてながら平助がやって来た。
「飯の時間なんだけど。」
「俺は仕事がある。先に食べていい。」
視線だけ平助に向け言う斎藤さん。
「片時も目を離すなって土方さんの命令だからね。」
と、沖田さん。
「だったらこいつも俺らと一緒に食わせればいいんじゃねーの?」
と、平助。
「部屋から出すなとの命令だ。」
「良いじゃん土方さん大阪出張中なんだし──」
こんな感じで長いこと会話を続ける3人。…あ、お腹鳴った。
『私たちなら逃げませんから…どうぞみなさんで仲良く広間で食べてください。』
会話を聞いているのがめんどくさくなった私はそう口を開いた。早くご飯を食べたいから、そんな軽い気持ちで言った言葉だったんだけど、
「逃げない証拠などどこにある。」
『証、拠…?』
真剣な眼差しで斎藤さんに言われ私は狼狽える。
『え…いや、だから逃げないって言ってるじゃないですか。』
「その言葉を信じることが出来るだけの理由が無いと言っている。」
戸惑いながらもそう答えたが、表情を変えずしれっと言う斎藤さんに少しイラッとする。
『…そんな、私、嘘なんて──』
ポン
「紫帆ちゃん。」
『!』
千鶴はさらに反論しようとした私の肩に手を優しく置いた。そのお陰で私は少し冷静になる。
『……』
信じてもらえないのは悲しいことだけど…しょうがないことだ。正体不明の私みたいなやつ。
まして千鶴には綱道さんと言うここに居る理由があるけど私には何もない。
脱走を疑われるのは仕方ないことで…でもやっぱりちょっと寂しかった。
微妙な空気が漂うなか、そんなのまったく気にしていないというような沖田さんの声が響いた。
「まぁ、僕もこの子達が食べてるの見てるだけなんて退屈だし。いいんじゃない?僕は平助に賛成。」
そんなことを言いながらやつは平助に2つお膳を渡す。
「おい総司…何で俺なんだよ。」
「言いだしっぺが責任とらなきゃね。」
結局私たちは他の人達と一緒に広間で夕食を食べることになった。