□■FF7

□Once more Z.side
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相変わらず記憶は戻らないままだが体力はそれなりに戻ったと、まるで本当の息子のように良くしてくれた老夫婦に改めて礼を言い、今度こそ唯一記憶していた目的のミッドガルへと発った。




そして、今。
ミッドガルからそう離れていなかったこの地からでは、そんなに時間が掛かることも無く、一ヶ月と経たずにたどり着いた。

しかしそうして来て見れば、特に沸き起こるものも感慨も無く、ここへ来れば思い出すかもしれないと安易に思っていた考えは脆くも崩れることとなった。


なんとなく、微かに見覚えがあるような気がしないでもないが、・・・分からない。
とりあえずその日は適当に宿を取って、休むことにした。


記憶が無いというのは、こんなにも心身ともに負担を感じるものなのか。
ザックスは宿の一室で、簡素なベッドに横たわりながら深く息をついた。


なにかは思い出せないが大切ななにかを忘れてしまったという思いがなによりも大きいだろう。
あれから2年以上も経っている。
もう、遅いのだろうか。
今更思い出しても手遅れだろうか。


早く思い出せ、と思う焦りに駆られながら、疲れのせいもあって襲ってきた眠気に身を委ね、眠りについた。



それから毎日街へ出ては情報を集め、ここ数年で起こった大きな出来事については知ることが出来た。
しかし、自分のことを思い出すには至らず、そろそろどうしようもなくなっていた頃。



それは訪れた。





「ねぇ、貴方・・・」


後ろから呼びかけられた声に、内心『またか・・・』と思いながら振り返る。
街中を歩けば声を掛けられ、飲み屋に行けば声を掛けられ。
一応オレも男だし、普段ならきっと嬉しいんだろうが何せ状況が状況だからそれどころじゃないという気持ちが強くて。


「悪いんだけど、俺ヒマじゃな――」


当然今回もそうだと思って、断りの言葉を口にする。
が、しかし目の前の女の子の雰囲気がそういうものではなくて、思わず口をつぐんだ。
色目を使うでもなく笑いかけるでもなく、その女の子の顔に浮かぶものは驚きと疑い、それに微かな期待。


「間違ってたらごめんなさい・・でも、もしかして・・・」


しかし、そこまで言って不安そうに俯いてしまう。
でもすぐに、意を決したように顔を上げ、


「貴方、・・・・・・ザックス・・・?」


名を口にした。
助けてくれた老夫婦以外から、初めて名乗ることなく呼ばれた自分の名前。



「!俺のこと、知ってんのか・・・!?」



反射的に相手の両肩を掴み、その勢いのまま問いかける。


やっと見つけた。
初めての手がかりだった。
願うような気持ちで相手の言葉を待つ。


「・・・・・・てた・・・」

「・・・え?」


見開かれた瞳から涙が零れて、それと同時にほとんど聞き取れない小さな声が漏れた。
そして、


「・・・生き、てた・・・っ!」


今度こそしっかりと、ザックスはその言葉を聞いた。




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