無双
□恋の手前から恋の自覚に置ける苦難の一ヶ月間
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一日目
それは酷く懐かしく。
思い描くほどに切なくなる夢だった。
もう、存在しないという事実があって。
それが迫りくるように蝕んでいた。
優しかった父親。
それが、目の前で死ぬことになるなんて。
あの矢を向けて。
ゆっくりと放った瞬間。
記憶に残る悲劇。
残忍だと思った。
なんて残酷なんだと。
まるで自分が悲劇のヒロインにでもなったように。
放心状態の自分がいた。
自分の心の多くを占めていた人間を突然になくいたっつーのは。
過去だけれど。
それでもまだ、思い出すんだなと半分自分を戒めた。
過去にとらわれない人間なんていない。
自分はまさにそこに当てはまっていた。
普段から意識しないのに。
たまにこーいう感じになってしまう。
なんでかな。
それでも普通だった。
なにもかもが。
あたりまえに存在していたことに恐ろしく嫌悪を感じた。
それでも、もうそれは過去だった。
だって、俺は父親を殺した仇と仲良くしているのだから。