□■FF7

□心影
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「・・・クラウド?」

「・・・・・・・・・」

「その気になっちゃうぞ?」


言葉の内容とは裏腹に、ザックスは内心少し焦っていた。
普段なら絶対自分からこんなことはしないクラウドが、なぜ?

変なクスリでもやったか・・・?


「クラー?」

「・・・・・・・・・」


「どうしたんだよ?」


だんまりのまま、しかし抱きしめる腕を緩めようとはせず、むしろ解かれない様その力を強くするクラウドに、ザックスは思わず戸惑いと、苦笑を浮かべる。


「……いよ」

「・・・クラ?」


何か言ったのは分かったが、声が小さすぎて何を言ったのかわからなくて、ザックスは何かと問うようにクラウドを呼んだ。


「・・無理して、笑わなくていいから」

「!」


そして次こそ聞こえたクラウドの言葉は、ザックスの取り繕った表情を崩すには十分で。
幸い、抱き締められていたお陰でそれを見られることはなかったが。


「そんなに無理しなくていいよ」

「・・・・・・・・・」



どうして。

なぜ、分かってしまうんだろう。
何も言っていないのに。

いつもと変わりない自分を演じた自信はあった。
なにも気づかれないはずだった。

それなのに。

「――な、何言ってんだよクラウド」


それでも弱い自分を見せたくなくて、わざとおどけた声を出して抱きしめてくるクラウドの肩をポンポンッと叩く。


「…俺は頼りないけど、強くもないけど、」

「…?」

「――出来るなら、少しだけでもザックスの力になりたい・・・」

「………」

「いつもザックスに助けられてばかりだからホラ、たまには、さ」


自分で言ってて恥ずかしいのかザックスの頭を胸に押し付け、見上げてこようとする彼の視線から逃げるように、抱きしめる力を強くする。


「クラ…」


ザックスを胸に抱き締めたまま、ポツリポツリと紡がれる言葉は、切々としたクラウドの声は、ザックスの荒んだ心を少しずつ癒すように届いて。


「………」


敵わない。


駆け引きが苦手なクラウドの言葉には裏も表もなくて、拙い素直な言葉はまっすぐに届く。
変に飾らない、ありのままのクラウドに、こうも安らぎを感じるなんて。


本当に、敵わない。


「…ありがとな、クラウド」

「………ん。」



「もう少しだけ、このままでいいか・・・?」

「いいよ」


抱き締められるままになっていたザックスは、その腕をクラウドの背中に回した。
腕に伝わる確かな生の感触と、温もりに安堵する。

あの残酷な闘いに赴き、そして現実に帰るたびに感じる数え切れないほどの後悔。
まるで冷徹な殺戮マシーンのように、命令に従って人を殺して殺して殺して…。

それでも、こうして涙が流すことが出来るのなら、目の前のこいつを愛しいと思うことが出来るのなら。


俺はまだ、人間で居られるだろうか。





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