□■FF7
□ヤサシイ雨
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どこまでもどこまでも。
すべてを洗い流すように。
そして、すべてを包む込むように。
ヤサシイ雨
久しぶりの休みに、家にいるのはもったいないと聞かないザックスと街へ出た。
俺は、部屋でのんびりするのも好きだからどちらでもよかったんだけど。
ぶらぶらとなにを買うとはなしに店を見て。
新しいの買おうかな、なんてピアスを見ているザックスを横目に俺は、真っ黒な石のやっぱりピアスを見ていた。
「ザックスってさ」
「んー?」
「もともとの瞳の色って何色なんだ?」
「あー、俺は真っ黒だったぜ。髪と一緒な」
言いながら、ザックスは流しきれずに前へ垂れる前髪を一房摘んでみせる。
ちょっと懐かしいような目をして。
魔晄浴びたとたん真っ青だもんなー。いや、一瞬でかわったわけじゃねぇけどさ。
でもわかっちゃいたけど、びっくりつーか、ちょっとショックだったつーか・・・。
すっげー違和感だったな。
今はもうさすがに慣れたけどな。
苦笑しながらそう話すザックスに、笑って返した。
魔晄を浴びた時のことを当たり前に話すザックスが少し羨ましくて。
俺もいつかそんな風に話せる日が来るのかな、とか。
いまはまだつかめない夢を、すでに手にしているザックスにそれと分からぬよう、苦笑った。
「俺、ちょっとこれ買ってくる」
先ほど見ていた黒曜石のピアスを手に、レジへ向かう。
買ってやろうかなんて言われたけど、自分で買うからと断って。
俺の給料でも買うことの出来るそれは、そんなに高価なものじゃないけど。
それは、とても自分にふさわしい気がした。
***
「雨振ってら・・・」
「あ、ホントだ」
店の中にいるときには気付かなかったが、外は静かに雨が降っていた。
どしゃぶりというには程遠い、霧雨のような雨。
でも傘がないとしっかり濡れるな、という程度には降っている。
「どうする?」
「どうするったって・・・」
そういって見回してみれば、近くには休憩できそうな店がいくつか立ち並んでいる。
入って雨がやむまで待ってもいいのだけど。
もうこのまま帰るつもりだったわけだから、寄る所もとくにない。
「いいや、いつ止むかわからないし、帰ろう?」
「よし、走るか!」
言うと同時に手を取って走り出したザックスに、
「ちょ・・ザックス手!離せって!」
自分で走れるから、と喚くもののがっちり掴まれていて離して貰えそうにない。
「オイコラ、ザックス・・!」
「たまにはいいだろ?」
誰も見てないって。
手をブンブン振りながら名前を呼ぶと、振り返ったザックスは子供みたいな顔で笑った。
遠く以前の、ある日の記憶。
その時と同じような雨の降る外を窓から眺めて。
クラウドは、愛しい人と同じ色をした黒いピアスを見つめた。
―――あの日の雨は、すべてを包む込むようなやさしい雨だった。
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