□■FF7

□初秋
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「あのさ」


「ん?」

応えるザックスは、着の身着のまま。
しかしTシャツと短パンだけになって海に入っていた。

クラウドは波打ち際で水と戯れながら


「なんで、この時期に海なんだ?」


当然といえば当然なのかもしれないクラウドの問いに、ザックスは笑って


「だって、夏に来たら人が溢れかえってるだろ。今なら人いないしな」

言外にお前が人ごみ嫌いだから、と含める。
それでも棘のない言い方だ。

それを聞いたクラウドは、まぁ、そうだけど・・・と頷きつつ。
なにか忘れてる気がして、首を傾げた。

が。

――あぁ、そうだ・・・

すぐに思い出して一人、含み笑いをした。





「なぁ、クラウド入らねぇの?」

気持ちいいぜーと海面に浮かびながらクラウドを誘うザックスに


「俺は遠慮しとくよ」


どこか晴れ晴れとした笑顔で応える。


「なんでだよ?」

「着替えない」

「あぁ、それなら持ってきたぜ?」

「でも疲れるし」

「お前・・・」

思わず漏れるザックスの呆れ声。
しかし、一番の理由はそれじゃない。


「それに」

「それに?な――い・・っ!!?」


なんだよ、と続けようとした言葉尻を痛みに奪われた。
それを聞いたクラウドが


「・・・・クラゲ、いるかもだし・・・」

ボソ、と。
タイミングの良すぎるザックスを内心称えて、自分にしか聞こえない声でつぶやいた。

ザックスによって、すでにそれは『かも』ではなくなったが。


「刺された!なんか刺されたぞ!」

「大当たりだね、やったね。秋だしね」


こっちに走りよりながらそう叫ぶザックスに、思わず穏やかな笑みが浮かんだ。


期待を裏切らない人だなぁ、と。



その後、クラゲに刺された部位に唇を寄せて毒を吸い出すクラウドにムラッときてしまったザックスが、
押し倒そうとしたクラウドに、どこをとは言わないが蹴飛ばされたというのはまた、別のお話。





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