□■FF7
□ある、晴れた日の。
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ある、晴れた日の。
休日の昼下がり。季節は初秋。
最近少しずつ暑さがやわらいで、ここ数日過ごし易い気持ちのいい気候が続いている。
クラウドは窓から吹き込むそよ風に眠気を誘われ、ベッドの上でまどろんでいた。
戦闘中の、緊張感漂うピリピリとした雰囲気嫌いではないが、今のような、こんな穏やかな緩やかな時間は大好きだ。
なにもせず、何も考えず、ふわふわとした意識で、浅い眠りに身を任せて。
ときおり外から聞こえてくる、他の兵士たちの訓練の声や音の、遠く控えめな喧騒が心地いい。
昨日まで遠征に行っていて、今日はその遠征後の休暇日。
クラウドだけではないが、他の人が訓練をしている時に自分は休んでいられる、そんな状況がなんだか楽しかった。
もちろん、今訓練している者達はクラウドたちが遠征に行っている間に休日があった。
けれど今現在、ベッドに手足を投げ出して、ゆったりしているクラウドにはどうでもいいことである。
今日はこのまま寝て過ごそうと思っていた。
いや、寝て過ごすのだと決めていた。
しかし、そんなときに限っていつも。
そう、いつもだ。
ある時突然部屋に住み着いた、あの黒髪の長身の……。
「クーラーウードー!」
騒がしい足音とともにバタン、と勢いよく部屋のドアが開かれた。
気づかれないよう頭を動かさずに視線だけでちらと、ドアを見やればやはり黒い髪。
…が、ベッドに手足を投げ出して、ゆったりしているクラウドにはどうでもいいことである。
「クラウド!」
…どうでもいいったらいいのである。
「クラウドーー」
ゆすられようと、耳元で名前を呼ばれようともどうでも…
…………。
「はぁ…」
自由な時間を邪魔するな、と無視を決め込んでいたクラウドから思わず漏れるため息。
「お、起きたか!」
ぱっと、満面の笑みを見せるザックス。
なんの邪気もないその笑顔が逆に小憎たらしい。
「安眠妨害反対」
今はクラウドの自由時間だ。
休暇中、というやつである。
わかっているのかこの男は。
「まぁまぁ」
なだめようと笑うザックスを尻目に、もういちどため息。
「ていうか、アンタ仕事中じゃないのか」
「終わった!」
グッと親指を立てて片目瞑ってウィンクまでして来るこの男。
きっと違う…。
きっと、無理やり誰かに仕事を押し付けたか、明日に回したんだ。
妙な確信を持って、クラウドはザックスを半眼で見据える。
「で?なに?俺は見ての通りお休み中なんだけど」
「せっかくのいい天気なのに一日中家の中なんてもったいないぞ!?」
と、ザックスのセリフも解らないではないが、実際もったいないかどうかはクラウド自身で決めたいところだ。
「さすが野生児。」
野生に帰れ。
続けてそう言いたいところをぐっと我慢する。
「失礼だな、アウトドア派って言えよ」
「・・・・・・・・・」
返された言葉になんだか違和感を覚えた。
・・・なぜだろう。
この男に、アウトドアという言葉がこんなにもしっくりこないのは何故なんだろう。
やっぱり森よりもジャングルのが似合うということなんだろうか。
アウトドアというよりも野生。
うん、しっくり。
まぁ、でも。
「他に用がないなら、俺は寝るから。眠い。オヤスミナサイ」
「おーいクラウドー??」
「じゃ!」
そうして呼び止めるザックスを傍目に、満面の笑みでベッドに潜り込んだ。
だって、今日は寝て過ごすと決めているのだ。
”寝て一日が終わるなんてもったいない”などと言われようが本人が有意義だと感じるなら問題ないはずだ。
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