□■FF7
□ある、晴れた日の。
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「………」
「…しょうがねぇなー…せっかく休みもぎ取ったのに」
ぼそり。
あっさりと、本当にいっそ清々しいくらいにあっさりとかわされたザックスは、思わずつぶやいた。
そして、その呟きをもぐりこんだベッドの中で聞いたクラウドは思った。
・・・いま、もぎ取ったって言った。休みもぎ取ったって・・・。
やっぱり、と思いつつおとなしくなったザックスに少し不審な気持ちになりつつ、しかしクラウドはまた気持ちのいい眠気に身を任せて、まもなく静かな寝息を立て始めた。
が。
ごそごそ・・・
ベッドのスプリングが揺れて、続いて引っ張られる掛布。
なんというか。
やっぱりというか。
「・・・・・・・・・」
…ぎゅ。
「――……ちょっと、」
ちゃっかりベッドに入り込んで、さらにクラウドの身体に腕をまわすザックスに抗議の意も含めて呼びかける。
「ん?」
「…俺眠いんだけど」
微妙に不機嫌味を帯びたクラウドの声音などには一切構わない、すっとぼけた返事が返された。
それどころか、後ろから抱きしめた腕がそのままクラウドの身体を這い始めて。
「!…ッ、ちょ、コラ!」
「なに?」
「なに、じゃない!」
相変わらずなんでもないことのように続けようとするザックスの、無遠慮な手の甲を抓ってベリっと剥がす。
そうだ。
このザックスがこんなにあっさり大人しくなるわけがないのだ。
「あのな、さっきから言ってるけど、今日は、一日、寝て過ごすって、決めてるんだ。邪 魔 す る な」
「うん、それはイイコトだな、ということでやっぱりオレも賛成だ」
先ほどまでせっかくの天気なのにもったいない、とうるさかったザックスの態度は一変し、今振り向いたソコにいる乱入者は、無駄にイイ笑顔で賛成をする。
どういう風の吹き回しだ、と言いたい所だがザックスの行動・・・というか手がその意味を物語っていて。
「…言っとくけど、間違ってもその”寝る”じゃない」
「もちろん普通に寝るつもりだったけど?”間違ってもその”って、・・・クラウドの考えた”寝る”ってナニ?」
ニヤリ、と。
人の悪い笑みを浮かべてザックスが問う。
「――っ」
嵌められたと気づいたクラウドは一瞬、ハっとした表情で言葉を詰まらせて、そしてザックスをにらみつける。
「なぁ、教えてくれよ」
「………」
睨むクラウドなどまったくお構いなしで、ザックスはイタズラが成功した悪ガキのような意地悪な笑みで近づく。
上体を起き上がらせて至近距離から覆いかぶさるようにして見下ろせば、居たたまれず視線が外された。
「な、クラウド、どういう意味?」
ふと顔を近づけて囁く、完全にスイッチの入った夜の声。
・・・こんなことなら、まだ外に出ていたほうがマシだったじゃないか。
ただでさえ耳は弱いというのに、付け加えて普段はあまり聞かない低音を耳元に囁かれて、ぞわ、と肌が粟立つ。
その感覚にクラウドは堪らずきゅ、と眼を閉じた。
視界が塞がれて、さらに聴覚を刺激されるのがわかっていても、
男の表情になったザックスを見るのに抵抗があって眼を開けられなくて。
「・・・・・・っっ」
それを見計らったように、はむ、と耳朶を食まれて、舌が差し入れられる。
脳に直接響くような間近で立てられる水音に、クラウドの顔が羞恥に紅く染まった。
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