□■FF7
□アイの証明
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「あれだぞ、今まで遊んでたヤツが、たった一人を選んだ時の重さったらないんだぞ?」
「……は?」
ニュースを視ようとテレビをつけたら、たまたま女性数人でのトーク番組がやっていて。
リモコンを握ったままチャンネルも変えず、なんとなくそれを視ていたザックスはそんなことをつぶやいた。
大して興味もないためテレビを視ることもなく引き続き手元の本に目を落としていたクラウドは、思いのほか大きな声でテレビに話しかけたザックスに、小さく反応した。
どうやら、テレビの中で『遊んでる人はやっぱムリだよね〜』みたいな会話がされていたらしく。
自称【元遊び人】の誰かさん(元かどうかは定かではないが)はそれに対して物申したいところがあったそうで。
『浮気する人って一生直らないって言うし』
『そうそう、女癖悪いのとギャンブルはもう病気だと思う』
さらに続く会話に不満気なザックスは、「そうばっかじゃねぇんだけどなーー」などとテレビに話しかけている。
確かに一生”そう”なヤツもいるだろうが、遊んでるのには少なくとも2パターンあると思っていて。
ただただひたすら女遊びが好きなヤツ。
本気で好きになれる人がいないから、とりあえずいろんなコと付き合ってみるヤツ。
すごく似ているようで、根本が違う…と思うのだ。
ちなみに、オレは後者ね。
で、幸い大事なやつ見つかったからもう他はいらないの。
「ていうわけで、クラウド!」
なにやら悶々としていたと思ったら、こちらに向き直る気配と共に無駄にピシッとした声で名前を呼ばれて。
あまり集中出来てなかったけど今いいとこなんだけどなーと仕方なしに顔を上げれば、なんだか真剣な顔をしたザックスがいた。
「…えーと、はい」
うつ伏せで肘をついた状態ながら、少しかしこまって返事をする。
で、何を言うかと思えば、
「オレは浮気はしないから」
なんて。
ザックスがあんまり真っ直ぐな目で言うものだから、思わず気圧された。
「………」
「………」
「えっと……まぁ、そう願っておくよ」
とは言っても基本女の子大好きなヤツだしな・・・。
話半分に聞いておくことにする。
「!?ホントだって!!」
「…わかったわかった」
あからさまに信用されてない&流されているのを感じてザックスが食い下がってきた。
なぜ突然そんなに熱くなっているのだか、クラウドにはもちろん分からずいつものように流せば、
「おま、オレがどんだけクラウドのことアイシテルかわかってないだろ」
「……っ」
さらに、立ち上がってこちらへ近づいてくるザックス。
「なに言ってんだばか」
それにクラウドはちょっと慌てて言い捨てて、思わず体を起こしてくるりと背中を向ける。
背中を向けたところで何の解決にもなっていないことは百も承知で。
表面上だけでも素直に納得しておけばよかった、なんて。
さらに小っ恥ずかしいセリフを真正面から言われて、どんな顔をすればいいというのか。
「うわっ、ちょっ…!!」
背中を向けてそのまま逃げようとしたところで、ザックスの腕に掴って後ろから抱きすくめられて。
「はいはい、大人しくしような」
「放…っ!――っん・・」
じたばたともがくクラウドをモノともしないザックスは、
そのままクラウドをすぐ傍のソファに押し付けると、吐息ごとすべてを奪うようなキスをして。
「…っは、いきなりなに――」
「ん、クラウドが信じるまでオレの愛をじっくりと?」
「!い、いい!十分分かってるからっいい!」
唇が触れそうな距離でそんなことを言ってくるザックスの胸に腕を突っ張ってみても、距離が近すぎてうまく力が入らなくて。
「まぁまぁ、遠慮すんなって」
そんなクラウドに楽しくて仕方がないと言わんばかりの悪い笑みを浮かべたザックスは、まだ何か言おうとするクラウドの唇を自分のそれで塞ぐ。
そしてクラウドはそんなザックスのキスを受け止めながら、今回ばかりはスイッチを入れてしまったらしい自分の発言を悔やんで。
「…っん――…っ」
けれど、そんなこともすぐに考えられなくなった。
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2012.5.24