□■FF7
□Once more Z.side
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あの時は、本当にもう駄目だと思った。
体はどんどん冷えていくし、意識は薄れていくし。
血を流しすぎたせいか目は霞んできて、果てには見えなくなって。
クラウドを一人置いていくことがすごく辛かった。
もっと一緒にいたかった。
やっとあの狂った現実から逃げ出して、これからってとこだったのに。
でも…。
Once more・Z side
死んだとばかり思っていたオレは幸か不幸なのか…。
神羅屋敷地下で施された実験のせいで、簡単には死ねない体になっていた。
あの時は、極度の衰弱のため体が勝手に一時仮死状態になってしまったらしい。
気づくとオレはベッドの中で、その時すでに、あの出来事から約一年が経っていた。
たまたま、奇跡のような確率で通りかかった麓の家の人が、血だらけで倒れていた、素性も知れぬオレを家まで運び、医者まで呼んで助けてくれたらしい。
やっと目が覚めたと思えば自分が誰だかわからず、覚えていたのはミッドガルへ行く…そんな記憶。
なぜだかわからないけど、とにかくそれだけははっきりしていて。
そしてそれは、とても大事なことだった気がした。
そこへ行けば忘れたものを取り返せるような気がした。
幸い、ドッグタグを身に付けていたお陰で名前は分かった。
識別ナンバーは、なんのことだかさっぱりわからなかったが。
思い立ったらすぐにでもミッドガルへ向かいたくて、目を開けた翌日。
深く礼を言って早々に発とうとするオレを、行きたいのは分かるがせめてもう少し体力をつけてから行けと、せっかく助けたのにまた倒れられたら元も子もない、と。
もっともな理由で家の人――老夫婦に引き止められ、逸る気持ちを抑えながらその好意を受け、そのままさらに一年をそこで過ごした。
記憶をなくした俺は、その間この世界のいろんなことを教えてもらった。
もう何年も前、戦争が多くあった頃。
神羅という組織が大きな軍隊を持っていた。
その軍の数多くいる兵士たちの中でもでも選りすぐりの精鋭兵士はソルジャーと呼ばれていた。
ソルジャーは魔晄を浴びて、そのせいで瞳が魔晄色になるから一目でわかったのだという。
一般兵士の何十人分、何百人分という働きをするほどの強さを誇るソルジャーは、子供たちの憧れだったらしい。
中でも”セフィロス”という人物は伝説のソルジャーと呼ばれ、知らないものはいないほどだったという。
――セフィロス、という言葉を聞いてなにかひっかかった。
それでも、なにかを思い出すというところまでは至れなかったのだが、その名前は忘れられなかった。
ソルジャーになると言って家を飛び出していく子供がその頃多くいたと爺さんは言う。
そして老夫婦の息子もその一人だったそうだ。
便りの一つもよこしてこないのでその後どうなったかはわからないらしい。
死んだという通知も来ないから、まだ元気に生きているのかもしれないな、と寂しそうな目をしてそういった後、俺に「お前さんもそういう子供のひとりだろう?」と言った。
記憶をなくしてんだから、分かるわけない。
「さぁ、どうなんだろうな」と苦笑して返せば、「きっとそうだろう」と返事が返ってきた。
目じりにしわの入った目で、いたずらな目をして笑う爺さんは鏡を俺の目の前に出すと、
「お前さんの瞳は魔晄の色だ。ソルジャーの瞳の色だ」
たぶん、そのドッグタグもソルジャーのものだろうと、そう言った。
すんなりそれを事実と受け入れられたのは、やはりどこかにそんな記憶があったからだろうか。
驚くほど傷の塞がるのが早かったのも、体の回復が早かったのも、なによりこの生命力の強さは
ソルジャーだったからだろう、ということだ。
戦争がなくなってからは、そんなに軍隊が表立って姿を見せることは少なくなったが、神羅は今度は魔晄というものを使って商売を始めた。
生活に欠かせないエネルギーとなった魔晄を供給する神羅カンパニーはそれは大きな大企業となった。
しかしいつしか黒く、赤い大きな巨星が現れて神羅はミッドガルごと破壊されてしまった。
それが、俺を拾ってから約半年くらいのことなのだそうだ。
俺が目的としているミッドガルはそのメテオという巨星に壊されてから、今は再建中らしい…。
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